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大学院入試 筆記試験(言語学)の解答テクニック

本記事では,私が実際に経験した大学院(言語学)の筆記試験の問題を解く上で大変だったこと,工夫したこと,添削を通して先生から教わったことなどを共有したいと思います.
なお,私が合格をいただいた大学院の入試問題は,筆記では主に要約と自分の意見を書く問いが出題されたので,主にこの2点に絞っていきたいと思います.


1. 要約問題

 まずは要約問題です.過去問を見た感じ,主に生成文法,認知言語学,第二言語習得の3つのうち,どれかがランダムで毎年出題されていました.
 推薦入試ではこの中のどれかが1題のみ出題され,一般入試はこの3つから1つを選んで解答する形式なので,選択権がないという意味では推薦入試の方が幅広い対策を求められるかなと思います.
 どの年もそれらに関する洋書(つまり英語で書かれた文献)の一部分がそのままバーンと載せられ,まずはその出題された部分を600字以内の日本語に要約をするという問題でした.

 ここで注目すべきなのが,600字という字数の多さです.通常の要約は,多くても200字程度ですが,600字となると正直内容の取捨選択をそこまで考える必要がありません.ほぼ全訳で,適宜短い言葉で言い換えたり,冗長な具体例を手短にするなどでOKだと思います.
 「内容をほぼそのまま訳せばいいのか!ラッキー!」と,一見これはメリットにも思えますが,実はデメリットでもあります.それは,自信のない単語に遭遇した時に逃げることができないことです.普通に英検1級レベルの難しい単語を訳すのが難しいことはもちろんですが,言語学独自の専門用語が,洋書には当たり前のように出現するため,それらの知識がないとそこで詰みます.例えば,constructionは構文,gerundは動名詞など,独自に覚えておかないと正確な訳出が困難です.なので,私はそうした単語をリスト化し,洋書を読んだり過去問を解いたりしながら,どんどん蓄積しながら覚えていくようにしました.

2. 意見問題

 次に自分の意見を問う問題に関する対策です. ここが正直受験者の1番力を測る上で重要なポイントになります.以下で具体例とともに対策を紹介しましょう.
 例えば,以下のような問いが出題されます.

「単数のtheyについて,語用論(pragmatics),記述文法(descriptive grammar),規範文法(prescriptive grammar)の観点から説明しなさい.」

単数のtheyとは,例えばteacherやdoctorのように,性がわからない人を代名詞として表す際に,近年よく使用されるtheyの用法の1つです.従来はこのように性不明の人を代名詞にする場合は "he or she"などが用いられていましたが,ジェンダー平等の観点からheとsheの順番を見た時にどうしても先にheが出てしまう点が男尊女卑に聞こえてしまうなどの問題が背景にあるのではないかと考えられます.

この問いに対して,上述した3点からそれぞれ述べるとなると,やはりある程度の背景知識が必要となります.そのため,普段から言語学に関する文献に目を通して基礎知識をつけていく必要があります.(ただ,そこまでマイナーな用語や知識を覚える必要はないかと思います.多分それは出たとしてもほとんどの受験生がわからないので,あまり差がつかないと思います.)

ここまで読んでくださった方は,「うわ,難しいな…」などと思われるかもしれませんが,見方を変えればそうでもないことに気づくはずです.
というのも,高校や大学の入試とは違って,大学院入試には決まった答えは存在しないのです!つまり,答えを求めて思考を巡らせるのではなく,自分なりの,筋の通った答えを出すだけでよいのです.そうすれば,多少おかしな論点になっていたとしても,少しは点数が入るはずです.
そもそも研究というのは,これまで誰も答えを出せなかった問いに対して,答えの可能性を提示していく営みのようなものなので,大学院側は「あらゆる問題に対して自分なりの視点を持っているか,またその視点にはきちんとした根拠が存在するのか」を見ているのだと思います.

3. まとめ (対策,勉強法)

 要約問題: 専門用語をはじめとした,意味のわからない英単語を少しでも減らすための勉強をすることが重要.(高校レベルの文法も,ほぼ完璧にしておくことが前提.言語学をやるなら尚更でしょう…)

 意見問題: 言語学の諸分野(音声学, 音韻論, 形態論, 統語論, 意味論, 語用論, 生成文法, 認知言語学, 第二言語習得など)に関する基礎知識をつけておく.意見を求められても大まかに答えることができるように,自分なりの意見を持っておく.(もちろん根拠もともに)

 勉強法としては,複数人で行う勉強会に参加したりして,少し緊張感のある中で自分の意見を言葉で説明してみて,それに対する誰かの意見を聞きながら柔軟かつ幅広い視点を持てるといいですね.
それが難しい場合は,大学の先生を尋ねて自分の考え方を聞いてもらったり,1人で本を読みながら,セルフツッコミをすることがいいと思います.





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