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12年ぶりに先輩に会った話
流石にこの歳になると、身の回りの人が鬼籍に入る。天国に旅立つ機会もそれなりに経験して来た。
その中には「友人」と呼べる人も居る。
僕等が19歳でRIDDLEというバンドを始めた時は、結構埼玉のバンドシーンは盛り上がっていたように思う。
物凄い個性を持った人達に囲まれながら過ごす狂乱の日々はそれはそれは刺激的だった。
その中でもやっぱり「TRIBAL CHAIR」の名前は大きかった。
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県外に僕等がライブしに行った時に
「埼玉っつったらTRIBAL CHAIRだよね?知ってる?」
「あ!先輩です!」
「マジで?!」
こんな会話から始まった縁がいくつもあった。
右も左も解らなかった僕達を本当の意味で「フックアップ」してくれた直属の先輩と呼んでいいと思う。
桑野智史はTRIBAL CHAIRのベーシストだった。
いわゆる「先輩風」みたいなモノとは無縁の、いつも元気で明るくて、後輩に優しい人だった。
僕達も自然と懐いて、サトシさん。ではなく「サトシくん」「サトちゃん」と呼んでいた。
サトシくんは 2006年にTRIBAL CHAIRを脱退した。
大宮ハーツでのそのライブにはRIDDLEも出演していた。
若かった僕は終演後にサトちゃんがバンドを辞めてしまう悲しみが響いて、誰も居ない場所を探して1人泣いた。
打ち上げでサトシ君を囲んだLAST ALLIANCEや discordのメンバーが本当に寂しそうな笑顔で居たのを覚えてる。
僕も同じくらい寂しいと感じていたけど、変に気後れしてその輪を遠くから眺めていた。凄い数のツアーを一緒に回った人達だけにしか許されないその空気を感じながら
「いつか僕もこんな空気の仲間が出来るんだろうか」なんて思っていた。
サトシ君脱退後のTRIBAL CHAIRとは本当に良くツアーを廻った。 ほとんどの地方に一緒に行ったんじゃないかな?てくらいの時間を共に過ごした。
サトシ君とは疎遠になってしまうのかな?と思っていたけど、ライブで新宿行った時に良く歌舞伎町でバッタリ会った笑
照れながら「新しい道で頑張ってんだよ!!」と言っていたけど
真っ昼間から歌舞伎町を彷徨いているその道とはいったい何なんだ…と思っていた。
その後サトシ君はdiscordのベーシストになった。
TRIBAL CHAIRの最後のライブで涙ながらに「コレが俺の人生最後のバンドです」って言ってて、僕もそれを観て泣いたのになんだよ!笑 とは思ったけど。
嬉しかった。またサトちゃんと対バン出来るかもだ!!って。
2010年ごろのある日。北浦和KYARAというライブハウスでボーーっと過ごしていたら突然サトちゃんが現れた。
「ちょっと近くに寄ったからさ!!タカヒロいるなんてラッキーだな!!」なんて言いながら二人で久々にゆっくり話した。
TRIBAL CHAIRのアルバムが出たタイミングだったので一緒に聴こう!と言って二人で聴いた。
サトちゃんは「あー!こっちの方向性行っちゃったのかよ!」とか文句タラタラ言ってた笑
でも、ある曲の時に
「あ!コレは俺が居た時代からあった曲だよ!やっぱりTRIBAL CHAIRはこういう曲が良いと思うんだよね…」
と嬉しそうに言ってた。
「良い曲だなあ…」て。
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それから暫くして、サトシ君が体調を崩して実家のある香川県に帰っているという話を人伝に聞いた。
心配だったけど、病気って言葉と余りにもイメージが遠いサトシ君の笑顔を想像して楽天的に考えていた。
2011年の僕の誕生日にはメールをくれた。
崇尋誕生日おめでとう! って
そこから少しやり取りをした。
「来年四国来るじゃん!絶対行くよ!」って言ってくれて、僕も凄く逢えるのを楽しみにしていた。
2012年1月16日 僕達が四国でライブをするその前日にサトシ君は旅立った。
とてもじゃないけど実感が湧かなかったし、突然またそこのドアを開けて「ちょっと近くに寄ったからさ!」なんて言ってくれるんじゃないかと思っていた。
正直その実感は12年が経った今でも湧いていない。
僕は最近 仕事の出張で関西のある街に滞在していた。
「明日は休みだなあ〜何しようかな〜」なんて思って地図を眺めていたら、サトシ君の実家のある街がそんなに遠く無い事に気がついた。
車で二時間程度。
「何をするか迷った時は ずっと忘れないであろう事をするべきタイミング」
ってゆうフワフワしたモットーを持つ僕は、直ぐに車に乗り込んで香川県を目指した。
サトシ君に逢いに行こう!!
先輩に連絡してサトシ君のご実家の住所と電話番号を聞き、瀬戸大橋を渡った。
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ワクワクもしていたけど、不安もあった。
サトシ君のご家族が全く電話に出ない笑
まあこんなご時世。知らない番号は出ないよなー。と思いながらも、着いたらピンポンすればいいか!くらいに思っていた。
夕方頃 目的地に着いた。
ここかな?という家をピンポンするも反応が無い。留守のようだ。
せめてお墓参りを…と思ったがこの時点で僕の知ってる情報は
実家から少し歩いた所にお墓がある。
それだけなのだ。霊園とかでは無いのでナビとかには出ない。
困ったけど…周りを歩いている人に手掛かりを聞くしか無い…と周囲を歩き回るも
人に遭わない。
家は沢山あるのに人が全く居ないのだ。
詰んだっぽいな。
そうこうしている間に辺りは段々と暗くなっていった。
街灯すらないこの町でコレはヤバい…と危機を感じた僕は最後の手段で
航空写真を凝視した。
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そうするとご実家の近くに
確かに 確かに何となくお墓っぽいものがあるような気がする。
その方向へ歩いて行くと 薄闇の田園風景の中にうっすらと小高い何かが見える。
ガチでこんな感じ。
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アレでは…??
僕は意を決して暗闇の中を歩き出した。
田んぼの中の道なので落ちたりしないように細心の注意を払った。
グシャリ
落ちた。
クルブシまで泥に浸かった感覚を確かに感じながら僕はもう逆ギレに近い精神で
小高い何かに向かって真っ直ぐ歩き始めた。
もう道とか関係ない。真っ直ぐあそこを目指す。
刈り入れがとうに終わった田んぼは草が生え放題の泥田で、歩くたびに湿った音を立てた。
僕はもう必死だった、靴がどうとかズボンがどうとかではない。
真っ暗になったらもはやどうやって道まで戻るかも解らないのだ。
小高い丘にやっと着いた。
これは…墓地だ!!
絶対に入口ではない急斜面を這い上がる。
2〜30のお墓が建ち並ぶそこは確実に墓地だった。
「やったー!!」
思わず声を上げた。
この世界で墓地を見つけてやったー!って叫んだのは有史始まって以来僕だけなのではないだろうか。
スマホのライトで照らしながらサトシ君の苗字を探した。
ここで新たな問題が発生した。
そこにあるお墓は殆どがサトシ君の苗字だったのだ。
「サトシ君マジでふざけんなよ」
と天国にいる先輩に恨み言を放ってしまった。
でももうここまで来たら引き返せない。
一つ一つのお墓を照らしながら、サトシ君の名前を探した。
10分ほど探して、ようやく「智史」の名前を見つけた。隣に「平成24年1月16日」の文字。
めっちゃ泣いた。
何で泣いてるのか解らなかった。
何で靴グチャグチャにしてまでこんな目に遭ってるんだろうって哀しみなのか、やっと逢えたって喜びなのか、全く解らない感情に包まれた。
「ザドジぐ〜〜ん ずっどこれなぐでごめんなざい〜 ダガヒロだよお〜」
情けない声を出しながら、生前サトシ君が吸っていたタバコを取り出し お供えした。
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ようやく逢えたサトシ君との時間は一瞬だった。
マジで寒すぎたのだ。
死を感じるレベルだった。
涙も凍りそうなレベル
「俺まだ長生きしたいがら…まだぐるがらね〜」と言いながらお墓を後にしようとしたら
その時だけ雲間が晴れて 月が煌々と照った。
僕が這い上がった急斜面の逆方向にある 本来ここに来る人が使うであろう道が照らされた。
何となく お墓を振り返って「ありがと」と言ってその道を戻った。
サトシ君や
君が可愛がってくれたRIDDLEってバンドはあれから12年経っても元気にまだやってるし、その当時のメンバーも皆元気だよ。家庭を持ったりしてる奴もいる。
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多分僕がそっちに行くのは結構というか相当先になると思うんだけど、寂しがらないでね。
忘れてないからね!!
それとあとひとつ
コレを読んでくれた方に
アポ無しでお墓参りはもう絶対にやめた方がいいよ
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