見出し画像

木々に寄りかかり

森が好きなのは、木がたくさんあって落ちつくから。とくに大きな幹の木は、安らぎを感じる。視界に収まりきらない存在感に圧倒されつつ、触れてみたい、と寄りかかりたい、と思わせられる。それは母なるものへの郷愁かもしれない。

ぱきぱき、かさかさ、折れた小枝や落ちた葉を踏みながら森を歩いていると、あらゆる小動物が逃げ出していく。森のものを略奪しにきた野蛮な存在と警戒されるのは悲しいが、侵入者には違いない。違う生物を愛玩用に鑑賞用に採取したり飼育したりするのは人間だけだ。違う種同士が相容れないのは、自然界でも人間の社会でも同じこと。

倒れた大木の幹に腰かけて、鳥たちがざわめきながら飛びたつ音を聞き送り、今日はここで何をしようか思案する。小さなテーブルは既にあり、ここで一時過ごすのに足らないものなんてない。木々に囲まれて身を隠すように寝そべって、広い空を見上げている。葉という葉を落とし枝のみの裸の木々は、また芽吹こうとしている。どうやら私は春を歓迎していない。ずっと冬のままでいいのに、とそもそも知恵など授けられなくとも良かったのに、と伏してしまう。

美しい木々。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?