北海道での仕事
めったに行くことのない北海道へ行ってきた。
機械の仕事で、溶接の助っ人だ。
製菓の勉強をしたり、店を持とうと思うようになるずっと前、僕は美術鋳物の技術者だった。だから溶接は言ってみれば慣れ親しんだ母国語のようなもの。
美術鋳物の現場では、その響きの通り、いわゆる銅像だとか彫刻、工芸的な花器やオブジェを制作していた。
鋳物で大型のモノを製造するのはリスクやコストを伴うので、大体は分割して鋳造(金属を溶かして型に流す)する。そして出来上がったパーツを溶接して組み上げる、というのが一般的な工程だ。溶接に自信があるかどうかで、分割方法が変わってくるので溶接技術の研鑽は不可欠だった。扱っていたのはブロンズや真鍮といった銅系の素材だ。
食品機械は基本的にステンレスが使われている。ステンレスという素材はブロンズや真鍮と比較して安定した金属(酸化、腐食しない。また、液化した時に蒸散する成分がほとんどない。)であることが理由だと思うが、溶接が難しくない。基本的に溶接機も鉄系金属用に作られているし、溶接棒も種類が豊富だ。
※もちろん、対象物のサイズや形状によって難易度が跳ね上がるケースもある。
現在の日頃の修理でも溶接する機会がそれなりの頻度であるので、助っ人が務まるであろう、ということで北海道まで行った次第。
去年までの僕だったら行ったかどうか分からない。
というのも、ここに色々書くようになる前は、どちらかというと九州や四国など、西に意識が向いていたからだ。ただ、noteにバイクのことを書くと、オススメに北海道関連の記事がもれなく挙がって来るようで、僕のnoteのトップページには北海道にまつわるものが沢山表示されるようになった。(笑)
はじめは「そうかそうか。」程度に思っていたのが、色んな人の北海道の記録を読む内に「チャンスがあったら行くぞ。」くらいの気持ちになっていった。天の邪鬼なようでありつつも拍子抜けするほど単純な精神を持っている自分….
ただ、「チャンスがあったら…」とは言っても、そんな機会はなかなか来ないだろうな。と、思っていたらそれはすぐにやって来た。
お世話になっている会社の社長に「助っ人に来ないか?」と誘われたのだ。
渡りに舟、とはこの事だ。
打診から2週間後、北海道へ出発。
一週間の滞在のうち、雨が降ったのは初日だけ。後は穏やかに晴れる日が続いた。朝の気温は日に日に低くなって行くように感じられたが、昼間は太陽が暖かく、何処かに出掛けたら気持ちよさそうな天気だった。
仕事が終わる時間には外は暗くなってしまうので、北海道らしい自然溢れる景色を見る時間はなかった。それは残念だったが、朝、現場に行くまでの札幌市内の道は広くまっすぐ碁盤目状で、そういった「らしさ」は感じることができた。
他には植物。白樺やポプラ、その他の名前が分からないような植物が、やっぱり千葉とはまったく違う。街中でも見られるちょっとした植物が興味深かった。
できれば今回の滞在中に「遊木民」という木彫品店に行きたかったけれど、それは叶わなかった。次に北海道を訪れるまで、楽しみにしておく。
滞在したサンプラザは便利な場所で部屋も標準的で良かった。コインランドリーがホテル用の機械ではなく家庭用を課金仕様にしてあるタイプだったので(特に珍しい事ではない)、洗濯に時間がかかるのが、ほんのちょっとだけ不満だった。目の前の交差店に面した建物の2階にバーがあって、その店のウィンドウにZIMAのネオンが見えた。若い頃よく飲んだので懐かしさを感じた。ホテルの付近には他にも良さそうなお店があったので、翌日仕事がなければとても楽しいと思う。
僕の滞在中にホテルの駐車場に何台かのバイクが入れ替わりやって来た。
早朝は関東の感覚だと初冬くらいの気温に下がるが、日中は18℃くらいまで上がる。路面が凍結する心配は無いし、汗だくになることもない。ちゃんとしたジャケットがあれば快適に走れるだろう。少し山を登れば紅葉が見られそうだ。ツーリングのシーズンとして一般的には時期外れになった、この季節の北海道を好むライダーが居るのも分かる気がする。僕も次に来る時にはバイクか自転車か、どちらでも良いけどタイヤが2つの乗り物で来たいなと思った。