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幼稚園時代に出会った思い出の本

しのは きょろきょろしたよ。
もうれつに きょろきょろしたよ。
いろんな いろが みえたよ。
あおっぽいみどり、みどりっぽいあお、ひかってるきんいろ、

詩人、谷川俊太郎氏が若かりし頃に書いた童話、児童文学である。
「しのは きょろきょろ」というタイトル。
1969年初版、一度絶版になり、2008年復刻したが、今はまた手に入れるのは難しい。

いくつのときに出会ったのか、はっきりと覚えていないけれど、2年保育だった幼稚園の頃に 手にしたのは確かだ。年中か年長か。

ただ、上記のように
今でも冒頭の部分を暗記しているくらい読んで、大好きで印象に残っている一冊。

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5歳の「しの」はデパートにいる。

おかあさんが7階の美容室にいるあいだ退屈なのでデパート探検にでる。
しらないひとについていかない、おもてのとおりにでない、おそくならない、7かいのびようしつをわすれない、と約束をして。

たくさんの色がキラキラしている飾り。
エレベーターとエスカレーター。
地下食品売場におもちゃ売場。
そして、さくらんぼ姫!
そこには、わくわくどきどきが詰まっていた。

今では、5歳の女の子がひとりでいるなんて考えられないけれど、私の幼少期は文房具売り場やおもちゃ売り場にこどもだけで放置されて30分後に合流ね、ということが普通にあったし、デパートの屋上はちっちゃな遊園地みたいになっていて、こどもの遊び場だった。

大人になってから無性に読みたくなって探したことがある。
絶版となっていたので2008年より少し前のことだ。

ネットで調べると絶版で、その頃住んでいた私の街の図書館にも蔵書がなかった。いろいろ探したところ、姉が住む千葉の図書館の閉架図書にあったと聞いて30年ぶりくらいで読んだときには懐かしさがこみ上げた。

その時に、作者が谷川俊太郎氏であったことを知ったのだった。

子どもの時は、もちろん作者なんて気にもとめず、ただ印象に残る本だった、それだけだったから。

大人になった私は何冊かの彼の詩集を持っていたので、軽く衝撃をうけた。
こんな幼い頃から私は彼の文章に魅せられていたのかと。

そして、谷川俊太郎さんは小さな子どもの私も大人になった私も夢中にさせるような、どの世代の文章をも書けるやっぱりすごい人なのだな、と感じた。

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それからしばらくして、郊外の図書館に置いてあるのを見つけた。
そこで2008年に復刻していたのを知り、すぐにネットで調べたけれど既に売り切れ在庫なしだった。

なので、その図書館に行くことがあれば「あ、そうだ」とたまに手に取っている。そんなふうに、たまに会う懐かしい友人のような存在の一冊。

https://www.ehonnavi.net/ehon/21441/しのはきょろきょろ/

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そして、幼少期から親しんでいた挿絵は確か……。
そう、確認するとやはり、先日亡くなられた和田誠氏だった。
私の心を育んだ作品です。お世話になりました。




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