湯気とレモネード
前書き
一日一作チャレンジ、7作目となります。
仕事が忙しくなってきたことや睡眠時間の確保の観点から一旦今日で一日一作チャレンジはやめようと思います。
湯気とレモネード
仕事終わりのルーティン。それは、ソファに座り、レモネードを飲みながらぼーっとすることだ。
もともと疲れた時はお菓子をつまんでいたのだが、美容に良くないと思い、とりあえずビタミンCが取れそうなレモネードに変えた。
今日も会社から帰り、着替えてお湯を沸かす。
カップにパウダーを入れ、お湯で溶く。蒸気と共に、爽やかなレモンの香りがふわりと広がる。疲れた体に染み込ませるように、その香りをめいいっぱい吸い込んだ。
猫舌の私はすぐには口をつけない。レモネードが冷めるまでのしばらくの間、ソファに腰掛けぼんやり湯気を眺めるのだ。
白い蒸気がもくもくと上がる。
ほうっと空気の流れに乗って湯気が大きく左右に揺れる。
そうして次第に白い蒸気が渦を描き始めた。
そこで気づいた。この部屋の窓や扉は全て閉め切っている。コンロも止めたし除湿機や加湿器もつけていない。
つまり、大きな空気の流れはないはずである。隙間風だろうか?
レモネードの湯気に視線を戻す。
蒸気の渦の中に、影ができていた。
黒い影。人の形をしていた。
湯気とレモネード 了
※この物語はフィクションです。実際の事件、人物、団体等とは一切関係ありません。