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アジャイルデータモデリングを読んで感じた「実例」の力

2024年の年末、データモデリングの教科書となる一冊が日本語訳されて出版されました。データモデリングに関する日本語書籍は非常に少ないので、大変貴重な一冊です。

元々英語原著でも読んでおり、内容自体は既に知っている状態で読みました。

しかしこちらの日本語訳の魅力は、豊富な国内事例が掲載されていることです。

データモデリングの理論に触れるとき、多くの本や資料ではその基礎や方法論が解説されます。

しかし、実際のプロジェクトでは、ただ理論を当てはめるだけでは解決できない課題に直面することが多いのではないでしょうか。

そのような課題に対して、どのように考え、判断し、解決策を見つけていくのかという「プロセス」に焦点を当てることが重要です。私が「アジャイルデータモデリング」という本を読んで最も感じたことは、この「実例」による具体的な意思決定の過程が、データモデリングの真髄をより深く理解させてくれるという点です。

本書では、理論だけではなく、実際の企業やプロジェクトで直面した課題に対してどのようなアプローチが取られたのか、その実例を豊富に取り上げています。この「実例の力」が、データモデリングにおける知識を一層強化し、現実のプロジェクトにどう活かせるかを教えてくれます。特に、組織やサービスの規模に応じた適切な方法論を見つけるための思考法や意思決定プロセスは、非常に参考になります。

例えば、「株式会社風音屋」さんの事例では、データモデリングにおける具体的な設計課題に対するディスカッションが詳細に紹介されています。ファクトテーブルやページ属性の設計など、実際にデータ設計に携わっている人々がどのように意見を交わし、最終的な解決策を導き出していったのかが丁寧に描かれています。これらの課題には「正解」と呼べるものはなく、その都度状況に応じて最適な解を見つけることが求められます。

たとえば、商品ページにアクセスしたユーザーリストを取得する方法について、設計チームは次のような選択肢に直面します。
商品ページへのアクセスに特化したテーブルを作成するか?
汎用的なアクセス情報を取り扱うテーブルを作成するか?

どちらが適切かは、実際にサービスがどのように使われているか、そして将来どのように拡張されるのかに依存します。このような議論を通じて、設計者たちはどのアプローチが最も効率的かを慎重に選びます。

また、ページ属性の持ち方に関しても、フラット化された横長のテーブルにするべきか、それともJSONなどの半構造化データを使うべきかという選択が提起されます。これもまた、プロジェクトの性質や拡張性を踏まえた判断が必要です。こうした選択肢をどのように評価し、決定を下すかの過程が詳細に描かれており、その過程こそが読者にとって非常に価値のある学びとなります。

このように具体的な事例を通じて、読者はデータモデリングにおける複雑な判断をどのように行うべきか、また、理論だけではなく実際の状況に応じた柔軟なアプローチがいかに重要であるかを学べるのです。これらの実例を参考にしながら、自分のプロジェクトにどう活かすべきかを考えることができる点が、この本の大きな魅力の一つです。



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