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足の爪切り×進化するトキ


訪問フットケアの仕事を起業して5年目に入りました。

主な訪問先は宮城県内の高齢者施設や高齢者住宅。そしてデイサービスや訪問介護、訪問看護等の介護保険サービスを利用しながらご自宅で暮らしている方のご自宅やショートステイ先になります。最高齢は自力歩行をしている100歳の方です。勿論、介護保険制度を利用されていないご年配の方のご自宅にも訪問をしています。

訪問によるケアを希望される方の大半は、巻爪や肥厚爪などの足の爪切りケア。ご本人やご家族。或いは看護師さん、介護士さんでも普通の爪切りで切ることが難しく、何年も爪を伸ばしっぱなしだったという方や自分で切ってみたけれども爪端が上手く切ることができず、かえって悩みが増えてしまっていたという方など男性女性問わずにご依頼を受けております。


これまで、

「もうどうにもならないと思って諦めていたの。」

「我慢していた。」

「目が見えなくて爪を切るのが怖くて困っていた。」

などといったお声を聞いてきました。


昨今。女性誌等でも足のケアに関して、より詳しくピックアップされるようになってきており最近の顧客様のご家族は足への関心の高まりが強くなってきているように感じております。


『医療機関での足の爪切り』

顧客様の中には過去に肥厚爪や巻爪などの爪を切ってもらいたく病院に受診した方も何名かいらっしゃいます。認知症の症状が深い方は、抑えられながら抜爪の治療を受け、それ以来、足先に触れるだけでも足を引っ込めてしまい足の爪切りができずに困っているというご家族。肥厚した爪切りのケアは病院でしてもらえず、爪の厚みの悩みは解消されないままだったという方。

病院では一人に対し診療時間を何十分も掛けられないということもあり、爪の状態によっては短時間で爪を整え終えるということは、とても難しい場合もあるのだと察することができます。フットケアに特化した専門の病院数も全国的に少ないのが現状です。看護学校においても基本的なスクエアオフの形に整えることしか講義での取り扱いがなかったという看護師をしている友人からの情報もあります。病院等で医師や看護師が爪をケアをして、悩みが解決できるのは100%に満たない現状なのかもしれません。

 今年3月にWEB参加した下北沢足病ゼミナール、レベルアップセミナーにて国内発の足の総合病院である下北沢病院の菊池院長は「健康な方の爪切りから重症の方のケアまで全てを病院で担うには限界がある為、どこかで線引きしフットケアセラピスト等への紹介、連携構築の必要性。」についても述べられておりました。


空白の行き届かないケア。「爪切り」

このような中で、『高齢者施設へ訪問によるフットケアを行うセラピストに対しての経済産業省からの通知』があります。

利用者の身体のうち医師が治療の必要がないと判断した部位に対して、軽度のカーブ又は軽度の肥厚を有する爪について、爪切りで 切ること及び爪ヤスリでやすりがけすること

 は行えるという内容。

詳細はこちら

https://www.meti.go.jp/policy/jigyou_saisei/kyousouryoku_kyouka/shinjigyo-kaitakuseidosuishin/press/171120_press.pdf


主治医の理解』

施設へ訪問するフットケアセラピストは主治医から治療の必要がない爪にて爪のケアを行っても良いということを書面でいただいた上で、ケアができるという流れになっています。主治医に理解をされなければ困っている方の爪のケアを行うことはできず、困ったまま暮らしを送らなければいけない人が出てくるのです。

又高齢者に多い足白癬や爪白癬。爪白癬の検査を行わない限り、分厚くなった爪は爪白癬とは診断ができません。受診して白癬菌かどうかの検査をするということも、尚更このコロナ禍の中行われていないのが現実です。足の爪切りケアが行えるかどうかは、すべて主治医に関わっています。

(注:肥厚爪は全てが爪白癬と思い込まれる方もいらっしゃいますが、その原因は靴による圧迫、加齢や遺伝による場合もあります。)


下記の日本皮膚科学会のHPに爪白癬の割合等の詳細が記されております。

https://www.dermatol.or.jp/qa/qa10/q06.html


『「軽度」のカーブ 又は 「軽度」の肥厚を有する爪 』

この文章だけで軽度がどこまで許容されるのかが判断し難いのは私だけでしょうか?私が今まで約10数年、県内外3箇所の特別養護老人ホームで見てきた高齢者の足の爪は「軽度」という表現では済まされないと思われる爪の厚さやカーブの方が多くいらっしゃいました。爪は毎日伸びています。それを、何年。或いは何十年と普通の爪切りで切ることができずに、そのまま伸ばしてきたのですから、その歳月分なりに爪に厚みが出るのも当然だと思うのです。

勤めてきた職場を例にすることは、したくはないのですが、より現実的に皆さんにお考えになっていただけるように今回は実態としてお伝えをしていきます。巻爪や肥厚爪を施設の主治医、看護師、介護士いずれも『爪を整えるケアの方法が分からないので、ケアができない』という現実がありました。伸び過ぎた爪を整えてあげたいけれども、どうにもできないもどかしさと介護士は闘っていました。そして放置せざるおえない爪のケアとなっていたのです。

医師も看護士も肥厚した爪のケアができないのなら、「一体、誰が爪を切るの?」ということになります。フットケアセラピストがお住まいの市町村にいないこともあります。


『介護士が行える爪切り』とは

 2017年に通知された「医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条」によると 

爪そのものに異常がなく糖尿病等の疾患に伴う専門的な管理が必要でない場合、介護士も爪を爪切りで切ること、及び爪ヤスリでやすりがけをすることはできるという見解。

医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条」の解釈の詳細→https://www.mhlw.go.jp/stf2/shingi2/2r9852000000g3ig-att/2r9852000000iiut.pdf


『爪を切る、爪を整える道具は進化している』

【爪切り用ネイルニッパー】

今や爪を切る道具は爪切りだけではなく、爪切り用ネイルニッパーも爪を切るための道具であり日用品等を販売する全国展開の某店も爪切り用ネイルニッパーを店頭販売しており、誰でも購入できる時代に変わりました。又、ある福祉用具の商品カタログにも載っている時代となりました。

巻爪の爪を切る際には、特にニッパー型の爪切りのほうが爪を切りやすい場合が多いのです。もちろん使い方を正しく知った上で、誰かに対して爪を切るというケアをすることを推奨いたします。

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【ネイル用マシーン】

分厚くなった爪や巻き爪をケアする際に、爪切りや爪ヤスリだけではケアが難しく、そしてケアを受ける時間の大幅な短縮にもなるネイル用マシーン。今やこちらも簡易的なものが全国展開の日用品販売店や福祉用具の商品カタログにも載っている時代。それぞれの用途に応じて、様々な形状のアタッチメントを装着してケアをしていきます。爪以外にも爪周りの甘皮ケア、足裏の角質ケアにも使用できる道具です。

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いつまで議論を続けるのか? 変わらないコト。

人間は暮らしを営む上で「爪を切る」行為が必要になります。

ひとりひとり爪の状態は千差万別であり、爪を切る道具、爪を整える道具は進化しています。


「介護士はニッパーは使ってはいけない。」

「看護師しかニッパーは使えない。」

「医療行為ではないのか?」

「ネイルマシーンは介護士は使ってはいけないのではないか?」

と思われる全国の介護、看護、医療に携わっている方が非常に沢山いらっしゃるのではないかと推測します。

実際私も県内外にて関連職の方より度々投げかけられるお言葉でもあります。根拠を交えてお話をしてくださる方は残念ながら、今までおひとりもいらっしゃいません。


アクション起こしていかないといけないトキ。

全国の人も資源も限られている山間部、沿岸部、離島などで暮らす方にも巻爪や肥厚爪などの足の爪切りケアが行き届くようにするには、どうしたら良いのか?ということをひとり考えています。

このきっかけとなったのは3年前より宮城県七ヶ宿町社会福祉協議会のご依頼にて宮城県内高齢化率1位の山間部に位置する片道約2時間の七ヶ宿町へのフットケアの定期訪問を通じてになります。町には日用品を購入できるのはコンビニ兼スーパーの1箇所。病院は診療所1箇所のみ。訪問看護ステーションも、フットケアサロンもありません。訪問介護やデイサービスを利用されている方は少しずつ介護士さんや看護師さんとの足のケア(清潔保持)の連携も始まっています。しかしながら介護保険サービスを利用されていない方の爪切りの需要も多く、繋ぎ役の社会福祉協議会の存在がなければケアを必要としているおじいちゃん、おばあちゃんには爪切りのケアは行き届かないのです。

これはきっと、日本の中に同じような状況下の市町村は存在しているのだと思います。

通知内容に明確な言葉や爪を切る道具、爪を整える道具の付け加えだったり、他の何かが一歩進むことで何十年と続いている介護、看護、医療職等がもつ固定概念なりが壊れ、堂々と爪切りケアをできる人を増やしていかなければ足爪の悩みの解消や必要な足爪のケアは一向に届かないままなのだと思うのです。


私は高齢者に携わる仕事をしている時、自分たちがしているケアやコトは自分たちの老後にもそのまま跳ね返ってくるものだと、そう思いながら最近仕事と向き合っています。

すべては、どこに住んでいても必要な足のケアが行き届くために。

そして「多くの人の笑顔」と「自分や大切な人たちの暮らしやすい老後のために」。

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少しでも前進している、

より良い明日の暮らしとなるように。

考え、行動しながら

私は進むのみ。



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