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ポケカで確率~そのつりざお、使って大丈夫?~【ポケカアドカレ2日目】
概要
欲しいカードが引ける確率は欲しいカードの割合じゃないかもよーって話。
はじめに
おはようございます。こんにちは。こんばんは。ダイチです。
今回はポケカのゲームプレイ中に発生する確率の話をします。
欲しいカードが引ける確率とは何かという話です。
ゲーム中に頭の中で計算できるぐらいの規模のものということで、終盤のドラゴの山札でギリ起こり得そうなものを持ってきました。
これを理解したからといってポケカの勝率が劇的に変わるわけではないので気楽に読んでいただければ幸いです。
また、本稿はポケモンカード Advent Calendar 2024の2日目の記事です。
他の記事も興味があればぜひご覧ください。
それでは、本編へどうぞ。
問題
問題です。
あなたはレジドラゴを使っています。このターンレジドラゴで攻撃するにはあと炎エネルギーが1枚必要です。炎エネルギーがトラッシュに1枚、山札に2枚。残りの山札は5枚です。手札にはすごいつりざおが1枚。
まだ使っていないのは「さかてにとる」と「みどりのまい」。
すごいつりざおをここで使う場合はかがやくリザードンを戻さないと後続のアタッカーがいません。
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次の行動の中で、レジドラゴが攻撃できる確率が最も高くなるのはどれでしょうか。
すごいつりざおで炎エネルギーとかがやくリザードンをデッキに戻す
すごいつりざおで炎エネルギーと草エネルギーとかがやくリザードンをデッキに戻す
そのまま「さかてにとる」
そのままだと当たりが$${\frac{2}{5}}$$だから山の下2枚が炎エネの時以外は殴れるなあ。
つりざおで炎エネを戻すと$${\frac{3}{7}}$$ (=43%)だから$${\frac{2}{5}}$$ (=40%)よりも炎エネの割合増えるよなあ。
草エネも戻せば「みどりのまい」で追加1ドローできるなあ。
時間のある方は少し立ち止まって考えてみてください。
わかった方は同じ答えになる他の状況が思いつくでしょうか。
かんがえて
みてね
答え
答えは3のそのまま「さかてにとる」です。
だろうね。と思ったあなたは確率のセンスがあります。
実際に計算してみましょう。
その前に、確率になじみのない方もいると思うので本文中に登場する組み合わせの記号の説明だけ先にします。
ご存知の方、ご興味のない方は飛ばしていただいて構いません。
組み合わせとは数A(今もそうなのかな)で習う内容で、$${{}_{n} C_{k}}$$のように書いてn個からk個選ぶパターン数のことを指します。
具体的に書き下すとこんな感じです。
$${{}_{n} C_{k} = \frac{n!}{k!(n-k)!}}$$
この!は階乗の記号で、
$${n! = n (n-1) (n-2) \cdots 3\times2\times1 }$$
のように1までかけあわせる操作を表します。
これ以外の記号は登場しないので、確率計算とか知らんよという方もこれだけ知っておけば安心して読み進められると思います。
では、やっていきます。
まずは、そのまま「さかてにとる」場合。
「少なくとも1枚引ける確率」の計算には余事象を使います。
この説明は省くので詳しくは以前書いたnoteをご覧ください。
$${炎エネが引けないパターン \\= {}_{炎エネ以外の枚数} C_{引く枚数} \\ = {}_3 C_3 \\ = 1}$$
$${全パターン \\= {}_{デッキ枚数} C_{引く枚数} \\ = {}_5 C_3 \\ = 10}$$
$${炎エネが引ける確率\\=1-\frac{1}{10}\\=\frac{9}{10}}$$
よって90%です。
では次に炎エネとかがリザを戻す場合。
$${炎エネが引けないパターン \\= {}_{炎エネ以外の枚数} C_{引く枚数} \\ = {}_4 C_3 \\ = 4}$$
$${全パターン \\= {}_{デッキ枚数} C_{引く枚数} \\ = {}_7 C_3 \\ = 35}$$
$${炎エネが引ける確率\\=1-\frac{4}{35}\\=\frac{31}{35}}$$
よって約88.5%です。
確かにつりざおを使った場合の方が確率が下がっています。
草エネも同時に戻した場合については戻さなかった場合と同じく88.5%です。
なぜそうなるかという話は今回の趣旨から少しずれるので割愛します。一応おまけに書いておくので気になる方はご覧ください。
ということでそのまま「さかてにとる」のが最もいい選択ということになります。
解説
さて、ここからが本題です。
この場合はすごいつりざおを使わない方がいいんだ。ふーん。
という結論で終わってしまっては「そういうこともある」という特殊な1ケースを知っただけにすぎません。
つりざおを使う前と後で炎エネの割合は40%から43%に増えています。なのに炎エネを引ける確率は下がっています。それはなぜか。そしてそれはどういうときに起きるのか。
ここまで考えてやっと今後に活かせるわけです。
ではなぜか。
山札を引くことを想像してください。上から1枚引いて、それが炎エネルギーではなかったとします。この時次に引く山札はどうなっているでしょうか。当然最初とは違いますね。山札の総数が1枚減って、炎エネじゃないカードが1枚減っています。つまり炎エネの割合は高くなり、次に炎エネを引ける確率は高くなります。引けば引くほどこの確率は高くなり、最終的に1(絶対引ける)になります。例えば山札が5枚で5枚引いたら全て引ききれますからね。
引く枚数が多い時はこの変化が大きくなり、最終的な引ける確率は元の割合よりもはるかに高くなります。
また、この山札の変化による確率の変化という点で考えると、デッキ枚数が多い時は1枚引くことによる変化は小さくなります。極端な例ですが、デッキが1000枚あったとしてそれが999枚になったところで大した変化ではないですよね。
引くことによる山札の内容の変化が大きい時、引ける確率は最初の割合と離れていくわけです。
このことを今回の計算を振り返りながら別視点で考えてみましょう。
計算の中で全パターンと炎エネを引けないパターンを考えました。
つりざおを使って山札が増えたことで全パターンは10から35になり、3.5倍増えています。炎エネを引けないパターンは1から4になり4倍に増えています。
炎エネを引けない確率は$${\frac{炎エネを引けないパターン}{全パターン}}$$なのでそれぞれ何倍に増えたかというのが重要なわけです。
今回の例では山札の枚数が増えることによる炎エネを引けないパターンの増加の影響が大きいため確率が下がってしまっているわけです。
例えば引く枚数が1枚の場合を考えてみます。
1枚引いたときにそれが炎エネルギーである確率というのは山札の炎エネルギーの割合のことなので答えは簡単ですが、あえて3枚の時と同じようにパターンで考えてみます。
この時の全パターンは$${{}_{デッキ枚数} C_{引く枚数}}$$なので5から7になり1.4倍に増えます。炎エネを引けないパターンも同じように考えると3から4になり約1.3倍に増えています。
山札の増加による炎エネを引けないパターンの増加が全パターンの増加よりも小さいため結果的に炎エネが引きやすくなっています。
つまり、残っている特性が「さかてにとる」ではなく「みどりのまい」のみで手札に草エネルギーがあるという状況ならつりざおを使うべきということになります。
このパターンの増加というのはデッキ枚数、引く枚数の両方に依存します。
この議論を一般化すると厳密な傾向がわかるのですが、手計算するのはなかなかしんどいのでやり方だけ書いておきます。
デッキ枚数がn枚、炎エネがl枚、引く枚数がk枚だとします。
つりざおを使って変化した山札を考えると、デッキ枚数がn+2枚、炎エネがl+1枚、引く枚数がk枚です。
この時の炎エネを引ける確率を組み合わせの記号から具体的に計算して比較すると不等式になります。
例えば本稿で扱ったk=3の場合だと差は2次不等式になるのでどっちの方が確率が高いかというのは手計算で解けることにはなります。
実際に計算してみると例えば
(n,l,k) = (7,3,3),(9,4,3)
などの時にも同じことが発生します。
これが発生する状況は他にもたくさんありますが、共通しているのは、元の状況でほぼ引ける時に起きるということです。また、山札が多い時には欲しいカードの割合が半分ぐらいの時に発生します(おまけのおまけ参照)
結論
今までの話をまとめて終わります。
欲しいカードを引ける確率は引く枚数と山札の枚数に大きく依存する
「ほぼ引ける」みたいな状況では欲しいカードの割合が増えるとしても山札に余計なカードを追加しない方がいい
今回はつりざおでエネ以外のカードを戻す場合について扱いましたが、他にも似たような状況はいくつか考えられます。
例えば
欲しいカードを持ったノココッチが場にいる時、にげあしドローが先か他のドローが先か
次のターンにボスを引けば勝てる時、アクアリターンでネオラントが帰るべきか
など。
これらの状況でも考え方は同じで、もともと「ほぼ引ける」ならその確率を受け入れて素直に引いた方がいいことが多いです。
対戦中に計算はできないので、実際は「たぶんこっち」みたいな感じで決めると思うのですが、からくりを知っておくとその精度は少し上がるのではないかと思います。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
ではまた次回、「エレキジェネレータのヒット率(未定)」でお会いしましょう。ヒットする枚数の期待値は元の山札の雷エネの確率に依存するよという話(もし書くとしたら)
お疲れ様でした。
おまけ
ここからはおまけです。オーガポンの1ドローがどんな価値を持つかということについて以下の話をします。
草エネを戻しても確率が変わらないことの証明
オーガポンが複数場にいたらどうなるか
草エネを何枚戻すべきか
興味のある方はご覧ください。
わからないこと等あれば質問も受け付けますので遠慮なくどうぞ(こっから下の説明はだいぶ雑なので)
草エネを戻しても確率が変わらないことの証明
では本編で扱わなかったつりざおで草エネルギーを戻す場合について。
結論としては戻さない場合と同じなのですが、計算で確かめてみましょう。
もう本編で触れている内容なので少し簡略化して話します。
まず、草エネを引く確率を計算します。
$${全パターン\\={}_{8}C_{3}\\ = 56}$$
$${草エネを引かないパターン\\={}_{7}C_{3} \\= 35}$$
$${草エネを引く確率 \\= 1 - \frac{35}{56} \\= \frac{21}{56} }$$
$${草エネを引かない確率\\= \frac{35}{56} }$$
次に、炎エネを引かない確率を求めます。この時草エネを引いているかどうかで2つの場合に分かれます。この分岐を行うので全体は草エネを除いた7枚になります。
ケース1:草エネを引かない場合
この時は炎エネ以外の4枚から3枚引く組み合わせを考えればいいので、
$${全パターン\\={}_{7}C_{3} \\= 35}$$
$${炎エネも草エネも引かないパターン\\ = {}_{4}C_{3} \\= 4}$$
$${炎エネも草エネも引かない確率\\ = \frac{4}{35}}$$
ケース2:草エネルギーを引いた場合
この時は草エネ以外の2枚を引いた後追加で1枚引くので、また炎以外の4枚から3枚引く組み合わせを考えます。
$${全パターン\\={}_{7}C_{3} \\= 35}$$
$${炎エネを引かず草エネを引くパターン\\ = {}_{4}C_{3} \\= 4}$$
$${炎エネを引かず草エネを引く確率\\ = \frac{4}{35}}$$
最後に全体の炎エネルギーを引かない全体の確率を求めます。
$${ 炎エネを引かない確率 \\= 炎エネも草エネも引かない確率 \times 草エネを引かない確率 + 炎エネを引かず草エネを引く確率 \times 草エネを引く確率 \\ = \frac{4}{35} \times \frac{5}{8} + \frac{4}{35} \times \frac{3}{8} \\ = \frac{4}{35} }$$
よって炎エネを引ける確率は約88.5%となり草エネを戻さなかった場合と同じになります。
草エネが2枚ある場合
ではもう少しおまけでちょっとだけ違う状況を考えてみましょう。
山札に元から草エネルギーがあったとします。
山札7枚、草エネ1枚、炎エネ2枚、その他4枚。
この時炎エネを引けない確率は上で求めた$${\frac{4}{35} }$$です。
この山札に草エネを1枚足してみます。
この時炎エネを引けない確率はどうなるでしょうか。
ここから先の計算は少し複雑になるので草エネを1枚引く確率をP(草=1)のように表します。
まず、先ほどと同様に草エネを引く確率を求めます。
$${全パターン\\={}_{9}C_{3} \\= 84}$$
草エネ0枚の場合
$${草エネを引かないパターン\\={}_{7}C_{3} \\= 35}$$
$${P(草=0)\\=\frac{35}{84}}$$
草エネ1枚の場合
$${草エネ1枚の選び方\\={}_{2}C_{1}\\=2}$$
$${それ以外2枚の選び方\\={}_{7}C_{2}\\=21}$$
$${P(草=1)\\=\frac{42}{84}}$$
草エネ2枚の場合
$${草エネ2枚の選び方\\={}_{2}C_{2}\\=1}$$
$${それ以外1枚の選び方\\={}_{7}C_{1}\\=7}$$
$${P(草=2)\\=\frac{7}{84}}$$
次にそれぞれの場合で炎エネを引かない確率を考えます。
草エネ=0の場合、
炎エネ以外のカードは4枚なので
$${炎エネを引かないパターン\\ = {}_{4}C_{3} \\= 4}$$
$${P(炎なし|草=0)\\=\frac{4}{35}}$$
草エネ=1の場合、
最初の3枚の選び方は
$${草エネ1枚の選び方\\={}_{2}C_{1}\\=2}$$
$${それ以外2枚の選び方\\={}_{4}C_{2}\\=6}$$
みどりのまいで炎エネ以外を選ぶのは残り6枚中3枚を引く場合
よって
$${P(炎なし|草=1)\\=\frac{36}{252}\\=\frac{1}{7}}$$
草エネ=2の場合、
最初の3枚の選び方は
$${草エネ2枚の選び方\\={}_{2}C_{2}\\=1}$$
$${それ以外1枚の選び方\\={}_{4}C_{1}\\=4}$$
みどりのまいで炎エネ以外を選ぶのは残り6枚中3枚を引く場合
よって
$${P(炎なし|草=2)\\=\frac{12}{42}\\=\frac{2}{7}}$$
全体の確率を計算すると
$${P(炎なし)\\=P(炎なし|草=0)\times P(草=0) + P(炎なし|草=1)\times P(草=1) + P(炎なし|草=2)\times P(草=2) \\= \frac{4}{35} \times \frac{5}{12} + \frac{1}{7} \times \frac{1}{2} + \frac{2}{7} \times \frac{1}{12}\\=\frac{1}{7}}$$
よって炎エネを引ける確率は約85.6%となり、今度は草エネを増やしたことで確率が下がっています。
ではオーガポンが2体いたらどうなるでしょう。
、、、というのは計算が疲れたのでやりませんが、草エネを1枚戻した場合、戻さなかった場合と同じです。
一般的な場合については興味ある方はぜひ計算してみてください。
ドローに変換できる草エネは何枚あっても確率に影響しませんが、それを超えた枚数については少しずつ確率が下がっていきます。
結論
最後におまけの結論を述べて終わります。
みどりのまいで引ける枚数より多く山札に草エネがあると欲しいカードを引ける確率は下がる
なんてことはない結論ですね。以上。
おまけのおまけ
つりざおを使う前と後の確率をコンピュータに全パターン計算させてみました。
ここに3次元の図が載せられなかったので、確率が逆転するパターンを2次元に射影したものが下図になります。
山札の枚数によって全体のパターン数が変わるのでこれを見ても全ての傾向は分かりませんが、例えば一番左の図だと引く枚数が増えると点が増えているなとか、真ん中の図を見ると山札が多い時は元の割合が半分ぐらいの時にしか起きないなとかまあいくつかわかることはあります。
この辺の考察ももっとしっかりやると面白いかもしれません。
![](https://assets.st-note.com/img/1733121735-uLozWYTU7BMdCl2rqIAN8twc.png?width=1200)
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