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流線型の最適解を探る

私が乗る車の横を颯爽と走り抜けるジャガー

吹き抜ける風を具現化したかのような、深緑色のなめらかな車体が脳裏に焼き付く。

これが私の原体験。小学5年の夏、流線型の魅力に取り憑かれた瞬間である。

 

”流線型”とは、乗り物など高速で移動する物体が空気・水から受ける抵抗を極限まで抑えるために曲線で構成された形のこと。車や電車、飛行機、船舶などがそうである。

空気や水の抵抗を抑え、かつ乗り物としての機能と安全性を最大限引き出すための形。

流線型の奥には、頭を抱えながら数値と向き合う開発者たちの頭脳戦の跡が見て取れる。そのギリギリの戦い。「どこまで突き詰められるか」を考え抜いた結果が、私たちの日常の足である乗り物の姿だ。

 

これって、人類が生み出す究極の曲線美ではないか。

 

そんなことを考えながら、気がつけばあの小学5年の原体験から23年。33歳になってしまった。

新幹線は東京-函館を結ぶE5系「はやぶさ」が美しい。秋田新幹線のE6系「こまち」も負けていないが、僅差で「はやぶさ」に1票。

飛行機はどうだろう。ボーイング社が2018年に発表した超高速旅客機「マッハ5」は尖りすぎている。あれはもはや曲線ではない。見た目がシロイルカに似ていることから名付けられた大型輸送機「ベルーガ」、なかなか迫力があって曲線美も感じるが、少し趣向が違うので特別賞といったところか。

なんだかんだで見慣れているボーイング7〇〇シリーズが王道で美しいように思う。(特に787)

船は、非常に残念ながら未だ惚れ込むような流線型の船体に出会えたことがないので、詳しい人にオススメを紹介してほしいと切に願っている。

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(画像引用:鉄道新聞「「こまち」じゃない…赤い新幹線E6系「はやぶさ」が存在する」http://tetsudo-shimbun.com/article/trivia/entry-898.html(2020/5/13))

上が「はやぶさ」下が「こまち」。形がほぼ変わらないのは分かっている。(「こまち」の方がノーズが長い)

車体の細かなディテールも含め、総合点で「はやぶさ」の美しさに1票。

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(画像引用:WIRED「「ボーイングが考える「マッハ5」の空の旅は、ロケットより快適で安全なものになる」https://wired.jp/2018/07/04/boeing-hypersonic-concept/(2020/5/13))

こちらはボーイング社が2018年に開発計画を発表した超高速旅客機「マッハ5」。未来だ。でも尖りすぎていやしないか。

超音速の空気抵抗を受け流すにはこれくらい尖ってしまうのか。なら普通の速さで良いと思ってしまう。

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(画像引用:黄金の国ジパング「巨大イルカが空を飛ぶ!?飛行機を運ぶ飛行機「エアバス・ベルーガ」」https://golden-zipangu.jp/france-plane0806(2020/5/13))

これがエアバス社の大型輸送機「ベルーガ」。飛行機の中に飛行機積める。言い換えると飛行機の中から飛行機出てくるマトリョーシカ的なワクワク感がある。

全体がふっくらした曲線で構成される機体は中身への好奇心をそそられる。(そうか、ふっくらした女性が好みの男性心理はこんな感じなのかもしれない)

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(画像引用:note 旅人shoki「飛行機の種類ーボーイング社ー」https://note.com/shoki_traveler/n/ne8c9f8d02e3d(2020/5/13))

ボーイング787。これまでの機種よりも鼻先と尻尾がシュッとしてフォルムが新しくなった。

この流線型、本当に無駄がなく綺麗。飛行機は本体だけでなく尾翼、エンジン部分とあらゆる曲線の集合体なので永遠に眺めていられる。用もないのに空港に行き、展望デッキで一日過ごすなんてざらである。(国際線が一番楽しい)

 

さて、最後は車だ。

まず最初に言っておくと、私はセダン型以外の車に”美”としての興味は湧かない。

我が家は家族構成的にセダン型ではない車に乗っているが、これは完全に機能性とコストパフォーマンスを基準に選んだ結果である。

と前置きをしたところで、私の原体験となったジャガーXJを紹介したい。

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(画像引用:MOTOR DAYS「ジャガー XJ 3.0 エグゼクティブ
新車試乗記(第419回)」https://www.motordays.com/newcar/articles/jaguarxj3020060617/(2020/5/13))

どうでしょう、このフォルム。この美しい流線型。

緑豊かな避暑地を、この深緑色の車で走りたくはなりませんか。

23年前の小学5年生の私よ。良くやった。

君が車窓ごしにこの車と出会ったがために、「流線型を眺め、愛でる」という私の生涯の趣味が始まったのです。

そして、その時意図せず私が乗る車の横を走り抜けてくれたジャガーのドライバーの方にも感謝申し上げたい。ありがとう。あなたのお陰で今があります。

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(画像引用:そういえばジャガーやベンツなど高級車のボンネットマスコットが無くなったような…」https://middle-edge.jp/articles/9CF6B(2020/5/13))

ジャガーといえばこの立体エンブレム。

13年前に私が見惚れたジャガーにもこのエンブレムがあったのだが、安全性の問題で”突起物”とみなされてしまい、ジャガーに限らず車の立体エンブレムは今や滅多に見られなくなってしまった。

ジャガーの立体エンブレム「ザ・リーピング・ジャガー」は彫刻家によってデザインされた曲線美の織りなす芸術作品。今にも動き出しそうな躍動感に憧れた方は多いはず。復刻版の発表を切に願う。

 

「流線型の最適解を探る」

これは完全に私の主観的世界の話。もしもこれまでの中で誰かの価値観を傷つけてしまっていたら大変申し訳ない。

でも、ここまで並べてみてわかったことがある。

私にとっての究極の曲線美=流線型の最適解は、尖りすぎず、丸っこすぎず、でもシュッとした躍動感を感じるもの。

やはりジャガーなのである。

しかし、33歳の私はもう一つの答えを見つけてしまった。

2 霧島山1

 

山だ。

空気や水の抵抗力に対して形づくられているわけではないので、もはや流線型とは言えないが、山はまさしく理想の曲線美である。

山頂の鋭角な曲線、稜線が描くなだらかな曲線…いろいろな曲線が組み合わさる自然の芸術作品。

我が家が暮らす鹿児島県霧島市には、天孫降臨神話の霊峰「高千穂の峰」を含む霧島連山がある。

いつか深緑色の復刻版ジャガーに乗って、霧島登山に出かけたい。

その時は人類の知能が生み出す究極の曲線美である流線型と、自然の神秘が生み出す雄大な芸術作品のコラボレーションを、全身全霊で愛でようと思う。

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