Obliviónの音楽
小説「Oblivión」を読んでいただいてどうもありがとうございます。2024年初版を発表して以来、思いもかけずたくさんの方に読んでいただいて、またいろいろな感想もいただき感激しております。さて、ここでは何件かお問い合わせのあった、小説中に登場した音楽について書いてみたいと思います。
(タイトル写真 by Preillumination SeTh)
1.Oblivión
小説のタイトルにもなっているOblivión、忘却、はアストル・ピアソラ作曲の超有名曲。メランコリーに満ちた美しい旋律で、タンゴファンでなくとも耳にしたことがあるかもしれません。
作曲者のアストル・ピアソラは1950年代にアルゼンチンタンゴに意識的にクラッシクやジャズの要素を取り入れたことで有名です(しかしそのため伝統的タンゴ音楽至上派の人たちからは目の敵にされてきたという歴史も)。4分の4拍子にメロウな8分音符の3-3-2のリズムが被さっていて、踊るときには少し工夫が必要ですが(そのせいもあってかダンスフロアでかかる確率は低いですが)陰影がしみ込んでくるような、本当に美しい曲です。
ちなみに、この曲は1984 年イタリア映画「Enrico IV(エンリコ4世)」のために作曲されました。しかし今では独立した音楽として様々なアーティストによって様々な楽器、アンサンブルで録音されています。ここでは、バンドネオン奏者としても有名だったピアソラがオーケストラと一緒に演奏しているオリジナルサウンドトラックをあげておきますが、ヴァイオリンバージョンとか、チェロバージョンとか、それぞれ美しいので、ぜひいろいろ探して聴いてみてください。
2.Poema
ポエム、詩、ですが、歌詩の内容はむしろ、愛と憎しみに揺れた過去の断片、という感じでしょうか。作詞はAntonio Mario Melfi、 作曲はEduardo Vicente Bianco、小説の中で山野さんが思い出そうとしてるフランシスコ・カナロ楽団の録音は1935年のもので、歌手はRoberto Maida です。これも古今たくさんの名演奏があります。最近のものでは Orquesta Romantica Milonguera のがヴィジュアル的にも楽しいです。
3.Gallo Ciego
直訳で盲目の雄鶏。闘鶏で目が傷ついた(=負けた)オンドリのことを指すとか、子供の遊び(目隠しした子どもが真ん中でオニになり、まわりを輪になって回る子供たちの中から、ある一人だけを声を頼りに捕まえる、という遊び)を指すとか諸説ありますが。なぜこのタイトルなのか、決定的な説明はないようです。
作曲者はAgustín Bardi、最初の録音は1927年Julio De Caro 楽団、その後もRicardo Tanturi楽団 (1938年)などいろいろあるのですが、やはりオズワルド・プグリエーセの楽団による1959年の演奏が最も有名ではないでしょうか。鋭いリズムとダイナミックなフレージングのこの演奏の録音は、ステージ、エキジビションなどで繰り返し使われてきました。ミロンガでも時折耳にします。が、エキサイトしすぎて他の人にぶつかったりしないよう、自制して踊りましょう……。
4. Lágrimas y sonrisas
「涙と微笑」作詞・作曲はPascual De Gullo。彼が自分の楽団とタンゴブームに沸くヨーロッパをツアーしている間に書いたタンゴ・ワルツだそうですが、ここではフアン・ダリエンソの楽団による1936年の演奏をあげておきます。さすが帝王ダリエンソ、タンゴ黄金時代の魅力があふれるグルーヴで、恭子さんじゃないですが、これがかかって体がムズムズしなかったら、ひょっとしてアナタは死んでいるのかも?
ディエゴとチェチリアの踊ったミロンガは?
さて、小説中のダンス・デモンストレーションでディエゴとチェチリアは|タンゴ・ミロンガを踊ります。タンゴ音楽の中でも、シンコペーション付き4分の2拍子のミロンガは、生き生きとした感じがする音楽で、ダンスの方もアフリカ起源のステップをカンドンベから受け継いで、お祭り騒ぎのような楽しさがいっぱい、ダンス・デモを華やかに締めくくるのにぴったりなので、デモでは最後に踊られることが多いです。
さて、小説中で使われたミロンガなんですが、ここはひとつ私の方から伺いたい。皆さんはだったらどの曲あてますか? ……アレもいけそうですねー😏コレも捨てがたいですねー🥰 うーん名曲ありすぎて決められない? わかります~~🌹
©2005 Rico Unno