IT業の「社内仲人」構想 令和の社内仲人おばさん
前回の記事:
絶滅危惧種「仲人おばさん」人事部で復活
「職場専用マッチングアプリ」による職場内恋愛の活性化を検討したところ、システムを用意しただけでは危険すぎる、プロによって管理されなければならない、という結論に達した為、今回は代替案として「社内仲人」について検討します。
会社・組織の人事部内に、かつての「仲人おばさん」的な、人生経験が深く面倒見の良いプロの仲人を配置。独身男女の従業員から希望者を募り、仲人の経験と勘から練られた組み合わせでお見合いを組み、成婚か不成立かの結論が出るまでの仲立ちも行います。
とはいえ一定以上の規模の会社組織であれば、プロの仲人であっても独身者全員の人となりを知るのは大変です。よって、独身者本人との面談だけでなく、その人の上司を主とした同僚たちへの聞き取り調査は入念に行います。
ただし、聞き取り調査に進んで協力してくれるような人たちは噂好きな人たちでしょうから、たとえ仲人が守秘義務を守っても、協力者たちから情報がダダ洩れになる懸念があります。そこに気づいた時点でこの案も雲行きが怪しくなってきました。
歯に衣着せぬ発言
重要なのは、お見合いのお相手は独身者たちが自分で希望を出すのではなく、仲人の紹介を受けるというところです。自分で選んでしまっては仲人はただの仲介人になり、結局はアプリと同じことになってしまいます。
プロの仲人がよく考えた組み合わせなのですから、自分が選ぶよりもよほど、「家族」として相性の良いお相手にあたる可能性は高いはずです。ただし、そのお相手が「恋人」としての希望も満たすとは限らず、不満を持つ人もいることでしょう。
「ええ~?相性が良えかどうか知らんけど、この人、異性として見るとちょっと違うかな…。ねえ、おばさん、僕と〇〇ちゃんとの相性、すごく良えんちゃうかって思いません?〇〇ちゃんとお見合い組まれへんかなぁ?」
こんなことを言おうものなら、仲人おばさんの愛のムチが打たれます。
「あんた!こんな一回りくらい歳の離れた若い子と結婚したいなんて、寝ぼけたこと言うてるんやないで!鏡の前で自分の顔とお腹をよーく見た後、顔洗って出直してこんかい!」
はかない夢から現実に戻された独身者は逆上します。
「なんやとババア!それがでけへんのやったら、お前がおる意味あらへんやろが、給料泥棒が!」
「何やてーーー!」
仲人に暴言を吐くような真似をしようものなら、「奴とは絶対に結婚するべきではない」という噂が瞬く間に広がってしまいます。ゲームオーバーです。
結論
それでも、会社が福利厚生として独身者の婚活を支援することには大きな意義があると思います。結婚相談所の会費を補助するのも良いですし、講師を招いてコミュニケーション能力や身だしなみなどの社内セミナーを行うのも良いでしょう。ゆくゆくは社内の活性化につながります。
ただし、自分たちの職場という狭い世界でお相手を見つけさせるのはリスクが高すぎます。ましてやそれを会社・組織が促すのは絶対に止めておくべきだという結論に達しました。
お相手は自己責任で見つけさせるか、結婚相談所などの専門の業者に委ねましょう。良かれと思ってはじめたことで混乱を招くほど悲惨なことはありません。
(完)