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短編小説 「グレイとの恋」 #7(最終話)

「何で撃つんだ!」と叫ぶ慎也に「もう情が移ったのか? 忘れるな、こいつらは異星人だ。可愛い顔していても一皮剥けば醜い事は知ってるだろ?」関口は冷酷に告げた。

悟は悔しそうに涙を浮かべる。

「見た目が酷かったら、ダメなんですか。中身は見てくれないんですか?」「…当たり前だ」
「ふざけるな!」血を流し床に倒れているエリが突如発する大声と口調に関口が驚く。

「見た目が違ったって、それが何だっていうんだ!
エリちゃんはエリちゃんだ! それが何だって言うのさ。人間だって嫌なやつはいる。人を見た目だけで決めつけるのはおかしいだろ!」

「エリ…なんだ、その喋り方は? 痛みでおかしくなったのか? ああ、俺は異星人が心底嫌いだ。だがな、商品としては別だ。こいつらが良いって言う好き者がいるからな」

「商売?」深夜が眉を細めた。

「あくまでこいつらはガチャの景品として、客に売る商品だ。高く売れる商品としては大好きだよ」

「ありがとう。それが聞きたかった」慎也が安堵のため息をつくと、今度はエリが満面の笑みを浮かべ「やった!」と叫ぶ。

「あ?」

水木が天井付近の何かに気づき、指を指した。

「関口さん、あれ…」

関口が上を見ると、そこにはスマホが浮いている。

真也は隣の悟に向かって「エリちゃんもう大丈夫だ」と言うと、スマホが慎也の手元に降りてくる。
慎也はスマホの画面を関口に向けた。そこには銃を構えた関口たちの姿が写っている。

「ここでの事は全部ライブ配信させて貰いましたよっと」

ドアを叩く音が聞こえ、他の社員が慌てている。「関口さん!警察が来てます!どうしますか?」

「クソっ! やってくれたな、お前ら!」関口は慎也に怒りの形相で銃を構えた。同時に悟が手のひらを翳し、関口たちを睨みつけたかと思うと、衝撃波が二人を遅い、二人は激しく壁に叩きつけられる。

「悟君!」

悟はエリに向かい駆け寄る。薄れる意識の中で関口は悟の姿がエリに、エリの姿が悟に変わるのを見る。

「〈能力〉か…くそ…」と呟きながら気を失う。

「大丈夫! 悟くん!」
「良かった。慎也が万が一の時にって入れ替わっておいて…それに最初に〈能力〉を使っていたら証拠が撮れなかったし…」悟がか細い声で答えた。
「ごめんなさい…私の為に…」
「いや、僕こそ本当にごめん…」
「…なにを謝るの?」
「アイツらと一緒だったよ、僕も…偏見だらけだった」
「だな…罪滅ぼしにこれぐらい我慢しねーとな」と慎也が悟に肩を貸す。
「ありがとう…二人とも…」エリが涙を浮かべ微笑んだ。

事件から数日経ち、悟と慎也がカフェでドリンクを飲んでいる。

「結局エリちゃんは故郷に戻ったのか?」
「うん…そうみたい」
「残念だったなぁ、せっかく彼女できるとこだったよに…」
「いいよ。今中途半端に付き合ったって、問題は沢山ある。いつか一人前になったら、会いに行くよ」
希望に満ちた悟の目を見て、慎也が冗談交じりに
「なんだよ…一人だけ大人になりやがって」と愚痴を吐く。
「そんなんじゃなないよ」
悟はスマホを見ると「そろそろ行かないと…慎也、ありがとう。勇気をくれて…」と言い残し席を立つ。
「お。そか、じゃまたな」
一人残った慎也がドリンクが入ったグラスに向けて手を翳すとグラスが手元に動いてくる。
「勇気か…俺も勇気出して、あいつにちゃんと伝えねぇとなぁ」

おわり

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やじま りこ | 小説
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