目のゴミのゆくえ
人はどれくらいの頻度で目にゴミが入るのだろうか。
わたしは目にゴミがよく入る方だと自負しているのだけれど、統計をとったことがあるわけでもないので、真偽のほどはわからない。
もしかしたら、人それぞれ「自分は誰よりも目にゴミが入る」と心の中で豪語している可能性だってある。
わたしの目にゴミが突入してくる頻度はどれくらいかというと、だいたい多くて週に2〜3回、少なくても週一ペースだ。ほとんどが繊維のような細いもので、たまに微細な塵なのか埃なのかわからないようなものが入り込んでくる。
繊維が入るのは、わたしが毛糸を扱う仕事をしているからなのかな、とは思うのだけど、糸を生業や趣味にしている方から同じような意見を聞いたことがない。
でもそれも、わたしが同じような生業や趣味の方とほとんど交流していないから知らないだけかもしれないし、目にゴミが頻繁に入るなと思っていても、その人が口に(文章に)しないだけなのかもしれない。
どちらにせよ、週一ペースでゴミが目に入ると非常にうっとおしい。それが朝出かける前だと尚のこと。やっかいにも程があるのだ。
家から駅まで、急な坂道が1.2kmほど続くうえ、目的地まで乗り換えなしで連れていってくれる電車が10分に一本しか来ないため、朝は決まった時間、8時22分きっかりに出ないと全てが終わってしまう。
それなのに、あと2分で出なきゃいけないというところで、目に違和感を覚えたりする。違和感どころか、痛い。このままでは眼球に傷がつくんじゃないかってくらい、痛みを感じる。
ひとまず鏡の前にすっ飛んでいって、左手の親指と人差し指を使って目を大きく開き、眼球の様子を鏡に映して痛みの原因をたしかめてみる。
よくあるのが、上まぶたに引っかかったほそ〜い繊維が、つっと眼球を侵食していること。そういう場合は、利き手である右の指の腹を使って、やさしーく眼球の表面をなぞり、繊維を取り除くのだ。
小学生の頃、「俺目ん玉触れるで〜」と言っては本当に目玉を触っていた男子はいなかっただろうか。わたしのクラスには、いた。何やってんの、怪我したらどうすんの、と思っていたけれど、まさか大人になって自分が目玉を触ることになろうとは。
みなさまはくれぐれも真似をしないように。
例の男子はともかく、わたしは特殊な訓練を受けているので眼球を直接触ることができるのだ。嘘だけど。
触るといってもほんの一瞬、1秒にも満たないあいだ、ちょんと触るだけ。
たいていは、上まぶたに触れるだけで取り除くよう試みる。それでも取れなければあっさり諦める。
諦めたときは、目薬を目一杯差してから、出かける。
そうすると、いつのまにか目のゴミがどこかへいくことがある。
明らかに外に出てくることもあるけれど、出てこないことがほとんどで、はて、出てこなかったゴミは一体どこへいくんだろう?
わたしの体内を、宇宙ごみのように、永遠に彷徨うのだろうか。