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【選択肢、それによって変わる未来】

自分は昔から漫画が好きで、暇さえあれば
気になった作品を手にしてみる
いわゆるパッケージ買いに近いことをすることが多かった。

最近の漫画というのは、特に意識していなくても
人気なものは話題になり、アニメ化などの映像化
アプリやグッズの販売等で目にする機会が増えてしまう。

そうではなく、自らが手に取り
タイトルや表紙などでどんな漫画なのだろうか。と
さまざまな思いを張り巡らせて読んでみるという行為は
一種のギャンブルに近い。
当たりもあれば、外れもある。
それも含めて、その読み方、買い方が好きであった。

その中でも、自分はいまだに手にしてよかったと
心から思える漫画が『ヒメアノ〜ル』である。

父の影響もあり、古谷実さん作品は何作か知ってはいたものの
事前情報なしに読んだのは、この作品が初めてである。

あらすじ

主人公の岡田進(濱田岳)は冴えない25歳の童貞
先の見えない将来にため息をつく毎日。
そんなある日、自分よりも更に冴えないであろう
先輩:安藤勇次(ムロツヨシ)と仲良くなり、恋愛相談を受けることに。

その安藤が恋慕する相手は
職場近くのコーヒーショップで働く
阿部ユカ(佐津川愛美)と知るも、
その容姿から諦めるように促す岡田。

そして、そのユカを見つめるもう一人の男
彼は偶然にも岡田の同級生である森田正一(森田剛)であった。

交わることのなかった関係であったが
森田にストーカーされているという
相談を受けることになった岡田と安藤。
しかしながら、ユカは安藤ではなく岡田に好意を抱き
二人は付き合うこととなり、安藤は嫉妬から自暴自棄に。

コミカルに描かれていく岡田の人間関係の裏では
森田はまだ濁った目を泳がせていたのだった...

残酷と思えるほどのキャスト

この作品は、古谷実作品らしく
恋愛模様とは別に何事もうまくいかない人間の
憎悪や嫉妬、またこの世に絶望した様子を
背景でうつしており、そしてそれが交錯した際の
描写がリアルに描かれている。

ある者が幸せを感じている裏では
また別の者が悲観し、その怒りや恨みを
八つ当たりのようにぶつけているといった世界観が
心苦しくも感じ、恐ろしさを引き上げてるのではないかと感じた。

主人公である岡田を濱田岳が演じており
その同級生である森田を森田剛が演じているのだが
原作を知っているものからすると
岡田はかなり適任に見える。

森田に関しては、疑問が生じたが
映画を見終わった際には
こんな演技ができるのかという驚きと共に
もう他の俳優では考えられないという意見にまで変わった。
正直に言うと、V6のメンバーということもあり
容姿が整っているため、森田というキャラクター像には
程遠いのではないかと思った自分が情けないと思えた。

他人から傷を負った者の選択肢

昨今でも、いじめ問題は後を絶えないが
この作品をはじめ、古谷実作品では
過去にトラウマを抱えている人間を描くことが非常に多い。

そして、その経験がどのように生きるのか
人によってはバネとして大きく成長するものもいれば
それはあくまでも光の部分だけを写しており
大半がその傷を抱えて、闇に飲み込まれてしまうのが
現実ではないのだろうかと考えさせられる。

この作品においても、裏の部分にフォーカスを当てており
その比較対象として冴えない主人公が
少しずつ幸せを掴んでいく描写が
微笑ましく見ていられない作りになっている。

見た後には、複雑な心境となるが
自分にとって非常に好きな作品の映像化であり
原作と違う部分はあるものの
おすすめのできる映画なので、是非一度観ていただきたい。

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