見出し画像

上海よ、さらば

上海の食品工場へ行ってきた。
上海浦東空港からタクシーを飛ばして1時間半ほどかかる金山区という地域にある工場だ。成長著しい会社で新工場を建築し、日本製の機械を導入している。中国の食品業界に詳しくないので、ごく限られた物の見方しかできないが、近年は日本製の機械を購入する中国人経営者が増えているような気がする。
以前は日本製の機械をコピーしたものがよく作られたようだけど、そういうものは汎用性の高い機械(ミキサーとかカット機、オーブン、コンベア類)に限られてきているようだ。同行の中国の人曰く、中国国内のマーケットが大きいので、汎用性の高い機械であれば一度に100台作って日本製の1/10の値段で売ることができるらしい。日本では受注生産が基本となる。
ただ専門性が高く、かつ大量に捌けない機械をコピーするのはやっぱり割に合わないようで、少々特殊な加工を専門とする機械は日本製のものが並んでいた。
仕事の話はここまで。



上海はとにかく乗り物の電化が著しかった。乗ったタクシーはほとんど電動車だったし見かける大量のスクーターは全て電動だった。これは環境面に配慮しての事なのか、他の思惑があっての事なのかよくわからない。

ホテルの駐車場にあるのはエンジン車

環境に配慮するという理由であれば、ついでに全ての上海人に「煙草を辞めろ」と言いたい。とにもかくにも皆、煙草を吸う。大量に。日本に着いて感じる匂いが味噌、醤油。ハワイならココナツ。それが上海だと煙草の匂いだ。
この時期の上海は雨が少ないせいもあると思うが空気が霞んでいた。この霞の原因の1/3くらいは煙草の煙じゃないのか?という気がした。そのくらい空港でもタクシーでもホテルでも食堂でも路上でも、ありとあらゆるところで煙草の煙と匂いが漂っていた。

乗り物の電動化に関しては環境のためというよりは、世界のトップランナーになって中国の基幹産業にしたいという思惑が強いのだろう。その実験と実践が日々行われている感じがした。日本では中国の電気自動車メーカーが苦戦していると吹聴して喜んでいる節があるけれど、それは全然的外れだと感じた。

中国のEV業界は現状の技術で行き着くところまで行ってしまって、今は価格競争になっている。まだ何も起こっていない日本のEVよりも何千歩も先に行ってしまっている。日本での普及も中国側が本気になって充電拠点を日本国内に整備するとか日本の車の使い方に会わせたサービスや機種を考案する等、してきたら状況は全く変わるだろうな、と感じた。
車両火災などのトラブルも言われてはいるが、発展途上にあるのだから仕方がない。それをいちいちペコペコ謝らなくても良いのが中国のずるいところというか、優位性なのかもしれない。

電動自動車は内燃機関に比べれば構造が簡単なはずで、今後ますます車の家電化が進んでいくと思う。国産メーカーは何とかしてプレミアムな雰囲気を演出して価格を上げたいようだけど、世界はその逆に進んでいくんじゃないかな。先進国のメーカーはかつての家電でやらかした悪癖をまた出してしまっているように見える。

炊飯器は米を炊ければ良いし、音楽プレーヤーは音楽を聴ければ良い。冷蔵庫は良く冷えて暮らしを邪魔しないシンプルなものが良い。変な照明やギラついたメッキの飾りなんか要らない。ほぼ単機能で十分なんだ。走る、曲がる、止まるができてエアコン付き。スピーカー付きでナビ・オーディオなし。安全装置はフル装備。そこが原点じゃないかな。スマホがあるんだからスマホとかぶる機能が車に備わっている必要がない。外観も普遍的で癖の無いものが良い。数年で古臭く見えるような物は要らない。

自動車メーカーはもう一度、自分達の作るものにたいして普通の人々がどれくらいの価値を見出だしてくれているのかを良く考えないといけないと思う。正直なところ、若者の車離れに象徴されるように『車』というものに300~500万円の価値を見いだしている人は多くない。その金額を払う能力が十分にある人にとっては、さして気に留める事でもないかもしれないが、これから家族を設け、家を持ちたいと思う若者には大きすぎる荷物だろうと思う。僕は若くないが同じように負担に感じる。

そして上海で感じたのは充分な富裕層はEVには乗らない。彼らにはフェラーリやランボルギーニがある。まあ下駄がわりのEVを所有する事があるかもしれないけれど。

だから日本車が思い描くプレミアムなEVというのはプレミアムな原付と同じビジョン。空しい虚像でしかないかな?という気がする。


と、日本の乗り物に関して考えさせられた上海だった。

今回想定外だったのはインフルエンザにかかったこと。滞在4日目に完全に寝込んでしまった。『永遠の嘘をついてくれ』にあるように、上海の裏町で病んでいる、という状況がこんなに不安なものかと噛み締めていた。

それでもビールや食べ物は美味しかったし、出会った人達はまあ親切だった。英語も少しなら通じるから助かった。

今はなんとか復活して、日本に帰ってきた。
あー、帰ってこられてよかった。

サンキュー、上海