仕事「だけ」はできる男の悲喜劇 ~ドラマ「婚活探偵」~
ハードボイルドを貫けない時代
テレビ東京制作、向井理・成海璃子出演のドラマ、「婚活探偵」。現在、U-NEXTで観ることができます。
主人公の黒崎は私立探偵。見た目と私生活はいかにも昭和のハードボイルド。革のジャケットにティアドロップサングラス。煙草とウィスキーを愛する男。
だけど現実は、探偵の仕事は主に浮気調査。張り込みの際には、全身黒ずくめの格好が街の風景に溶け込めず目立ちすぎています。
年齢も40を過ぎて、孤独を愛するハードボイルドな生き方に迷いが生じた黒崎。意を決して結婚相談所に入会しますが、カウンセラーの診断の結果、黒崎の婚活能力は100点満点中16点!
洞察力が優れていても異性の心は読めず
ハードボイルドの主人公というのはたいてい、女性に対しては上から目線で決めつけるように発言し、最初は反発を買うけど、ピンチの時に助けたのがきっかけで相手は自分の虜!みたいなご都合主義でモテモテです。
だけどこの黒崎は、女性に対してはひどく緊張し、目線が定まらずまともに話ができません。こういうところは実に令和風。現代のハードボイルドは男社会でしか通用しない内向きな生き方なのでしょう。
それなのにお見合いは組めるらしい。そこはやはり、見た目は悪くないからなのか…。
何の参考にもならないが笑える
このドラマ、婚活の参考にはなりません。断言できます。共感できる部分もほとんど無いです。単に笑えます。そこがテレビ東京らしいと言うべきか。
「探偵」とありますがミステリの要素もあまりありません。だけど予定調和を微妙にはずしてくるオチはなかなか悪くないです。
泣けるシーンも特に無かったです。お勧めのポイントなんて単に「笑える」というだけです。だけどそれでも良いと思います。
婚活の体験談をもとにしたお話とか今や数多くありますけど、生々しすぎて、自分の記憶と重ねて「婚活疲れ」の痛みを思い出すのはあまり健全では無いような気がします。
こういうリアリティの無いコメディで、「婚活」なんてものを無責任に笑ってしまう方がよほど、心と身体の健康に良いのではないでしょうか。婚活や恋愛の辛い記憶など、一通り笑った後で、置いて行きましょう。