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明るくない私は

吹雪く山頂を一人で目指していた。踏み跡のない白い道を見たら、吹雪いていても我慢ができなかった。強風により雪のない箇所もあれば、吹きだまりでは股下まで埋まる箇所もある。サラサラの雪の下の岩につまづきながら、誰もいない道を笑いながら進んだ。

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まつ毛に雪が付いているのが分かる。顔の周りの髪の毛は自分の呼気で凍り付いていて、自撮りでもしたら面白いんだろうけど、明るくない私は、一人では笑ってこの雪と遊びながら、だれとも可笑しさを共有したくなかった。せっかく一人で楽しんでいるのに、誰かの共感が必要なの?

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きみは明るくないね。
そう言われたときのことをまだ覚えている。心理的にプレッシャーを与えられたゲームの中でだったか、その前後の文脈はよく覚えていないけれど、上に立つ器じゃないよと言われた気がした。

明るくない性格は事実だし、それを指摘され傷つくほど繊細でもなかった。このままでは駄目だと受け止めたものの、明るいふりをするのも持続せず、私は依然として明るくないまま生きている。

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上へ行けば行くほど、指先が凍りつくのがわかった。長居しなければいい。顔にあたる風が痛いのにすら笑える。氷の粒があたっているのか、冷たさが痛覚に変わったのかも分からない。とっくに午後をまわった時間帯だ。誰も登ってきやしない。

おまえ、部下はやめておけよ。
そう言われた男は、とっくに部下に手を出していた。私は若くて愚かで、兎の格好をした女がお酌をする店でその男と一緒に酒を飲んだ。期待したほどセックスはよくなかった。これが、世界のピースをひとつ拾った気分なの?トマーシュ。

その男は昇進すると連絡が途絶えた。明るくない私は沈黙し、男と顔を合わせても微笑で応答した。吹雪はすぐに人の足跡を消してしまう。

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