今さら聞けない音楽用語【第4回・ドリア旋法】
今日は2週ぶりに音楽用語シリーズの記事です。
教会旋法の中でもよく使われる「ドリア旋法」について取り上げます!
ドリア旋法…の前に「教会旋法とは」
「ドリア旋法」とは、の前に教会旋法を知る必要がありますが、
「教会旋法」というのも、『イドフリミエロ』(旋法の頭文字)だけ覚えて結局何のことだかわからない、という人が多いように思います。
「教会旋法」というのは、現在の「長音階」や「短音階」が使われるようになる前(グレゴリオ聖歌~バロック頃まで)に使われていた旋法(モード mode)です。
「旋法」というのは今でいう音階のようなものです。(厳密には「音階」と使い分けますが、話が長くなるのでここでは深く掘り下げないこととします。)
子どもの頃から長音階と短音階だけ習ってきて、急に受験で楽典の本を読み、実は旋法もたくさんあるし、全音音階や五音音階やさまざまな音階の種類を見て驚く!のではないでしょうか。
話を戻して、「教会旋法」の種類を見てみましょう。
これも、正格旋法、変格旋法(ヒポ)とかいろいろありますが、とにかく覚えておきたいのは以下6種類です。
この名称を丸暗記するため、先ほどチラッと出てきた『イドフリミエロ』という呪文のような言葉を覚えるのですね!
この中で①のイオニアが「長音階」として、
⑥のエオリアが「短音階」としてその後残ります。
ちなみに、ロクリア旋法は括弧で括ってありますが、理論上あるものの使われません。(減5度ができる箇所があり、当時この音程は「悪魔の音程」と呼ばれて使われなかった。)なので、個人的には「イドフリミエ」まで覚えればよいと思っています。
ドリア旋法とは
この中で、今日のテーマである「ドリア旋法」を取り出して見てみると、
どうでしょうか。
なんだか寂しいような、異国を想うような…
どんな印象を持ちますか?
似ているd mollの音階と比べてみましょう。
第6音が違いますね。ここがポイント。
ドリア旋法は、「(自然)短音階の第6音が半音上がったもの」です!
このように馴染みのある短音階と絡めて覚えておくのがミソです!
これはドリアを見つける大事なポイントなので、必ず覚えておきましょう。
この、短音階の半音上がった第6音のことを、「ドリアの6」と言います。
(※注 記事のまとめのところで再度確認。)
たまにドリア旋法を「レから白鍵で弾く音階」と覚えている人がいて、その通りなのですが、旋法は主音を移動できるので、なにもレから始めなくても、「ミから始まるドリア旋法」「ラから始まるドリア旋法」というように、音程(interval)さえ合っていればどの音を主音にしてもドリア旋法が作れます。
…では、早速作ってみましょうか(^^;
突然ですが
♪♪♪やってみよう♪♪♪
次の旋法を高音部譜表にに書きなさい。
①ミから始まるドリア旋法
②ラから始まるドリア旋法
※自然短音階の第6音半音上げ!ですよ!
答えは記事最後に!
ドリア旋法を使った曲
実際どんな曲に使われているのか見てみましょう。
私がいつもドリアの説明をする時に引き合いに出す、オススメの曲3つをご紹介。
1.スカボロフェア
サイモンとガーファンクルの代表曲、「スカボロフェア」です。
私はこの曲が大好きなのですが、最近の若い子はこの曲もサイモンとガーファンクルも知りません(涙)
d mollで調号も書いてありますが、第6音であるシが半音上がり♮になっています。ここがドリアの6。
これがそのまま♭シだったら…ただただ悲しい曲かも。
2.グリーンスリーブス
これも有名な曲。イングランド民謡です。
(若い子には「家の電話の保留の音楽だ」とか言われます…)
e mollで書いてみましたが、第6音、半音上がっていますね。
この曲の魅力は、ドリアで書かれながらも、フレーズ終わりは導音を使い、半終止、完全終止はきちっとするのです。(黄色のマーキング部分)
ピンクの箇所はドリアと取っても、D durに転調したと取ってもどちらでもよいと思います。
短調なような、長調のような、
民謡でありながら、少しクラシカルな部分もあり…といろんな面を併せ持つ名曲だと思います。
3.動物の謝肉祭より「ライオンの行進」
(サン=サーンス 後藤眞編 『動物の謝肉祭』;全音楽譜出版社)
フランス近代も旋法を上手く使った作品が多くあります。
このサン=サーンスをはじめ、フォーレ、ドビュッシー…ぜひ色々見つけてほしいと思いますが、それまでの調性音楽にはない和声の「色」が出せるのも旋法を使うメリットの一つです。
この動物の謝肉祭の1曲目、序奏が終わった後はライオンの登場ですが、ドリア旋法を使ったことで、ちょっとファンタジックに聴こえてきませんか?
青のマーキングの箇所、もしもこれが、第6音が♯でなくて、♮ファだったら…?
現実的で恐ろしいライオンをイメージしませんか!^^
まとめ
教会旋法は昔の旋法だから自分には関係ない、と思ったら大間違いです!
特にドリアはジャズでも良く使われ(ドリアンスケールという言葉、聞いたことありませんか?)現在でも様々な音楽に使われます。
和声短音階や旋律短音階と比べて、先ほど書いた「寂しさ」「異国情緒」みたいな(私の個人的な印象ですが)雰囲気な理由として、
「限定進行音」がない、ということが大きいと私は思います。
機能和声の中では、導音は主音に行くとか、属七の第4音は第3音に下がる、とかありますが、そういう進行が限られている音を「限定進行音」と呼びます。それが、旋法にはない。
そこが独特の浮遊感を醸しているのだと思います。
先ほど、「ドリアの6」というのが出てきました。
もしかしたら、私の記事を以前から読んでいる人はあれ?と思ったかも知れません。
『調判定できるようになりたい!』シリーズの第5回「借用和音⑤」で、「ドリアのⅣ」という和音を解説しているのです。
こちら→https://note.com/rie_matsui/n/nbb900cb0ce15
ドリアのⅣの和音、よく見ると第6音にあたる音が半音上がっているのがわかると思います。
「ドリアの6」の音を含むので「ドリアのⅣ」ということですね!!
…もう4も6も似ているし(Ⅳ、Ⅵ)紛らわしいからいつもイライラしています(笑)
皆さまはきちんと使い分けられるようにしましょう!
質問、感想、ご意見、こんなこと取り上げてほしい!などのリクエストありましたらお気軽にコメントください。
なお、ある程度の知識がある方に向けて書いていますので、これじゃついていけない、という方は、ぜひ個別レッスンに!その人にあったレベルで解説します。(対面、オンラインどちらもあり)
レッスンご希望の方はrie3_e_mail@nethome.ne.jpまで。
♪♪♪やってみよう♪♪♪解答