小説『捕食者』 第一章

一 – 明

建屋の大通りに面した側面はガラス張り。中に入ってまず目に入るのは、テーブル同士の間に仕切りのない、広いオープンスペース。晴れの日は陽の光に照らされ、明るい店内。ここはそんな開放感のあるレストラン。今私が座っているのは、オープンスペースの中央付近の席。店内を見回すのにちょうどいい位置で、賑やかなランチの時間帯には楽しい空気に包まれる。ここは店内の中でも、私のお気に入りの場所。
レストラン「Bright Coast」は私のお気に入りの場所。週末は必ず、平日でも何回かは通う店。レストランとは言っても、喫茶店感覚で利用するお客さんも多い。読書を楽しむだけじゃなく、ブログを書いたり、写真や動画を編集したり、繁忙期は持ち帰った仕事を処理したりするのに、私はこの店を使っている。

ドリンクとデザートだけでリラックスできるこの店で食事を取るとき、私が注文するのはパスタ。今の職場で働き始めた頃、休日においしいお店をネットで探していたときにたまたま見つけたのが、このレストラン。店の紹介や口コミを見ると、パスタに定評があるとのこと。
初めて来たときに注文したのは、ミートソース。パスタをフォークで巻いて、口に入れたときの、あの食感。口の中を撫でるような感触と、歯で噛んだときに押し返すような張りの強さ。そこに加わるのが、肉汁豊富なソースの旨味。トマトの味以上にひき肉から零れ落ちる肉の油汁が私の舌を包み込んで、食欲を満たしてくれる。
これが私の求めていたパスタ、初めて食べたときにそう思った。

「お待たせしました」
店員が運んできた、イカスミパスタ。これが今の私のイチオシ! オリーブオイルの軽やかな香りとまろやかな口当たり、ニンニク風味とイカスミの醸し出す潮の味。口内に絡みつく墨が残るおかげで、味の余韻を長く楽しめるのが魅力的なところ。おかげで私はイカスミ中毒になりそう。そのくらい、この店のイカスミパスタは私を惹きつけてやまない。
ここまで紹介したのが、この店のパスタ全般、特にイカスミパスタの味の魅力。ここから先は、私が発見したパスタ料理の「もう一つ」の魅力の話。

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鮮道朝花は私のペンネームです。私の書いた小説を載せています。どうぞ、お楽しみください。 掲載作品: 『洞穴』『陰』『継承』『出会い』『淫獣…

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