あなたはあの「異世界の迷宮」を越える超高難易度ダンジョンを知っていますか?
どうもこんにちは。山野弘樹です。
今日お伝えする内容は、『トルネコの大冒険3』の超絶縛りプレイについてです。
本来であればもう記事の内容にどんどん入っていきたいのですが、まずは話の前提を共有するために、いろいろな話をしてから本題に入りたいと思います。
(※本稿では、「ビデオゲーム」は「ゲーム」と略記することにします。)
1.『トルネコの大冒険』ってどういうゲーム?
そもそも『トルネコの大冒険』とはどういう作品なのでしょうか? これは「ローグライク」と呼ばれるジャンルに属するゲームの一つで、日本に「ローグライク」というジャンルを広めた先駆的な作品であると言われています。
(https://www.famitsu.com/news/202109/19234293.html )(←ファミ通さんの記事)
世界観は完全にドラゴンクエストのゲームです。
主人公は『ドラゴンクエストIV 導かれし者たち』に出てくるキャラクターの一人、トルネコ。敵はスライムとかドラゴン。こうした虚構世界は(ゲーム好きの方であれば!)なんとなく想像がつくものだと思います。(白銀ノエルさんと同様に、僕も4には相当思い入れがあります。)
問題は「ローグライクって何?」ということですよね。
「ローグライク」とは、文字通り「Rogue(ローグ)のような」ゲームを指すジャンル名です。1980年に、アメリカで「Rogue」というゲームが開発されたんですね。そして、(大変ありがたいことに)この「Rogue」というゲームのシステム(「ゲームメカニクス」)に関して解説をしてくださっている記事がありましたので、その内容をここにも記させていただきます。
2.「Rogue」の特徴
コバヤシマサキ様の記事(https://www.cobalog.com/entry/rogue )によりますと、「Rogue」の特徴は次のようにまとめられています。
(1)遊ぶたびに変化するダンジョン
(2)罠やモンスター、アイテムの自動配置
(3)冒険内容によるスコア制
(4)ターン制
(5)死んだら最初から
(1)遊ぶたびに変化するダンジョン
→これは、ダンジョンに挑戦するたびに、そのフロアの地形が変わるということです。「何部屋あるのか?」、「どんな形の部屋か?」、そういうのが『トルネコの大冒険』(以下、『トルネコ』)でも全部変わります。そして、その階層のどこかにある「階段」を下りる(または上る)と、次の階層に進むことができます。こうやって「全○○階」のダンジョンを突破していくのが「ローグライク」ゲームの基本です。
(2)罠やモンスター、アイテムの自動配置
→地形が変わるのみならず、「どこに重要なアイテムが落ちているか?」、「どこから危険な敵が湧いてくるのか?」、「どこに凶悪な罠が設置されているのか?」というのも全部変わります。つまり(1)と(2)を組み合わせることで、「毎回初見プレイ」のような新鮮さを味わうことができるのです。(※厳密には大抵のダンジョンに「パターン」が存在しますので、完全に初見プレイの感覚というわけにはいきませんが……。)
(3)冒険内容によるスコア制
→これも『トルネコ』にもある要素です。「何階まで到達できたか?」、「どれだけ経験値を獲得できたか?」という要素で点数が加算されていきます。
(4)ターン制
→これは「ローグライク」ゲームでは非常に重要な要素です。『トルネコ』でもそうですが、「自分が1ターン動くと、敵も1ターン動く」というルールが徹底されています。そして「ローグライク」ゲームは大抵の場合行動できる範囲がマス目上に展開されているので、さながら「チェス」や「将棋」のようなイメージで捉えることができます。
例えば、『トルネコ』の主人公は原則「1ターン」につき「一歩」しか進めません。ですが、道端に(たまたま)落ちているアイテムを使うと、例えば直線距離を一気に進むことができたり(「とびつきの杖」)、ランダムで別のフロアにワープすることができます(「ルーラ草」)。こうやって、たまたま拾えるアイテムを駆使しながら、敵の攻撃をかいくぐり、時に長考しながら「目的地」である「階段」を目指していく……というのが『トルネコ』の醍醐味です。(1)および(2)と組み合わせて考えると、「ローグライク」作品がどれだけ不確実性に支配されたパズルゲームであるかが理解できると思います。
(※また、詳しくはご紹介できないのですが、『トルネコの大冒険』にも「満腹度システム」というものがあります。これは10ターン歩くと1消費されてしまうもので、この数値が100から0になると、1ターン進行するごとに体力が1減るという現象が発生します。これを食い止めるためには、道端にたまたま落ちている「パン」を拾うことが必要になりますが、都合よく落ちているとは限りません。)
(5)死んだら最初から
→そして、これこそ「ローグライク」作品の「魂」とも言えるような要素かもしれませんね。『トルネコ』もそうですが、この手のゲームは死んだら最初からやり直しです。ストーリーモードの途中とかであれば、「アイテムが半分になる」とか「所持金が半分になる」とかで済みますが、高難易度ダンジョンに挑戦している際には、たった一回のミスで死亡してしまい、十何時間かけて挑戦したのにまた最初から……というのはよく見かける光景です。(例えば、「100階ダンジョン」に挑戦している際に、「61階」でやられてしまったからといって、また「61階」から挑戦できるわけではありません。また「1階」から再スタートです。またスライムベスたちに会えるね!)
まとめると、「Rogue」というゲームはこうしたゲームのルール(「ゲームメカニクス」)を初めて生み出した作品であり、こうしたルールに則って開発されたゲームを「ローグライク」というジャンル名でくくるようになったのです。
(なお、「ローグライク」って直訳すると「Rogueのような」ですから、「一体どのようなゲームをRogueに似たゲームとして当てはめられるのか?」という定義に関する問題が当然噴出します。これに関しましては、こちらの蛸助様の記事に詳しい話が載っておりますので、興味のある方はこちらをぜひご参照していただければ幸いです。「ベルリン解釈(Berlin Interpretation)」と呼ばれる有名な議論について学ぶことができます。)
蛸助様の記事→ http://blog.livedoor.jp/treckless/archives/23665024.html
RogueBasinのページ→ http://www.roguebasin.com/index.php?title=Berlin_Interpretation
3.『トルネコの大冒険3』における最高難易度ダンジョン
ここまで「ローグライク」作品の説明をしてきました。『トルネコの大冒険』とは、こうした「ローグライク」を日本に広めた先駆的な作品であり、そのシリーズの最新作(2002年に発売されたゲームですが……)が『トルネコの大冒険3』です。
そして、このゲームが恐ろしく難しいんです。
どれくらい難しいかに関しては、ちょっとこの記事では書ききれそうにないのですが、ただ読者の皆様に想像してほしいのは、「運要素が極めて強いパズルゲーなんだから、理不尽なギミックが大量に施されたダンジョンがあったら、さぞ難しいんだろうなぁ……」ということです。
そして、実際にこの『トルネコの大冒険3』を代表すると言っても過言ではない超高難易度ダンジョンがあります。それが「異世界の迷宮」です。
いくつか有名な攻略サイトを貼りますが、
「トルネコラーの宿」http://dqff.sakura.ne.jp/torneko-yado/
「トルネコの大冒険3 異世界攻略wiki」https://w.atwiki.jp/toruneko3/pages/178.html
特に「ドラゴンクエスト大辞典をつくろうぜ!!」さんにおいては次のような文章が書かれています。
「……この異世界の迷宮は、全般的に難しいと言われているトルネコ3の中でも、特に高い難易度を誇る。不思議の宝物庫・まぼろしの洞くつを筆頭に、エンディング後ダンジョンはいずれも難易度が高いが、異世界の迷宮が最難関と感じるプレイヤーが多いだろう。
それどころか、【風来のシレン】を含めた不思議のダンジョンシリーズ中でも史上最難関の「もっと不思議のダンジョン」と言われるほど。」
(https://wikiwiki.jp/dqdic3rd/%E3%80%90%E7%95%B0%E4%B8%96%E7%95%8C%E3%81%AE%E8%BF%B7%E5%AE%AE%E3%80%91 )
「何がそんなに難しいの?」と気になる方は、YouTubeで「てと」さんが出されている「異世界の迷宮」攻略動画が非常に参考になりますので、こちらを観ていただければ幸いです。逆に言うと、(攻略方法はいくつかあるとは思いますが、)ここでてとさんが実践されている攻略法を無視したら、基本的にはクリアは不可能であると言っても良いでしょう。
(ただし「ローグライク」である本作品は、「セオリー通り」の行動を続けたとしても、アイテム運や仲間運などによっていとも簡単に壊滅状態になってしまうこともザラにあるのですが……)
「①トルネコ3【ポポロ異世界の歩き方RE:】『低層編』」
https://www.youtube.com/watch?v=vAJp_INETcM&list=PLzC-uFXOoII-WFn-iJqkgnVQhkf6MUf7L&index=7
4.そんな「異世界の迷宮」を越えるダンジョン
さて、今回ご紹介したいのは、『トルネコの大冒険3』には、本作最高難易度と呼ばれている「異世界の迷宮」を越える難易度のダンジョンがある、ということなんです。
「異世界の迷宮」ですらローグライク史上最高難易度の部類に位置しているのですから、それを越えるということは、何か大切なものを犠牲にしないと到底クリア不可能な難易度にまで高まってしまっているということです。
さて、そのダンジョンの名前は何かというと……。
「封印の洞くつ」です!
…………。
もしかしたら、「え?」という声も上がったかもしれません。
なぜならこのダンジョンは、『トルネコの大冒険3』のクリア後ダンジョンの中で、最も簡単なダンジョンとして紹介されているからです。全100階ダンジョンではありますが、「異世界の迷宮」と違って仲間も連れて行けますし、アイテムだって10個も持ち込むことができます。言わばストーリーモードの延長線上にあるダンジョンとしてプレイできるので、まぁ簡単です。(ちなみに「異世界の迷宮」はアイテムの持ち込み無し/仲間の持ち込み無しの全て現地調達ダンジョンです。)
(※なお、ここからは倒したモンスターを一定確立で仲間にすることができる「ポポロ編」をメインにお話していきます。ちなみにポポロとはトルネコの息子です。)
では、そうした「封印の洞くつ」が、なんでここで話題に上がってくるのでしょうか?
その理由は単純明快です。
それは、「封印の洞くつに、アイテム持ち込み無し/仲間持ち込み無しで挑戦しよう!」という考えられないような縛りプレイが世の中に存在するからです。
「封印の洞くつ・素潜り(=アイテムや仲間の持ち込み無し)プレイ」。これは通称「封素」と呼ばれています。
そしてこの「封素」を行った途端に、「封印の洞くつ」は「異世界の迷宮」を上回る超絶鬼畜難易度のダンジョンに変貌するのです。
5.「封素」の何がそんなに難しいのか?
では実際どれくらい難しいかという話ですが、例えばシリーズ最高難易度とよく言われている「異世界の迷宮」は、1階を突破するのにだいたい2分くらい必要です。(もちろんアイテムを厳選する場合は、最初から何度もやり直すことにはなりますが。)
ですが「封素」の場合、1階を突破するのにだいたい20分~30分くらいかかります。一時間プレイし続けて、それでも1階を突破できないということもザラにあります。
(※なお、「単に階段を下りる」という意味では封素もすぐに2階に行くこと自体はできますが、そういうことではなく、冒険に必要な準備を整えた上で1階を突破する、という状況をここでは想定しています。)
どうしてここまで難易度が急上昇してしまうのか? その理由も明快で、「アイテムや仲間の持ち込み前提で想定されているダンジョンに、素潜り(=アイテム無し/仲間無し)で突入しているから」です。
たとえば「封印の洞くつ」の1階に出てくるモンスターは「ドラキー」、「いたずらもぐら」、「ももんじゃ」、「おおなめくじ」の4体ですが、このうちももんじゃとおおなめくじには絶対に勝つことができません(優秀なアイテムを拾えれば別です)。なのでこのモンスターたちに囲まれたらもう終わりです。
いたずらもぐらも、ギリギリ勝つことはできますが、仲間になる確率が1%未満なので、頑張って倒す見返りがありません(しかも仲間になっても壊滅的に弱いという、どこまでも不遇なモンスターです。)。
というわけなので、「封素」において1階を突破するために必要な条件は、以下の三つです。
①開幕において、部屋の中にドラキーしかいない状況を引き当てる。(※この時点で確率としては体感20%以下。)
②ドラキーを素手で倒し、15.2%の確率で仲間にする。(※このとき、落ちているアイテムを上手く活用して、10.2%の確率でももんじゃを仲間にできると相当良い。)
③仲間になったドラキーに他の敵を倒してもらい、仲間のドラキーのレベルを最低レベル3にまで上げる。(※ただし、このときドラキーがレベル1の時点でおおなめくじが流れてきたらドラキーが倒されてしまうので、①に戻ってしまう。また、連続で敵が流れてきてもドラキーは負けるので、やはり②の時点で打たれ強いももんじゃが仲間になっているのが望ましい。)
このように、いくつもの確率をかいくぐって、ドラキー or ももんじゃを仲間にし、そのレベルを3にまで上げることで、ようやく2階に挑戦することができるのです。
当然、この三つの条件が揃うことは稀ですから、結果的に何度も1階をやり直す羽目になります。これが通称「1Fループ」です。この時点で、「封素」が「異世界の迷宮」を大きく上回る難易度であることが明らかになったかと思われます。(当然のことながら、「封素」の真の地獄はここから始まるのですが、詳しくは割愛いたします……。)
(※実は「異世界の迷宮」と「封印の洞くつ」は、厳密には難しさの質が違います。「異世界の迷宮」には『トルネコの大冒険3』を代表する凶悪ギミック「石像」が頻出するのですが、「封印の洞くつ」には「石像」が一切登場しません。ですので、人によっては「封素の方が気がラク」と感じられる方もいるということは付け加えておきたいと思います。)
6.「封素」を日本で最もプレイしているプレイヤー
さて、ここまでご紹介してきた「封素」ですが、ここまで絶望的な難易度の挑戦をどれくらいの方がしておられるのか……というと、ほとんどいません。
『トルネコの大冒険3』と言うと、やはり圧倒的に「異世界の迷宮」が有名&人気ですので、ほとんどのプレイヤーがそちらに流れてしまうんですよね。
ですが日本には、こうした「封素」を専門的にプレイし続けている配信者の方がおられます。
その方は、「封素狂」という名前でYouTubeで配信をされている方です。
(https://www.youtube.com/c/%E5%B0%81%E7%B4%A0%E7%8B%82/videos)←ぜひ、チャンネル登録をお願いいたします! かなりのペースで封素のライブ配信をされておられる方です。名前のインパクトは凄いですが、人格的に大変信頼できる方です。
「封素に狂う」――名前に込められたその意味通り、封素狂さんは本当にずっと封素だけをプレイし続けておられる方です。(本当に時々、封素狂さんは「異世界の迷宮」も挑戦されます。)
そして今回、そんな封素狂さんに、「封素」についていろいろとインタビューをさせていただきました!
正直な話、「封素」に挑戦し続けるって、本当に尋常ではない集中力と精神力を必要としますので、「プロゲーマー」並の時間と労力をかけておられる封素狂さんがどのような意識で日頃封素を挑戦しておられるのか、ずっと気になっていたんです。
ですので、封素狂さんに諸々のご質問にお答えしていただきました! 続く箇所にて、インタビュー内容を記載していきます。
(※続く箇所で登場する「猫3」とは、『トルネコの大冒険3』の略称です)
7.封素狂さんへのインタビュー
――はじめて猫3をやったのはいつでしたか? また、どんなきっかけでプレイされ始めたのでしょう?
封素狂さん「初めて猫3をプレイしたのは中2か中3の時だったと思います。元々初代シレンが好きで、ローグライク全般に興味があったので猫3を始めました。」
(→ちなみに僕は、小学3年生くらいのときに初めて猫3をプレイしました。だいぶしばらく「山脈の尾根」がクリアできずにストーリーが詰んでいたことを覚えていますね……。)
――当時からトルネコではなくポポロ編が楽しかったですか? また、なぜ封素さんはトルネコ編に苦手意識があるのでしょうか?
封素狂さん「ポポロも楽しんでいましたが、当時はトルネコで装備を強化したり、合成したりとトルネコの方が楽しかったかもしれません。
ポポロは仲間に頼りながら、時には自身も戦うといったプレイスタイルですが、トルネコの場合、常に一人で戦わなければならないのにも関わらず、回復が遅いのもあって、強い苦手意識があります。」
(注記:『トルネコの大冒険3』においては、トルネコとポポロという二人のプレイアブルキャラクターがいます。すべての武器やアイテムが使えるトルネコが本作品の基本となるキャラですが、ポポロはトリッキーなキャラで、父親の半分くらいの種類のアイテムしか使えない代わりに、10~20%くらいの確率で倒した敵を仲間にすることができます。つまり、豊富な物資を上手くやりくりして一人で冒険をしていくのがトルネコ編、そしてギャンブル性が極めて高い状況で仲間と一緒に冒険していくのがポポロ編の醍醐味です。もはや「別ゲー」と言えるくらいに、この二人は全く違う戦略が要求されるのです。)
――猫3と言えばよく「異世界」が話題に出ますが、初めて異世界をクリアしたのはいつ頃でしたか?
封素狂さん「初めて異世界をクリアしたのは今から8年程前です[註:インタビュー時点で2021年]。中学の時に異世界を少しプレイしたものの、クリア出来る見込みが全くないので、一度ソフトを手放しました。その後、専門学生の時にたまたま猫3がやりたくなり再購入、それから3年程かけて初クリアしました。」
(→一つのダンジョンをクリアするのに三年かかるというだけで、「異世界の迷宮」がどれだけ高難易度かということがよく分かりますね……。その時間と労力を使えば、大学受験ができてしまいそうです。)
――「異世界の迷宮」も「封素」もどちらも理不尽な展開が頻発すると思うのですが、それでも封素の方に大きな魅力を感じるのはなぜでしょうか? それと関連して、封素さんにとって「ガマンできる理不尽さ」と「ガマンできない理不尽さ」は、一体何が違うのでしょうか?
封素狂さん「異世界も封素も、どちらも楽しめることには変わりないのですが、異世界の場合は4つの固定モンハウがあるせいで、モンハウを突破出来る仲間やアイテムがないと、大幅にモチベーションが低下します。一方封素だと、固定ハウスがないので、最低限仲間が1体でもいれば、クリア出来る見込みがあるのが魅力です。
我慢出来る理不尽は、開幕モンハウのような避けることは無理でも、その中から攻略出来る要素があることです。
我慢出来ない理不尽は開幕聖域で、どうあがいても何も変えられない状態ですね。」
(注記:「異世界の迷宮」には「大型モンスターハウス」というものが存在します。これは20階、40階、70階、81階に登場するものでして、分かりやすく言うと「四方八方からモンスターが押し寄せてくる」状況です。この階層には一つの巨大な部屋しかないので、襲い来るモンスターたちから逃げようがないのが特徴です。なので、この「大型モンスターハウス」を突破するためには、ふつう突破用のアイテム[例えば「草の神の壺」+「かなしばり草」]が必要になりますが、逆に言うとこのあたりのアイテムがないとほとんど突破は絶望的になる……という仕様です。この「大型モンスターハウス」が、実は「封印の洞くつ」には登場しないので、「突破用のアイテムが無いからどうせ進んでもこの先で詰む」みたいな状況に封素はなりづらいんですね。どんな絶望の中でも、常に一縷の望みが残っている……それが封素の魅力なのだと思います。)
[※「開幕聖域」=フロアを移動した次の瞬間に、ポポロの仲間モンスターの足元に「聖域の巻物」というアイテムが落ちている現象。このアイテム、「この巻物の上をモンスターは通過することができない=この真上に乗ったモンスターは即死である」という優秀な性能を持っているのですが、これがもしたまたま、フロアを移動した次の瞬間にポポロの仲間モンスターの下に置いてあった場合、その上にいたポポロの仲間が死亡してしまうんです。これはゲームの仕様上、非常に少ない確率ではあるものの稀に発生してしまう、回避手段が存在しない理不尽死の一つです。]
――先ほどの質問と関連して、「同じ猫3でもこのダンジョンだけは絶対にやりたくない」というのがあったら教えてください。また、その理由はどういうところにあるのでしょうか?
封素狂さん「まぼろしの洞窟です。
普段の配信でのプレイでお分かりだと思いますが、ミスがとてつもなく多いので、ミス1つで終わるまぼろしだけは2度とやりたくないですw」
(注記:「まぼろしの洞くつ」とは、「異世界の迷宮」と並ぶ凶悪クリア後ダンジョンの一つです。このダンジョンは極めて特殊で、敵を倒しても一切経験値が入りません=主人公のレベルが上がりません。そしてレベルが上がらないということは、一回の敵の攻撃で冒険終了=また1階から再スタートということになるのです。このように、道端にたまたま落ちているアイテムを最大限駆使しながら敵から逃げ続けるという100階ダンジョンが、この「まぼろしの洞くつ」となります。なお、封素狂さんは「苦手」と仰りつつも、「まぼろしの洞くつ」もクリアされているのですが……。)
――他の「不思議のダンジョン」シリーズはどれくらいご経験がありますか? また、他の「不思議のダンジョン」シリーズと比べて、「猫3はやっぱり絶妙なバランス調整だ」と感じることはあるでしょうか? それと関連して、少し大きい質問にはなってしまいますが、猫3が「芸術的な作品だ」と感じることはありますでしょうか?
封素狂さん「他の不思議のダンジョンシリーズは、メジャーなものだとシレン1,2、トルネコ1,3、あとはチョコボ、ヤンガスです。
他の作品と比較すると、ヤンガスはポポロ編と同じく、モンスターを仲間にして進めますが、ヤンガス自身が強すぎるせいで、一通り全てのダンジョンをクリアしたら、2回目は全くやる気が起きませんでした。猫3は高難易度なのもあり、何度クリアしてもまたやりたくなる中毒性があります。
簡単過ぎず高難易度、理不尽あり、ただ攻略不可能ではない、このあたりのバランスが素晴らしいと思います。」
(→これに関しては、もう本当に仰る通りという感じです……。簡単すぎるゲームは遊ばれない。けど難しすぎるゲームも遊ばれない。ここまで絶妙なバランスを維持している作品は、そうそうないのかもしれません。ちなみにヤンガスの性能ですが、トルネコとポポロを足して2で割ってないような性能を誇ります[武具を含むすべてのアイテムを使用可能+モンスターを仲間にすることが可能]。)
――また、「不思議のダンジョン」シリーズ以外のゲーム作品はプレイされますか? もしプレイ経験がある場合、「不思議のダンジョン」シリーズにしかない魅力はどのような点だと思われますか?(逆に、「不思議のダンジョン」シリーズでは経験のできない魅力などもあったら、教えて欲しいです。)
封素狂さん「ドラクエやFF等のRPGを好んでプレイします。不思議のダンジョン以外のゲームの場合、ある程度やり込んで遊び尽くしたら、数年はプレイしないことが殆どですが、不思議のダンジョンは毎日プレイしたとしても、毎回違うプレイになり、常に新鮮な気持ちでプレイ出来るのが一番の魅力です。」
――封素はかなり絶望的なループや理不尽に耐える挑戦だと思うのですが、その挑戦を支えるメンタルはどのようなものなのでしょうか?
封素狂さん「100回挑戦して99回が駄目でも、残りの1回がクリアに繋がるかもしれない。また調子が悪く、長期間クリア出来なくても、クリアに繋がる1回を引くまで続けるだけと考えて、日々プレイしてます。」
――あまりの理不尽展開に耐えかねてプレイを中断した場合、どのように息抜きをされておられるでしょうか? また、その際に「このゲーム二度とやらん」と感じることはあるのでしょうか?
封素狂さん「一時的にやる気が無くなった時は、トルネコとは関係無い動画を見たり、美味しいものを食べたりして気分転換してます。
このゲーム2度とやらないと思ったことは一度もないですね。たぶんこの先もそうなることはないと思います。」
――どのような能力や傾向性を持っている人が、猫3に向いていると思いますか? また、猫3をやっていて賢くなったと感じる思考力や発想力などはありますか?
封素狂さん「難しいことが好き、1つのことを続けるのが苦ではない、この傾向がある人には向いているゲームだと思います。
何かを選択する時、選んだ先にどんなメリット、デメリットがあるかを深く考える機会が増えました。」
――猫3をプレイしていく中で、「こういう仕様があったらもっと面白いかもしれない」と感じるものはありますか?
封素狂さん「仲間への命令で、特技だけ使う命令があればより楽しめたかなと感じます。ただこのままだと、強力な特技持ちモンスターが無双してしまうので、特技を使えるターン数や命令を出せる回数を制限するなどで、調整が出来そうです。」
(注記:『トルネコの大冒険3』では、仲間モンスターに命令を出すことができます。それぞれ、「ポポロにずっと付いてきてもらう」、「敵を見かけたら倒しに行ってもらう」、「勝手にフロアを徘徊する」、「立ち止まってもらう」などがあり、これらの命令を駆使して仲間モンスターの配置を上手くコントロールしていくことがポポロ編では必須となります。今回封素狂さんは、「特技だけを使う命令」があればより戦略の幅が広がっただろうとの見解を示してくださいました。)
――逆に、猫3をプレイしていく中で「この仕様さえなかったら、もっとストレスのない神ゲーになっていたのに」と感じるものはありますか?
「開幕聖域、きっとこの仕様が原因でやめた人が1人はいるでしょう。」
(注記:前述のとおり、仲間が即死してしまう回避不可能な現象です。おそらく確率としては0.1%以下なはずなのですが、それでも発生する事故なんですよね……。そもそも、フロアを移動した瞬間に仲間の足元にアイテムが設置されている確率だって少ないのに、それが100種類くらいあるアイテムの中で、なぜ「聖域の巻物」になってしまうのか……。)
――今後、もしかしたら挑戦するかもしれない猫3の縛りプレイなどはありますか?
封素狂さん「異世界ではナメクジ縛り、封素では指輪縛りあたりをやろうと考えてます。」
(注記:「異世界の迷宮」に「おおなめくじ」というモンスターがいるのですが、この仲間だけを連れてクリアするという縛りが「異世界なめくじ縛り」。そして「封素」をクリアする上で必須アイテムである各種「指輪」を使わないで「封素」をクリアしようと言うのが「封素・指輪縛り」です。例えば「透視の指輪」は敵の位置が分かりますし、「爆発の指輪」は自分もダメージを受ける代わりにほとんどの敵を一撃で倒すことができます。これらを使ってギリギリクリアできる「封素」で指輪を使わないというのは、異次元としか言えません。)
――猫3の中で好きなモンスターを5体まで上げるとしたら、どのモンスターになりますか?(外見でも性能でも思い入れでも、何でもOKです!)
封素狂さん「性能としてガニラスとヨガジン、ステータスや見た目から、ばお(もんじゃ)とおりゅ(おおナメクジ)、その場にいるだけで人々を笑顔にするサイコパス(ビッグスロース)となってます。」
――もしこの世界に猫3がなかったとしたら、その時間は別のゲーム作品をプレイされていたでしょうか?
封素狂さん「もし猫3がなければ別のゲーム(ローグライク)を日々やっていたと思います。」
(→やはり、封素狂さんはローグライクに最も強い関心を持っておられるようです。)
――もし猫3に「封印の洞窟」がなかったら、今ほど猫3をプレイしていたり、猫3配信を続けていたりはしなかったでしょうか?
封素狂さん「封印の洞窟がなければ、月に数回異世界をプレイする程度でした。配信も異世界で順調な時に、たまに配信する程度だったかもしれません。」
(→もし『トルネコの大冒険3』の開発者の方が「封印の洞くつ」を制作されなければ、そしてその難易度が「ギリギリ素潜りでクリアできるような絶妙な難易度」に設定されていなければ、この世に「封素狂」さんは生まれなかったわけですね……。何が起こるか分からないものです。)
――最後になりますが、封素狂さんにとって「封素」とは何でしょうか?
封素狂さん「封素は日々の食事と同じようなものだと思っています。お腹が空いたからご飯を食べる、ドグーンに会いたいから1Fループをする、どちらも
日常生活になくてはならないものです。」
(→生活になくてはならないもの。封素狂さんを形作っているもの、封素狂さんを封素狂さんたらしめているもの、それこそが「封素」なのかもしれませんね。)
8.おわりに――「封素」という魔境から
あの「異世界の迷宮」を越える難易度のダンジョンを生み出す縛り最凶の縛りプレイ、「封素」。
今回は、そんな「封素」に挑戦し続ける封素狂さんから色々なお話を伺うことができました。
やはりこのインタビューから窺い知ることができるのは、封素狂さんが心から「封素」を楽しんでおられるということです。
・面白いゲームの「面白さ」とは、どこから来るのか?
・圧倒的に難しいゲームでも、人を惹きつけてしまうのはなぜか?
・一体、人を熱中させる中毒性の源とは何なのか?
こうした一般的な問題を考えていくための大きな示唆を、封素狂さんのインタビューは私たちに与えてくださっていると思います。
封素狂さんは(毎日というわけではないですが)かなりのペースで「封素」チャレンジのライブ配信を行っておられます。
特にどれだけ理不尽な状況が重なって「1階」に戻されたとしても、何事もなかったかのように再び「1Fループ」を始めるその様は圧巻としか言えませ
ん。
どれだけ理不尽な状況に追い詰められても、どれだけこれまでの努力が無駄になってしまったとしても、命ある限り挑戦を続ける――そのような「命」の在り様を、私たちは「封素」の魔境で目撃することができるのです。
封素狂さんのチャンネルはこちら。
https://www.youtube.com/c/%E5%B0%81%E7%B4%A0%E7%8B%82/videos
(鑑賞用としても非常に面白いですし、作業用BGMとしても最適な環境音だと思われます!)
(※また今回、「封素」以上に凶悪な縛りプレイのご紹介はあえてしませんでした。「宝素」のご紹介をしてくださる方、待ってます……!)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?