うちのフィガロを知ってるかい。ウエハラケンタと言うんだよ。打者転向を白村より先に言われた男。投手に拘り続ける、ドラフト1位の心はいかに。

2019 4/27 F×H 1−5 札幌ドーム

土曜の店は混んでいる。10時開店から途切れることなくレジにはお客さんが並んでいる。やっとの事で次の若レジさんに引き継ぎをしてどっと疲れた午後2時ごろ。わたしは、お気に入りの喫茶店ちゃっかるにいる。

しまったっ。カレードリアとチャイの写真撮ればよかった。今ひとつインスタ映えラーにはなりきれない50代。そもそも何とかラーとか言ってる時点でダメだろう。それはともかくカレードリアを待ちながら、スマホで見たのは、もちろん野球の一球速報だ。

札幌ドームは、ファイターズ対ホークス。平成のパリーグにおけるライバル対決。先発は上原健太。すでに二回表で2失点。はえーなおい。スマホの画面は、固まっている。牧原大成に粘りに粘られているらしい。3点目が入る。ピッチャー強襲のヒットと速報は知らせていた。

相手は、今季絶好調。160Kも記録した豪速球とお化けフォークの千賀様である。千賀様に対してもう3点取られちゃったのかよお…。しぶしぶと家に帰り、テレビをつけると4回表、ホークスの得点は4になり、マウンドには玉井大将がいた。上原健太は、ベンチに座っているだけだった。

沖縄に生まれた上原くんは、中学3年の時に、このまま沖縄にいたら甘えたままになってしまうと考え、遠い広島の広陵高校へ自ら入学願いを出したというエピソードの持ち主だ。やがて明治大学に進学。長身の「本格派左腕」として注目されファイターズがドラフト1位で指名した。栗山監督のせいでクジに外れ外れだったが、1位に変わりはない。

皆が思い出すだろう。ルーキーの年、初めてプロで投げた沖縄国頭の紅白戦。あろうことかチームメイトから上原くんは滅多打ちにあう。なんと8失点、3アウトを取れないまま、その回は終わりの異例の事態。吉井コーチに肩を抱かれうなだれるドラフト1位。

しかし、もっと忘れがたいのは、彼が次の回もマウンドに上がり投げたことだ。いきなりボコボコにされプライドもズタズタのボロボロだったはずなのに、逃げることなく、ちゃんと3アウトを取って下がった。

凄いなと思った。根性ないんだかあるんだかわからないけど。その日の上原健太の姿は忘れられない。

それから上原健太は、あんまり変わっていない。根性あるんだかないんだかわからないまま、結果も曖昧なまま時は過ぎていった。一昨年のオフには、糸井嘉男並みと誉れ高い身体能力を生かし打者転向を球団から促されたという。しかし、投手に拘り、ダメなら諦める気持ちで挑んだ咋シーズン。交流戦、第二の故郷広島で先発勝利、初ホームランを放つ。さあ本格化か!と期待されたが、尻すぼみで終わった。

去年の春、広島のオープン戦に行った時、球場帰りのバスを見送ろうと待っていた。その後ろで地元の人らしき女性が

「杉谷くんきたら教えてください!杉谷くん!顔わかんないんで!」

と叫んでいる。「はいはいわかりますよお」と応えながら。拳士は後ろのバスに乗っちゃったみたいで一向に現れない。

と、くだんの女性がまた叫ぶ。

「あ、あの人誰!!?今乗ってきた人、誰?めちゃめちゃカッコいい!!!」

ああ、彼はうちのフィガロ。上原健太くんです。カッコいいでしょ??

「めっちゃカッコいい!モデルみたい❤️」

そうなんですよお。

我が家で勝手につけた彼のアダ名はフィガロ。「フィガロ」ってファッション雑誌の表紙を飾れるくらい、上原健太は正真正銘八頭身美男子だから。ただし黙っていればだけど。にこにこすると「ニャンちゅう」になっちゃう。それも上原健太。美男子なのかニャンちゅうなのか。いや、きっとそのどちらでもあるままでいい。

上原健太よ、今年こそ結果を出すのだ。

甘えるのが嫌だと故郷を一人飛び出した。少年の心の焔は、未だ消えてはいないはずなのだから。


          ファイターズ 11勝11敗2分










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