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Best Metal Ballads - Part1 (20年代)

 「メタルバラードとは何か?」「今回のセレクションの視点」みたいなことは下記の序論にまとめてますので、未読の方はこちらをどうぞ。

 まずは20年代の「ベスト・メタルバラード」から。まだ5年しか経過していませんが、10曲選んでしまいました。グロウルやスクリームがメタルのスタイルとして定番化している中、歌で聴かせる「メタルバラード」となると、この時代どうしてもプログレメタル系、ダークメタル系、パワーメタル系が中心に。起承転結のハッキリした展開と熱い歌唱で盛り上がるバラードは、PowerwolfとDisturbedくらいで、残りは抑制された表現で、通常楽曲のヘヴィな世界観とは異質な別世界に誘う、没入感の強いバラードが多い印象です。また、プログレ、ニューウェーブ、フォークなど、メタル以外の音楽要素を加えながら叙情的な音景を描いているものが多いのも、「20年代のメタル」をよく表している気がします。

Dark Tranquility - False Reflection

グロウルは使わずバリトンボイスのみで展開する耽美バラードニューウェーブ/ゴシックロックの幻想的雰囲気(Depeche ModeとThe Cureの中間的な)を継承しながらも、サビでは重いリフと美しいハーモニーがじわじわと盛り上がっていくゴシックメタルの醍醐味が堪能出来ます。ニューウェーブとメタルの美点が自然に融合した逸品です。(”ENDTIME SIGNALS” 12曲目|2024年)

Disturbed - Don't Tell Me (feat. Ann Wilson)

デヴィッド・ドレインマンとアン・ウィルソン(Heart)の実力者同士によるデュエット曲。Scorpions的な哀愁のアコギで静かにスタート。歌をリレーしながら徐々に盛り上がり、サビではDisturbed らしい力強いメロディで一気に爆発。とにかく歌が熱い。ギターソロ以降は演奏も熱気を帯びてきて、劇的に盛り上がっていきます。メタルらしい熱さ満載のバラード。(”DIVISIVE” 7曲目|2022年)

Dizzy Mizz Lizzy - The Middle

ダークでプログレッシブな名盤”ALTER ECHO“収録のバラード。自分が思うメタルバラードにおける最高峰の楽曲の1つがこれ。緊張感を携えた物悲しいギターのアルペジオから始まり、ブリッジでドラマティックに盛り上がりを見せながら、サビでファルセットを巧く活用して緊張と緩和を演出するアレンジセンスがあまりにも素晴らしいティム・クリステンセンの哀愁感たっぷりの歌唱も絶品です。(”ALTER ECHO” 4曲目|2020年)

Haken - Canary Yellow

メロディにも演奏にもリズムにも一筋縄ではいかない引っ掛かりがあって、それらが緊張感を醸し出し、全体的にはポストメタル的な少し冷ややかな印象があります。でもこの曲の凄さはそのトーン一色だけで終わらせず、サビで暖かいメロディを挟み込んで、音の持つ温度差をさり気なく醸し出しているところ。ポストメタルやプログレメタルを通過してきた新世代ならではのメタルバラード。(”VIRUS” 5曲目|2020年)

Jerry Cantrell - Siren Song

ジェリー・カントレルの21年発表のソロ作から。これは完全にAlice in Chainsの世界観ですね。陰鬱で絡みつくようなボーカルハーモニーが主体のダウナーな雰囲気のバラードではあるんですが、どこかアメリカのバンドらしいアーシーな色彩が重苦しさを絶妙に打ち消してくれて、超暗いThe Byrdsとでも言いたくなる、不思議とキャッチーな楽曲に仕上がってます。(”BRIGHTEN” 5曲目|2021年)

Lillian Axe - Ascension

名バラード”The Promised Land”を筆頭に、メロハー時代にも非凡な才能を発揮していたスティーヴ・ブレイズ。プログ化しても翳りと優しさの同居した非凡なメロディセンスは全く衰えてません。心地良い反復ピアノフレーズに不安定なコードを巧みに織り交ぜて緊張感を醸し出しながら、キラーフレーズを随所に入れ込むセンスが抜群。半端ない没入感が味わえるドラマティックな名曲。(”FROM WOMB TO TOMB” 16曲目|2022年)

Mastodon - Had it All

Mastodon 初の本格的バラード。途中少し荒々しいギターソロが入りますが、楽曲構造的にはバラードの体裁は保ったままなので今回のリストに入れました。アコギのアルペジオとサイケデリックなトーンのギターが、囁くような抑制された歌唱と絡み合いながら進行。派手さはないものの、男臭くスケール感あるサビで心を揺さぶる”じわじわ感動型”バラード。(”HASHED AND GRIM”  Disk2-3曲目|2021年)

Powerwolf - Alive or Undead

雄々しい歌、高揚感溢れる男声コーラス、大仰で劇的な展開・アレンジと、ManowarやBlind Guardianのエッセンスを引き継ぐ正統パワーメタルバラード。単に仰々しいだけでなく、戦闘映画のクライマックスに使えそうな感動的なメロディの流れが素晴らしく、特にサビ前”with the wildest of wolves here we stand “部分のボーカルメロディは鳥肌モノです。(”CALL OF THE WILD” 5曲目|2021年)

Sleep Token - Are You Really OK?

20’sを代表する新世代メタルバンドから、心が洗われるような美しさ溢れる癒し系バラードを。ミドル〜ロー中心でゆったりと歌うVesselのボーカルは王道メタル的ではありませんが、Pink Floyd風の幻想的雰囲気から、リズムが入って徐々に力強さが増し、中盤開放的なギターが掻き鳴らされて一気に盛り上がるダイナミックな展開は、まさにメタルバラードの醍醐味。(TAKE ME BACK TO EDEN” 7曲目|2023年)

Vola - Freak

シンセがフィーチャーされたアンビエントっぽい透明感あるバラード。Marillion、IQ等のポンプロック系やColdplayなどに通じる哀愁を帯びた柔らかいメロディのベールに身体全体が覆われるような心地良い感覚が味わえます。全盛期のジョン・ペトルーシを彷彿とさせる構築感溢れるメロディアスなギターソロも圧巻です。新世代プログレメタルらしさ満載の曲。(”WITNESS” 5曲目|2021年)

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