小説 「シャークス・ラブ」 VOL.24
村上は夕暮れの公園で一人肩を落とし、ブランコに乗りながら佇んでいる。
頭の中では先ほどレンタルビデオ店で細田に言われた事がぐるぐると頭の中を駆け巡っている。
どこを見つめているのか分からない視線で、目の前の情景を見つめていた。
砂場では男の子が一人、一心不乱に目を輝かせながら、砂で城の様なものを作っている。
「なんだよ、それぇ」その周りで遊んでいた子供たちの一人が、男が砂遊びなどをしていることが気に食わなかったのか、馬鹿にしたような目つきで子供の元へやってくると、唐突に砂の城を足で踏みつぶし、仲間達の元へと戻っていった。
「あっ…」自身の状況に落ち込んでいた村上だが、その状況に思わず声を出し、腰を上げる。
時間をかけ作ったものが壊され、泣きそうになりそうになる男の子だが、泣くのをぐっと堪え、また一から城を作り始めていく。
しばらくすると、周りの子供たちはその懸命な姿に動かされたのか、一人、一人と、男の子の手伝いに参加していった。
最後には城を壊した本人も罰が悪そうに、仲間に呼ばれ渋々と城作りへと加わっていく。
男の子を中心に皆笑顔で城を作っていく。
「あれ…」気がつくと、その様子を見つめていた村上の目からは自然と涙が溢れ出て来ていた。
「そうか…そうだよな」何かを納得した様子で村上は顔をあげ、携帯を取り出し、番号をおす。
携帯から「もしもし?」と女性の声が聞こえた。
「もしもし、葵?ちょっと話いい?」
つづく
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