自分の好きなことと社会課題解決を繋げられる事業|子どもの「体験格差」解消プロジェクトリーダー梅原慎吾 [転職 to リディラバ vol.5]
リディラバ事業開発チームでは、先日、子どもの「体験格差」解消プロジェクトをスタートしました。
「転職 to リディラバ」企画vol.5 では、この『子どもの「体験格差」解消プロジェクト』に焦点を当て、プロジェクトリーダー・梅原さんにその詳しい内容やプロジェクトが目指す未来、リディラバでこのプロジェクトに取り組むことの面白さについて聞きました。
※名称『子どもの「体験格差」解消プロジェクト』は仮称です。後日正式名称が決定しましたら改めてご案内いたします!
子どもの「体験格差」解消プロジェクト(仮題)について
はじめまして、事業開発チームの梅原慎吾です。
事業開発チームでは、4月末に(仮)子どもの「体験格差」解消プロジェクトをスタートしました。
子どもの頃の自然体験や地域活動等の体験の有無は、「やる気や生きがい」「思いやりや人間関係(構築)能力」といった、いわゆる非認知能力の有無に大きく影響していることが明らかになってきています。
しかし、「家庭の経済状況が厳しく旅行に行けない」「仕事が忙しく親が子に向き合う時間を取れない」「不登校状態で学校行事に参加できない」など、家庭環境等が原因で、自然とふれあう、アートに触れる、いろいろな大人と出会う...といった様々な体験を、それらを本当に必要としている子どもほど得られていないという課題があります。
一方で、子どもの社会課題として経済格差、教育格差といった課題はよく挙げられますが、体験格差については、課題の背景や、そもそもどういった体験が子どもに必要なのか、それが誰にどう欠けているのか、といったことに関する調査・研究があまり行われていないのが現状です。
このような状況を受け、このプロジェクトでは、「子どもの体験格差」についてまずは調査・研究を行い、それを社会に発信していきたいと考えています。
既存の調査研究内容などのリサーチにとどまらず、日常的に子どもたちの支援を行う関係機関と連携し、ヒアリングを行ったり、そこにいる子どもたちと接点を持たせてもらったりすることで、実際どのような体験格差が起こっているのか、調査を進めていきます。
さらに、実際に経済的に困窮していたり不登校になっていたりする子どもたちへ、様々な体験を届ける「体験創出プログラム」を実施していきます。
2022年のゴールデンウィークには、パイロット版として「旅する学校in大地の芸術祭」を開催しました。
「大地の芸術祭」は、新潟県越後妻有で20年以上続く世界最大級の野外アートイベントです。200を越える現代アート作品や、日本の原風景ともいえる「里山」や国内有数の「豪雪」などの豊かな自然、生き生きと暮らすおじいちゃんおばあちゃん達と彼らが守り続ける昔ながらの営み・文化が混ざり合う地域に足を運び、その中でアート思考にふれたり、主体性を発揮する体験をしたり、ロールモデルと出会ったりする、そんな旅を子どもたちに届けます。
子どもたちが現地に赴いたときに何がベストな体験になるのか、旅行プランやワークショップの設計を考えたり、そのプログラムを通して子どもたちにどういった変化が起こったのか効果検証を行うべく、研究者の方にもチームに入っていただき、アンケート設計なども進めています。
今回の「旅する学校in大地の芸術祭」では、経済困窮や不登校等の支援を行う認定NPO法人キッズドアが支援している子どもたちと一緒に越後妻有を訪れました。
一方で、子どもたちが抱える問題は、今回対象にしている経済的困窮だけではもちろんなく、地域格差や不登校・中退の問題を抱える子もいれば、より良い教育を受けることができればもっと成長できる子もいます。将来的には、そういったさまざまな子どもの体験格差を対象に、いろいろな団体と連携しながら、子どもたちが多様な体験を得られるようにしていきたいと考えています。
ただ、僕たちだけでは必要な体験を届けることのできる人数に限りがあるとも考えています。
そこで、調査・研究と「体験創出プログラム」から得られた知見をもとに、子どもの体験格差の調査・研究を深めて世の中に発信していくことで、より多くのステークホルダーを巻き込んでいくことが重要になります。最終的には、政策提言のような形で、現状まだまだ体験活動が少ない学校教育の現場や子どもの支援団体などの体験活動に国がもっとお金をつけたり、政策の方向性を変えたりする状態をつくることを目指しています。
個人の意思に基づく社会課題解決の加速化をどう実現するか
このプロジェクトは、今年は一般財団法人社会変革推進財団(https://www.siif.or.jp/)の休眠預金活用事業助成金を受けて実施していますが、プロジェクトの拡大や政策提言の実現のためには、このプロジェクトを持続可能なかたちで運営していく必要があります。
僕たちはそれを、寄付を継続的に集める事業モデルで実現したいと考えています。
子どもの体験格差というまだ世の中に知られていないイシューについて、リディラバが情報を整理して世の中に発信することで、このイシューを知り、関心を持ってくれた方たちに「寄付」という形で継続的に関わってもらい、このプロジェクトの持続可能性を高めていく、という事業モデルです。
この事業単体で収益化を行うのではなく、寄付を集めるモデルを選んだのには、リディラバが「共助」の領域を拡大していく必要性を感じている、という理由があります。
社会課題の早期解決のためには、社会課題市場、すなわち社会課題を解決する取り組みに、より多くのお金や人、関心といった資本を集めてくる必要があります。
お金の流れには、例えば「市場での交換(自助)」や「行政(公助)」があり、「自助」の場合は、何か困ったことがあったら必要なものを持っている人にお金を払い、必要なものを買います。
一方で、必ずしもみんなが必要なものを買えるだけのお金を持っているわけではないし、そもそも解決するために必要なものを売っていないこともあります。
そのような、自分では市場での交換を行うことができない人たちに対してお金を配る仕組みが「公助」であり、強制的に税金として国民から原資を徴収し、それを再分配します。
しかし、ここにも問題があります。税収が減少してきている中で、行政による再分配だけでは課題が解決できなくなってきていることに加え、そもそも行政自体が絶対に正しい意思決定をできるわけでもない、というのが現状です。
その自助と公助の中間に、個人の意思で課題解決のためにお金を投じる「寄付(共助)」の領域をもっと増やしていくことが必要だと考えています。
リディラバのこれまでの事業を例にとって言えば、誰かがスタディツアーに参加したり、記事を購読することにより、ツアーで訪れる現場や取材先といったソーシャルセクターに、その現場の活動だけでは生まれ得なかった資金が流入する、すなわち、社会課題解決のための収入源の複線化を実現することができます。
個人が社会課題に関心を持つことによって、自助・公助では実現できなかった社会課題解決の現場への資金の流れを作り出すことができ、それによって社会課題解決をより前進させていくことができるようになるんです。
このプロジェクトで寄付を継続的に集めていくことは、このような「個人の意思に基づく社会課題解決の加速化」の実現に向けた第一歩になると考えています。
調査・研究によってイシューの実態を把握し、それを寄付に繋げるためのノウハウを蓄積し、さらにそれを実現できる体制を整えることで、他のイシューに取り組んでいる団体に対しても寄付獲得と事業の持続可能性の向上のために必要なノウハウを提供していきたいと考えています。
純粋な自分の興味関心を社会課題の解決にどう役立てていくか、という問いの先にこの事業がある
今、この事業に携わっていて、好きなことを仕事にできているな、と感じています。
僕は純粋に旅とアートが好きで、全国各地に広がる芸術祭もプライベートで何回も通うくらい好きです。ただ、ここでいう「好きなことを仕事にする」というのは、なんでもいいから旅行をつくる、とか、芸術祭を運営する、とか、そういうこととはちょっと違っていて、自分の興味関心を社会課題の解決にどう役立てていくか、という問いの先にこの事業があると感じます。
ただ単に楽しい旅行を提供するだけでなく、社会課題解決のために意義のある旅行をつくろうとしている、というのが自分にとって大きなモチベーションになっています。
社会的に意義のあるプロジェクトを追求することで、自分の思想・哲学・人間性をダイレクトに事業にしていっている感覚もあります。
それがゆえに、リディラバにいると自分の人間性や思想を問われるので、リディラバに転職してきてからの2年間で、自分の社会に対する向き合い方、関わり方の浅さに直面し、人間的な至らなさにかなり凹みました(笑)
そういった意味で特殊な大変さがありますが、だからこそ、この仕事を通じて出会える人たちは、仕事ができるということだけでなく人間性も尊敬できる人が多い。自分より明らかにすごい人たちと一緒に仕事ができて、それを通じて自分自身の成長の機会が得られることもまた、モチベーションの源泉です。
地域にとって本当に必要で、リディラバじゃないとできないことは何なのか
もちろん、僕の「芸術祭が好き」という想いだけでこの事業がはじまったわけではありません。
僕自身、この事業以外にも、十日町市役所や大地の芸術祭を運営するNPO法人越後妻有里山協働機構、市内のローカルベンチャーと一緒に、越後妻有でのプロジェクトを5,6個実施してきました。そのため、越後妻有に足を運ぶ機会も多く、現地の方たちと話す機会も非常に多い2年間でした。
その中で、この地域にとって今本当に必要なことで、リディラバじゃないとできないことは何なのかをずっと考えてきました。
少子高齢化・人口減少の進展に悩む日本の地方部において求められる取組はたくさんありますが、その中で本当にリディラバじゃないとできないことをやらないと、「何でそれやるんだっけ」とか、「それはもう自分たちでやろうと思っているから」と、周りの人も協力してくれません。
その、「リディラバじゃないとできないことは何か」に対する自分なりの結論が、「お金と人を越後妻有地域に持ってくること」でした。逆に言えば、それさえできれば、地域の中の面白い人たちや芸術祭というコンテンツによって、確実に社会にとって良い変化を生むことができる。
リディラバとして、その地域に縁もゆかりもなかった人たちが実際に越後妻有に足を運ぶ仕組みと、それを支えるお金の仕組みを作ろうと考えました。
では、誰を越後妻有に連れていくのか。
リディラバとして多くの社会課題を見ている中で、様々な問題の根幹に子どもの時の機会不平等があると感じる部分が大きく、子どもの体験格差をなくしていきたいという想いがありました。その体験格差を解消する場所として、資源の豊富な越後妻有は最適といえます。
体験格差を抱える子どもたちを越後妻有に連れて行きたい、そう考えたのがこのプロジェクトの始まりです。
越後妻有地域との強い繋がり、子どもの体験格差というイシューに関する知識、これまで積み重ねてきた社会課題についての調査・研究のノウハウ、リディラバがこれまで培ってきたさまざまな要素が集まらないと、このプロジェクトは生まれなかったと思います。
さらに、僕は公務員出身ですが、チームにはさまざまなバックボーンを持ったビジネスセクター出身の人たちが多くいます。その人たちと話す中で、例えば事業収支の考え方や、売り上げを伸ばすために考えないといけないことなど、ビジネスについての学びの機会も多くありました。
リディラバが持つ幅広いアセットや、一緒に働くメンバーの存在があるからこそ、今こうして自分の興味関心を社会課題の解決に繋げるプロジェクトを実現することができていると感じています。
このゴールデンウィーク中には、第1回目の体験創出プログラムを実施しました。本プロジェクトに関する情報発信を行うメールマガジンも開設しています。(メールマガジンの登録はこちらから!)
今後も、子どもたちに年4回プログラムを提供できるよう、アート・食・自然などの地域資源を活かしたプログラムのブラッシュアップや調査・研究、寄付制度の実装を行っていき、困難な状況にある子どもたちが多様な経験を得られる仕組みづくりを進めていきます。
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