高校へ入学すると、 腕時計が、必要になる。 母から私へ贈られた腕時計。 それは、祖父から母へ贈られた腕時計であった。 フランスのデュポン社製 細くて小さいスクエアの文字盤。 おそらく1950年代のものだったのだろう。 1982年。 時代は、松田聖子 セイコーのピコレ、 デジタル腕時計。 高校一年生の私は、 腕時計の良さも、ありがたさも 感じることなく デジタル腕時計が欲しかった、と 母に言ってしまった。 その年の夏。 部活終わりに腕時計をみたら 止まっていた。 壊
皮蛋。 ちょうど40年前。 高校の家庭科の授業。 調理室ではなく、いつもの教室の一風景。 N先生が、 「これは、中国の食材でピータンといいま す。はい、廻して~。」 と言って、お皿を持ってきた。 何やら黒い、いや濃い琥珀色の物体が、 私たちの机から机へリレーされていった。 ピータンはその当時まだ珍しく、ましてや高校生の私たちには、未知の食べ物、どこかの惑星の食べ物にしか見えなかったのである。 匂いを嗅ぐ者、顔をしかめる者。 私の後ろの席のタエミちゃん。 恐る恐