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好きなものがわからない人に読んでほしい話
趣味や価値観、働き方が多様化した現代で、「好きなものが見つからない」という悩みをもつ若者は多いようです。心から好きなものに熱中している人を羨ましく思ったり、無趣味な自分は面白みのない人間なんじゃないかと落ち込んだり……。でもそれは、単なる思い込みなのかもしれません。
ここは気軽にエッセイでも読んで、一息抜いてみませんか?
漫画が大好きな少女、その名はちびまる子ちゃん
漫画『ちびまる子ちゃん』のこぼれ話を集めたさくらももこのエッセイシリーズ、『あのころ』(1996年)『まる子だった』(1997年)。そのラストを飾ったのが今回紹介する『ももこの話』(1998年)です。
個人的に一番スキな本で、大人になってから読むと刺さるのが「目立つ少年と地味な少女」という話です。
Jリーグで活躍した元サッカー選手・長谷川健太氏は、さくらももこの小学校時代のクラスメイトですが、子どもの頃からサッカーが大好きだったそうです。
一方、さくらももこは当時から漫画家になることを夢見て、授業中に絵を描く練習をしたり、夜中に漫画を読んだりして過ごしていました。
かたやスポーツで爽やかに汗を流す利発な少年、かたや運動が苦手で漫画ばかり読んでいる目立たない少女……。母からも「アンタも長谷川君のやってることひとつぐらいマネしてやってみな」となじられる始末。
ですが、二人とも子どもの頃から大好きなものに打ち込んで、結果的に夢を叶えたという点では変わらないのです。それなのに、なぜスポーツ好きは褒められて、漫画好きは怒られるのでしょうか?
人は、知らず知らずのうちに趣味に優劣をつけがちです。読書や芸術は高尚な趣味、アニメやゲームはオタクの趣味……とでもいわんばかりに。しかし、当然のことながら、どちらの趣味も他人から否定されるべきものではありません。
今こそ、私はここでキッチリ漫画好きのメリットを主張することにしよう。漫画を読むということは、体の運動ではなく心の運動なのだ。楽しい絵やキャラクター達のしゃべるセリフにより、心がどんどん広がってゆく。冒険をしたり、すてきな恋愛をしたり、なんか知らんけどやたら感動したり、ビジュアルと共に自分のペースで無理なく心を運動させることができる素晴らしいもの、それが漫画だ。(『ももこの話』p103)
また、さくらももこは授業中もさまざまなことに想像力を巡らせていましたが、周囲からは「うわの空だ」と注意されていたというエピソードが『まる子だった』に綴られています。
子ども時代にこうして培われたものが今も世の中に残り、多くの人を楽しませているなんて、たいへん素晴らしいことではありませんか。
ドラマ好きから一言
ちなみに私は子どもの頃からテレビドラマが大好きでした。
昨今ではテレビが家にないという人も多く、馬鹿にされたことも少なくありません。趣味を聞かれたから答えたのに、「じゃあ趣味はないってことですねww」と初対面の奴から言われたこともあります(アイツいつか殴りたい)。
しかし、ドラマも漫画と同じく、登場人物の心の揺れ動きを通じて想像力・共感力が養われるエンターテイメントです。また、各作品には撮影当時の社会背景が投影されており、あとから見ることで新しい発見につながることも数多くあります。
最も重要なのが、何気なく観ているからこそ伝わるメッセージがあるということ。
例えば、誰にも言えない悩みを抱えている、またはアドバイスをもらったけどなんとなくスッキリしない……というとき、たまたま観ていたドラマの登場人物が発した台詞で、スーッと心が軽くなることがあります。自分とまったく利害関係がない人の言葉の方が、胸に届くことはあると思うから。
テレビや雑誌などマスメディアの仕事は、医療や役所と違って、世の中にないと絶対に困るものではありません(災害時などを除く)。だからこそ、顔も名前も知らない誰かが、ちょっと元気になれたり、毎日の生活が少しだけ豊かになる、そういうものをつくれる人になりたいと私は思いました。
それを最初に教えてくれたのが、テレビドラマとさくらももこのエッセイだった気がします。
好きなものに正解はない
本当は好きなものがあるのに、「趣味とは呼べないかも」「好きっていうほどでもないし」「人に言ったら馬鹿にされそう」という不安を抱える人も多いでしょう。他人や世間からどう思われるか気にするなと言われても、実践するのは難しいかもしれません。でも、他人の好きなものを否定する権利は誰にもありません。
というか、あなた自身が自分の好きなものを否定していていいんですか?
仕事や普段の生活にわかりやすく活かせなくてもいいじゃないですか。
皆様に良き出会いがありますように。