「もやしっ子を御柱に!」ちょっとオカルトな中部の旅(その10)~「下呂」からの帰還~
【前回までのあらすじ】
頭も顔も良いが、肝心な時に体調を崩しがちな「もやしっ子」後輩を、野性味あふれる聖地・諏訪の巨木御柱(おんばしら)まで育て上げようと、昭和のパワハラ親父精神で旅に出た。
諏訪大社→万治の石仏→松代大本営跡→象山神社→下呂の回天楠公社と巡ってきたが、そろそろ下呂から帰還しなければ間に合わなくなってきた。
下呂は山奥で車に行くには苦労するが、それ故に自然を感じる美しい街だ。
温泉に入りたいところだが、どうも時間が無い。
念願の「回天楠公社」にお参りはできたが、「栃の実せんべい」(もやしっ子後輩は嫌いなもの)以外何もお土産らしいものは購入できていない。
【名物 下呂プリン(げろぷりん)】
「なんか名物って無いんかね?」
「あー、下呂プリン(げろぷりん)がありますよ」
「(゚Д゚)ハァ?」
下呂プリンという語感にズゴーッとなってしまう。
「もう一回言って」
「え、下呂プリンですよwww」
どうやら冗談ではないらしい。
後輩も半笑いなだけに、語感の妙には気づいているらしい。
とにかく後輩の案内で市街地を走っていく。
道は狭く、なかなか進むことができない。
「本当にあったよ・・・下呂プリン」
「買ってきましょうか。ちょっと待っててください」
上手く駐車できないため、車に私が残って、後輩に買ってきてもらうことになった。
下呂プリンもそうだが、街中にカエル🐸のマスコットがいる。
下呂→げろ→ゲロゲロ→カエル🐸ということらしい。
「げろ」と聞いて違う物を想像しちゃうもんな、普通
下呂プリンを買いに行った後輩が、あっという間に戻ってきた。
「すいません、下呂プリンを待っている人が結構いて、間に合わなそうなので諦めました」
残念だが諦めるしかない。下呂プリンの人気ぶりがよくわかった。
下呂プリンの味を知る人がおられましたら、教えて下さい。
【窓を開けたり閉めたりしつつ、冬の山道を走行】
ここからは割と急ぎで大垣に戻らねばならない。
後輩の「祖父の呼び声」がまだ耳にこだましている。約束の夕方までに大垣につかねばまた心配されるだろう。
ただ、雪がまだ残っているので、油断は禁物である。安全運転を心がけなければ危うい。
私は暖房が苦手で、窓をあけて運転したりする。
冷たい風を浴びると気持ちがシャキッとして気持ち良い。
「寒いです」ともやしっ子後輩がウィーンと閉めようとする。
そこは開けたり閉めたりのせめぎあいである。
【カッチカチの蕎麦】
昼を過ぎていたので後輩が空腹を訴える。
「なんか食べませんか?」
「え、こんなところに何かあるの?」
「まぁこの辺じゃ蕎麦が美味しいでしょう。サービスエリアでもそこそこのものが食べられるはずですから、ササッと食べていきましょうよ」
「うーん、そうしようか」
出てきた蕎麦がこれである。
「ん?カチカチだなぁ・・」
ズズズズズッ
「うん、不味い!!」
カチカチで冷たい上に蕎麦の香りが全然しない代物であった。正直美味しくない。
自分で食べたいと言っておきながら後輩は「不味い」と堂々と宣言して、口直しとばかりにまたコロッケを頬張っていた。
「コロッケは美味い!」
うるせー!!
【「ちえもち」どこ行った?】
ようやく大垣まで戻ってきたのはもう夕方だった。
「いやーお疲れさまでしたー」
「こちらこそ、車ありがとうね」
お互いニコニコで駅で別れようとする。
「あっ!!!知恵餅が無い!!!」
にわかに後輩が車の後部座席をモゾモゾ探している。
座席の下も探すが見つからない。
確かに象山神社でいただいたはずの知恵餅だったが、車のどこにも無かった。
「知恵が足りないから買ったのに・・・これじゃずっと知恵足らずですわ・・・」
【もやしからクレソンに成長した後輩、そして風邪を引いた私】
知恵は失ったが、もやしっ子だった後輩も御柱(おんばしら)とは言えないが、クレソンくらいのたくましさに成長していた。
そして私が風邪を引くというオチがついた。よくよく考えるとこの日、朝に誤って水風呂に飛び込んでいたのだった。おまけに窓をあけて氷点下の風にピューピュー当たっていたのだ。そりゃ風邪引くわと思う。
「もやしっ子」は私だったのかもしれない・・・・
(中部の旅 おしまい)