小説 「ギブンアップ」 01
マンションの一室のドアの前に帽子を被ったピザの宅配員が立っている。宅配員は自身の腕時計を見て時間を確かめた後、インターフォンを押した。
暫くして、ジャージ姿のヤクザがドアを開け、宅配員を睨みつけた。
ピザの宅配員は怯む様子も無く、「お待たせしました〜。スペシャル・ハワイアン・ピザです〜」と軽い調子でと伝えた。
「ピザ?そんなもん頼んでねぇぞ。それにハワイアン? そんな気色悪いピザなんか頼む訳ねぇだろ」
「え?そうなんですか? でも、美味しそうですよ、ほら」と言いながら、宅配員はピザの箱を開ける。中身を見てジャージ姿のヤクザは戸惑いを隠せない。そこにはサイレンサー付きの銃が二丁入ってた。
「なんじゃ、お前ーー」とヤクザが言葉を言い切る前に、宅配員は素早く銃を箱から取り出し、ヤクザの額を撃ち抜く。宅配員は倒れ込むヤクザを音が出ない様に素早く死体を抱え、そっと床に置いた。
一丁の銃を腰に指し、もう一丁の銃を構え、部屋の奥へと進んでいく。
トイレらしきドアから、中年のヤクザが出てくるが、目が合った瞬間冷静に対処し、額を撃ち抜き、倒れる前に抱えてトイレの中に押し入れ、ドアを閉める。
応接間前に到達すると、角から中の様子を確認する。ソファに二人、机に一人いるのを目視するや否や、腰の銃を取り出し、両手に構えると、まずソファの二人の額を撃ち抜き、机に座るヤクザを素早く撃ち殺す。
奥の部屋の机に座っている親分が、ドアの外から聞こえる小さな叫び声に反応し「静かにしろ」と怒鳴った。
ドアがノックされる音がする。「なんだ?」と組長が機嫌が悪そうに答えた。
ドアが開き、撃ち殺されたヤクザの死体が「ドサッ」と音を立てて倒れこんだ。宅配員は組長が驚愕する暇も与えず、素早く肩を撃ち抜くと、素早く近づき、叫び声を上げる組長の額に銃を突きつける。
人差し指を自身の唇に当て、親分を黙らせると、今度は懐から何かを取り出そうとする。親分は「ひっ」と情けない声を上げ、目を瞑った。
組長は脅えた様子でゆっくりと目を開けると宅配員は銃と共に二つ折りにされた紙を突き出している。組長が視線を銃から紙へと移動すると、宅配員は「読め」と頷いた。
組長は恐る恐る紙を受け取り、中身を読んだ。
「二択だ。約束通り払うか、このままそいつに殺されるか。答えを目の前の奴に伝えろ」と紙には書かれている。
親分は血が流れる肩を押さえ、痛みで顔を歪ませながら小刻みに頷きながら「は、払う」と即座に答えた。
宅配員が、ゆっくりとその場を立ち去ろうと背を向けた瞬間、組長が引き出しから銃を取り出した。組長が構える動作をする前に宅配員は、見向きもせず、銃だけを向け、背後の組長の眉間に風穴を開けた。
宅配員はどこか悲しそうな表情で、扉を閉めその場を去っていった。
つづく