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超絶料理バトルリアリティショー『白と黒のスプーン~料理階級戦争~』感想

料理対決番組に欠点があるとしたら美味しそうな料理が出てきても視聴者は食べられなないところ。
 視聴者は料理を食べられないから、どちらが美味しいか決められないし大抵見た目はどっちも美味しそうだから、結局良い意味で悪い意味でもどの料理人が勝ってもいいと思ってしまう。

 しかし、そんな料理対決番組の欠点をとある要素をいれることで克服して超絶おもしろ料理リアリティーショーとなったものごい企画がNetflixで配信されている。
 それが韓国料理対決企画『白と黒のスプーン~料理階級戦争~』
 昨年10月に配信されていて、ようやく年末年始で一気見した。

 企画は韓国で活動していたり、韓国をルーツに持つ料理人が100人集まり、様々な対決企画を経て1人のチャンピオンを決めるサバイバル企画。
 しかし、これだけでは冒頭で言った通り料理人が料理をしても「美味しそうだな~」という感想にしかならないがこの企画は階級闘争要素が含まれていて、視聴者が対決を見守る意義を持たせてくれる。

 階級といっても貴族・庶民とかではなく白さじ(=白スプーン)黒さじ(=黒スプーン)に分けられ、その基準は白さじがミシュランや料理コンテストで実績を残して世間から一流料理人と認められている20人の強者。
 対して黒さじはミシュランやコンテストで結果は残していないが、巷で話題のお店のシェフをしていたり、昔ながらの大衆食堂を営む店主だったり、料理研究家・料理系Youtuberだったりと料理界で多種多様に活躍する無名の料理人達で、80人が集まっている。
 100人それぞれ得意な料理ジャンルがあることはもちろんであるが、キャラクター性や価値観が違う。
 例えば、様々なミシュラン料理店で見習いをしていた料理人や、料理漫画に出てくる料理を振る舞う人、給食センターで働くおばさんなど様々。
 黒さじは本名を名乗ることを許されず『〇〇な料理人』等と得意な料理ジャンルや特殊な経歴にちなんだ肩書がついていて、名声やこれからの料理活動発展のために一流料理人20人に挑むという下剋上方式をとっており、この要素があることにより視聴者は「黒さじがんばれ……」「白さじの実力はやっぱりすごい!」と視聴者は闘争感情をのせることが出来るのだ。
 このシステムは画期的である。
 白さじに勝つことで注目してもらい今後の料理活動を飛躍的なものにするために人生を賭ける黒さじと無名の料理人には負けられないと実力でねじ伏せる白さじの熱き戦いが繰り広げられる。

 審査方法も本気で、2人の審査員が己の審査基準で厳正に審査を行う。
 審査員が2人って少ない?とは思ったが、超少数精鋭にすることでシンプルに審査が楽しめるし審査員のキャラも良い。
 1人は韓国の外食産業で成功し、数々の料理コンテストで審査員を行ったり、世界中の美味しいものを食べつくしたいわば韓国のグルメ王ペク・ジョンウォンさんで、第一に『美味しい』という感情を第一に審査する人。
 ふくよかな体系で大口で頬張るから彦摩呂的なグルメタレントと最初は思ってしまったが、料理に関する知識が幅広く、大衆的な視点から高級料理の複雑な味も理解しているため見ているうちに信頼感が右肩上がりになる。
 彼の経営している韓国料理店は日本にも上陸しているので是非行ってみたい。そして、料理を振るまうシェフの前では料理を褒める。

 もう1人は現在韓国で唯一のミシュラン三つ星を獲得している高級料理店『モス』のシェフを務めるアン・ソンジュさんで、韓国で活動する料理人が畏怖し、憧れを持つ、韓国料理界に君臨する最強の料理人である。料理や食材に関する知識を持っているのはもちろんであるが、料理人が作った料理に対してどういった意図で料理を作り、食べる人はどう感じたかというこ創作者と試食する人の考えが一致することと、料理の完成度を重視するとにかくシェフ目線であり、厳しいコメントを言うが同業者である料理人に対してリスペクトがものすごく感じられる。
 料理の意図を的確に見抜き、複雑な味も言語化する力があり、見ているこっちも頼もしいと同時に恐ろしいと感じてしまい、企画に程よい緊張感を与えてくれる審査員である。
 第二対決では目隠しをして試食するのだが個人的には五条悟と同じオーラを放っていた。これ、ほんとうに。
 一流シェフとグルメ王と違ったベクトルの評価方法を持っているため、意見が食い違うことも多いが、どちらもフェアであり、企画をしている期間が約3か月ほどあったため、段々と仲良く審査をしているシーンも出てきて、アットホーム感が出てくる。

 アットホーム感が出てくるのは審査員だけではなく料理人達も。
 一騎打ちだけだなく料理人達の連携が試される企画もあるためドラマチック性もある。勝ち進んでいく料理人は白さじ、黒さじ問わず何故料理人になろうとしたか、この企画に出場しようかなどのバックボーンが語られるため、最初は白さじはヒール感があり、黒さじを応援してしまうが、どんな料理人でも応援してしまうような気持ちになるので、序盤は階級闘争、後半は料理に情熱を燃やす料理人達の死闘と趣旨が変わってくる。

 企画の趣旨が変わるのは、ステージが進むにつれてすべての料理人に応援の声を向けられるような対決になる仕掛けになっているからだ。
 第一対決は黒さじ80人で行い、第二対決で控えている白さじとの1対1の対決に備えて白さじのメンバーと同じ20人にまで絞る。
 第二対決はランダムに食材が指定され、その食材を活かした料理を作る、白さじと黒さじの一騎打ち。ベストバウトは女性中華料理人同士の対決だ。
 白さじは『点心の女王』と中華料理界で圧倒的な支持を受けているシェフ。対して黒さじは韓国の一流中華シェフの一番弟子で将来有望な中華料理人で『中華の女神』と言われている。
 女王対女神の中華料理対決は熾烈を極めていた。

 第三対決では力を合わせて白さじ集団と黒さじ集団で一度に100人の客に料理を振る舞うという対決で、黒さじ・白さじ即興チームで制限時間内に独創的な料理を振る舞う必要があり、チームを組んだ料理人たちは役割を決めて料理を作っていくのだが、エゴがぶつかり合い、連携が取れないことが多く、厨房に不穏な空気が漂い始める。そういう空気が苦手なので、胃をキリキリさせながら見ていてたが、料理人の本質は時間内に料理を完成させ、お腹を空かせる客に料理を振る舞うことなので、エゴでぶつかり合っても時間内に最高の料理を完成させたいという気持ちは同じなので、なんとか料理を完成させていく。

 第三対決で白さじ同士と黒さじ同士の絆を深めると第四対決で待っているのは、白黒問わず好きな料理人とチームを組み一日限定の料理店を出店して売り上げを競う対決になる。
 この対決によりバチバチであった白さじと黒さじが一旦手を組み、次のステージに進めるためには誰を手札に入れるのがベストか、料理のジャンルを超えて創作料理を作ることでお客にどれだけ付加価値を与えられるかを目的にこまでの対決で蓄積させたデータを活かして、料理人との相性でチームを組んでいく。
 白さじは第二対決まではに黒さじに負けるわけがないというスタンスであったが、この対決では全員が強敵だと認め合っており、お互いを高め合い、即興チームならではの創造性に富んだ料理が完成する。

 そして、第五対決がセミファイナルとなり、これまでは復活システムなどがあったが、ここから復活なしの本当の死闘が待ち受けている……
 このステージまで勝ち上がった料理人は既に視聴者はどんな料理が得意なのか、長所はなんなのかを知っているようになるので全員に同情してしまい負ける料理人が出てくると毎回「ここで落ちるか~」と手に汗握る展開がまっている。

 そしてラストは最高のボルテージで幕を閉じチャンピオンが決定した。第二回大会待ってます。 
 そして、なにより日本でもこの企画をやって欲しい。

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