高嶋樹壱ネプリ個人詩誌『hummingboy:02』を読んで
2024年7月13日発行のネットプリント詩誌。現在はネットプリント期間が終了しているため入手できない。
この詩誌は、個人詩誌にして充実しており、A5版全16Pの中に詩篇2篇、書評一冊、エッセイ一本が収録されている。
『未命樹について』ミメージュ、とは何か。漢字で表記すると、生命の樹(世界樹)などを想起する。だとしたら、この樹は、未だ命に成らぬ、命名に成らぬ樹、幼木といったところなのだろうか? 読み進めていったが、自由闊達とも言える表現方法を試みながら、なぞめいた「未命樹」について、はっきりとは明かされることなく進んでいく。「数として生きたがっていた風」「不老不死を願うのを辞めた」など、世界樹の幼木ではないかと思われるような詩行を感じながら最後まで辿り着いてしまった。最終連の最後の二行は、美しくこの詩を閉じる。歩き出していく……という、出発で。
そして『宿塚』これはやどりづか、だろうか? やどつか? で合っているだろうか?
塚とは古墳や碑であり、宿塚とは集合遺跡とも考えられた。これはすなわち、何の塚であり、墓であり碑なのか。
「僕のりょうあしをかえしてください」と冒頭で言ってきた彼。確かに得体の知れない他者なのに「わからずにはいられないあまりに/わかりたくもないことだと思った」と言うところで彼と僕の境界が曖昧になる。すると、その瞬間に僕の物語(散文詩の連へと行分け詩から形態が変わる)が想起され、彼と僕とは、巨人へと変容していく。
ひたひたと、底の冷えるような終着点なのに、どこか暗い安堵感を与えてくる。
書評は2段組3ページを割き、充実の内容だし、エッセイも2段組二ページと読ませてくれる。
01とともに、何かの機会にバックナンバーも入手できる機会があるといいが、この詩誌の裏表紙にある告知が現実化する方が早いかも知れない。