今さら聞けない音楽用語【第3回・リステッソテンポ】
今日のテーマは「リステッソテンポ L'istesso tempo」です。
この楽語は、音大受験の時に出題される(意味を問われる問題で)ことがあるため、みんな丸暗記しているのですが、実際どのような場合に使われるのかあまり知らずにいる学生が多いために取り上げてみました。
【リステッソテンポとは】
L'istesso tempoは、楽典の教本などには「同じ速さで」という意味で載っています。
似たようなテンポ表記に、
a Tempo もとの速さで
Tempo I 最初の速さで
というのがありますが、それとは何が違うのでしょうか。
L'istesso tempoの最大の特徴は、
「拍子が変わっても、1拍の長さが変わらないこと」
です!
なので、拍子が変わるところに表記される用語になります。
stessoがイタリア語で「同じ」という意味。
Lo stesso tempo ロステッソテンポとか、Lo stesso movimento ロステッソモヴィメントと表記されることもあります。
(下写真参照。)
以前、リステッソとロステッソの違いをイタリア語の堪能な方に質問したら、「おなじ」と言うか「おんなじ」と言うかくらいの違いだと言っていました。どちらでも良いみたいです^^
【リステッソテンポの使われ方】
実際にどのような場合に使われるのか実曲で見てみましょう。
①拍子記号を書いていなくて、L'istesso tempoと書いてある場合
(Rachmaninoff :Etudes tableaux op.39-9; boosey&hawkes)
これは、拍子が2拍子だったり3拍子だったりコロコロ変わるけど、
いちいち拍子を書くのが面倒なので、L'istesso tempoと表記して拍子記号を省略している例。
ちなみに、これに拍子をちゃんと書き込むとこんな感じに。↓
ちょっとうるさい印象かもしれません
②単純拍子と複合拍子が混合していて、L'istesso tempoと書いている場合
よくあるのが、
4分の2拍子から8分の6拍子に変わるとき(またはその逆)
とか
4分の3拍子から8分の9拍子に変わるとき(またはその逆)
要するに、『♩=♩. 』(四分音符=符点四分音符)です!
これ↑をずっと同じ4分の2拍子で書き続けると、
このようになります。
3連符に3、3、3…とずっと書いているのが面倒になってきます。
拍子を変えてL'istessoと書いておく方がスマートかもしれません。
また、もしかしたら拍子変えずに連符で書くよりも、
単純拍子と複合拍子の感覚の違いを出した方がいい箇所かもしれない。
でも、いずれにしても、
テンポは変わらずそのまま淡々と進んでいきます~
(Puccini: Madame butterfly; Ricordi)
テンポは変わらなくても、単純拍子と複合拍子がチェンジしただけで雰囲気が変わります。
L'istesso tempoと書いてあるより、『♩=♩. 』と書いてある曲の方が比較的多いかもしれません。
②のタイプのリステッソ~を見つけたら、テンポが一定なのを気をつけながら、単純拍子の時と複合拍子の時でどんな感覚の違いがあるか、意識してみると良いと思います。
③単純拍子の中で(または複合拍子の中で)拍子が変わるときにL'istesso tempoと書いてある場合
(Puccini: La boheme; Ricordi)
上の譜例は8分の2拍子から、4分の3拍子へ、
♩=♩
で、単純拍子同士のリステッソテンポですが、
8分の2拍子の1小節が、4分の3拍子で3つ分も入るため、
テンポは変わらないのに、急に進みが遅くなったような感覚になります。
オペラなどは、違うキャラクターが同時に舞台上で動いているため、
同じ進みで違う雰囲気の音楽を表現するために、リステッソテンポが上手く利用されているように思います。
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なお、ある程度の知識がある方に向けて書いていますので、これじゃついていけない、という方は、ぜひ個別レッスンに!その人にあったレベルで解説します。(対面、オンラインどちらもあり)
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