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【映画】『奈緒子』は役者三浦春馬の原点かもしれない作品

「春馬君が出てなかったら観なかったであろうシリーズ」の第二弾です。
思いつきですが、シリーズ化してみる事にしました。第二弾で終わるかもしれませんが。

過去20年もの間、日本のドラマや映画をほとんど観てこなかった私が、春馬君が出てると言うだけの理由で、日本の作品を見るようになって半年。
私の中では、「人生でこんな事が起こるなんて!」レベルのものすごいパラダイムシフトでして、おかげさまで、良くも悪くも新鮮な驚きに満ちたエキサイティングな日々を送っています。
この新鮮な気持ちを、出来るだけフレッシュなうちに書き残しておいて、後から冷静になった時、自分で自分の事をくすっ!と笑ってみたくなりました。というわけでシリーズ化。

「春馬君が出てなかったら観なかったであろうシリーズ」第二弾は、『奈緒子』です。
第一弾はこちら。

実は「奈緒子」読んでました

先日、『真夜中の五分前』との二本立てで、スクリーンで観た『奈緒子』。スクリーンにわざわざ足を運ぶとなれば、もちろんお目当ては行定監督の『真夜中の五分前』なわけですが、もれなく『奈緒子』もついてきたので、観ることに(失礼!)

若き日の春馬君が観られる、という意味ではワクワクMAXではあるのですが、白状しますと「奈緒子」が嫌いなのです。

映画『奈緒子』の原作は漫画。当時連載されていた雑誌をよく読んでいたので、「奈緒子」もリアタイで読んでいました。なんとも辛気臭いストーリーで、奈緒子も雄介もうじうじウジウジしていて、読んでイライラするばかり。
雄介は感じの悪い野生児に見せかけて、中身はうじうじ君。陸上辞める辞める言いながら走る、それ見て奈緒子がうじうじ泣いて応援するの繰り返しで。。。(漫画のファンの方が読んでいたら刺されそうですが)。

連載を長引かせたかったのもあるのでしょうが
、一向に光明が見えないまま、走る→泣く→走る→泣くのループに、途中からは毎週は読まなくなりました。
たまに読んでも、「あれ?まだ同じ大会走ってる?」という調子で、遅々として進まないレース展開(!)にも飽きて、ますます読まなくなりまして。

まあ、連載漫画にありがちなのですが。

そんなわけで、この映画も立派な「春馬君が出てなかったら観なかったであろう作品」なのでありました。

2時間にまとめた結果

そんなわけで、春馬君の出演作のリストの中に、『奈緒子』を発見して、一旦は脳内スルーしたのですが、ふと我に返って、「あの長いストーリーをどうやって2時間の映画にするのか?」という疑問がふつふつと湧いてきました。
なんでも9年間にわたる連載で、単行本は30冊を超えるとか。

ひょえー、そんなに続いていたなんて!!

春馬君がどうしても、陰気でガサツな雄介のイメージに合わなくて、勝手にライバル選手の役なのかな、と大真面目に妄想しておりましたが、まさかの雄介役と知り、脳内にハテナの山が築かれたのは言うまでもなく。

今回は、そのあたりの答え合わせをできて、スッキリしました。

まず、『奈緒子』というタイトルでしたが、原作とは全く別物でした。
正しくは『波切島高校駅伝物語』。
ジャンルはスポ根モノでした。

一応、奈緒子を助けるために雄介の父親が命を落としたという2人の因縁のストーリーも描かれていますが、なんなら、なくてもよかったくらいでして。

だって、2人ともそんなにうじうじしてなかったし(原作比)。

東京から、喘息もちの可愛い女子が、離島の高校にやってきました。
というだけで、ぜんぜん成立するスポ根モノになっておりました。

2時間にしようとしたら、そうなるよね。。。

映画『奈緒子』の楽しみ方

というわけで、スポ根映画とわかれば、もうそれはそう楽しめば良いわけです。昔、一世を風靡したドラマ「スクールウォーズ』の、陸上部バージョンと思えばいい。

笑福亭鶴瓶さん演じる、長崎の架空の島、波切島出身のくせに、なぜか大阪弁の監督率いる、波切島高校陸上部。

スター選手である雄介は、リーダーシップに難があり、チームを引っ張る甲斐性がない。
チームメイトは、バラバラで、やる気があるのかないのか、口だけなのか。
スクールウォーズでいうイソップ相当の、出来は悪いが、一生懸命でいい奴のみそっかす君もいます(病気で亡くなったりはしませんが)。
そこに、東京から来た、訳ありの可愛い女子マネ加入。

役者は揃った。

あとは、すったもんだの末、全員がちょっとずつ成長して、大会に出て優勝。

とまあ、典型的なスポ根モノなので、あとは走る春馬君をひたすら愛でます。
そういう映画なのです。

ひたすら走る春馬君

とにかくまあ、よく走ってました。
練習も、試合も、プライベートも、歩いてるシーンなんかほぼない。
基本、立ってたら走ってる。
いや、起きてたら、走ってる。

でもこれ、陸上部男子あるあるだよな。。と。
はい、私、陸上部男子の母もやっておりまして。陸上部男子、アフォなので、走れる場所さえあれば、日常生活でも原則走ってるんですね。
どこかへ行くのも、走っていく前提で、タイムスケジュール組んでたりする。

いい事があると走る
クサクサすると走る
悩みがあると走る
試合で勝つと走る
試合で負けると走る
悲しいと走る
悔しいと走る
眠いと走る
お腹空いてると走る
お腹いっぱいだと走る

友達からの走りに行くお誘いは断らない

最大級のご褒美は肉食べること

この映画、まんまです。
映画観てるのに、全然現実逃避できない(笑

確実に『奈緒子』鑑賞における陸上部男子母あるあるです。そんなピンポイントな属性の人、そう沢山いないでしょうけど。

でも、ふと思う。
春馬君、陸上部男子じゃないじゃないか!と。

春馬君、この映画、しんどかっただろうなぁと、陸上部男子の生活を知ってるだけに、心底思いました。
走るの好きでもないのに、あの生活するの、いくら仕事でも。。。

さらに言うと、あの、やる気のない陸上部員たちの演技、半分リアルじゃないだろかと思えてきます。

エンドロールを見てたら、陸上指導で金哲彦さんのお名前がありました。
どうりで、春馬君のフォームがキレイだったわけだ。

ほんとに、お疲れ様だよ春馬君。よく頑張りました。

春馬君って、サーフィンやギターなど、役作りがきっかけで、その後趣味になったりしてる事もあるのに、マラソンは趣味にならなかった。
この仕事、しんどいばかりで、楽しめなかったんじゃないかなぁと、余計な心配ばかり膨らむ、陸上部男子母なのでした。

春馬君にとっての映画『奈緒子』

映画『奈緒子』は、2008年に公開された映画で、映画で言うと、ひとつ前が『恋空』、ひとつ後が『君に届け』になります。若き日の春馬君の代表作2作品に挟まれているのがこの『奈緒子』です。

テレビドラマで言うと、『ブラッディマンディ』や『ごくせん』の頃なので、ちょうど名前が売れて、仕事が忙しくなってきた時期とも重なります。

この2008年は、ちょうど、子役から大人の俳優さんになっていく狭間の時期の春馬君。
子役時代は、演出家に言われた通りに演じる事を期待されていますが、大人になるにつれて自分で考え、周りを見て芝居をする事を求められるようになっていく。
『恋空』のヒロは、上手いのだけど、言われた通りに、100点満点の演技をしているように見える春馬君。
ところが『君に届け』になると、三浦春馬じゃないとできないであろう、繊細で考えられた大人の演技になっていて、『恋空』とは別人の俳優さんのように見えます。

その違いはなんだろうなと考えながら、『奈緒子』の春馬君を観ていると、まさにその中間で、優秀な子役時代のように、言われた通りきっちりロボットのように演じているところと、役者職人三浦春馬の片鱗がちらっと見えるところと、どちらもが混在しているように感じる。
『君に届け』で大人の俳優にきっちりと変貌を遂げる春馬君が、まさにもがいてぐんぐん成長していた時期を切り取った作品が『奈緒子』なんだと思います。

春馬君は子役の頃から、映像向きの繊細な演技は抜群に上手い子役でした。『奈緒子』での春馬君は、走ってるばかりで、セリフや繊細な演技は少ない。一方で、悔しくて走る、怒って走る、吹っ切れて走る、もやもやして走る、励ましたくて走る、と、同じ「走る」という行為でも、シーン毎に表現されている事は異なるのです。春馬君にとっては、雄介役のような、行為を通じて体全体で心情を表現するような役は、おそらくはじめてだったのではないかと思います。

歩く、走る、食べる、なんなら、立ってるだけでもなにかを表現する俳優という仕事。
子供の頃から得意だった表情を使った繊細な演技に、身体全体を使って行為で表現する事を学んだ春馬君が、『君に届け』ですっかり大人の演技者になっていたのは、なんとなくわかる気がしてくるのです。

というわけで、行為で表現する春馬君の原点を観られる映画『奈緒子』。
作品としては、いわゆるスポ根映画だけど、やはり春馬君のファンとしては、子役時代最後の、そして大人の俳優になりかけの春馬君を観られる作品として、避けて通れない作品です。

脳内スルーで終わらず、観られてよかった!
二本立てに感謝。

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