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99 教員にとって有意義な研修とは

教員になって2年目の夏、海外研修に行きました。パリのソルボンヌ大学で行われた夏期文明講座に参加したのです。自主研修ですので費用は自費です。

文明講座は3か月の通常講座のほかに短期の夏期講座があります。夏期は4週間の集中講座で、フランス語のほかフランスの歴史や文化、政治などを学ぶプログラムも設定されています。フランス語のレッスンは毎日あり、1クラスは15名ほどです。私は中級クラスになりましたが、4週間でもかなり力を伸ばすことができたと思っています。その他のプログラムでは美術館や博物館を訪れたり、パリの町の歴史巡りをしたり、ロワール川の古城めぐりをしたりしました。文明講座には世界各国から受講生が集まります。寮でともに生活しながら異文化体験が存分にでき、教員2年目の私にとってはこの上なく有意義な研修でした。

文明講座そのものは1か月間ですが、オプショナルのプログラムにも参加し、行き帰りの日程(当時の格安航空券は南周りが主流でしたので寄港地での時間を含めると片道2日以上かかりました)と合わせて40日間になります。夏休みをフルに使った研修でした。

海外研修には研修届を提出し、教育委員会から承認を得る必要があります。当時私の周りには海外研修に出かける教員がたくさんいましたので、研修届は何事もなく受理されました。現在は初任2年目の教員が夏休みいっぱいを使っての自主研修など承認されにくいのではないでしょうか。恵まれた時代だったのかもしれません。

私は英語教師でしたので「英語教師なのにどうしてフランス語の研修?」と聞く人もいました。フランス語は高校生の時から興味があり独学で勉強していました。大学の時も英文学を専攻しながらフランス語を学び続けていました。でも学生時代にフランスに行くのは経済的に困難でした。だから就職して自分でお金を得るようになってから行こうとずっと思っていました。ですからフランス語の研修を受けることは私にとっては必然的なことでした。

それに英語教師だから英語の研修しか受けられないというのも不合理です。理科の教師が英語の研修を受けてもいいですし、数学の教師が歴史の研修を受けてもいいと思います。現に私の受けたのはフランス語の研修ですが、実際に学んだのはフランス語だけではありません。海外で生活することによってしか得られないたくさんのことを学びました。英語教師にとっても役立つことはたくさんありました。

それ以降も私は機会があるたびに海外研修に出かけました。英語教授法の研修もあれば、英語のブラッシュアップ研修もあります。英語教師としてはやはり英語の研修は欠かせません。さらに、ボランティアで中高生の海外研修のアテンドもしました。すべて研修届を出して承認されたものです。

もちろん海外だけでなく、国内でも自分にとって必要だと思う研修は積極的に受けました。大学での研修もあればNGOや民間が主催する研修もあります。そうした研修を受けて強く思うのは、教師にとって有意義な研修とは教師自らが必要だと感じて受ける研修ということです。

教員にとって研修が必要であることは言うまでもありません。教育基本法にも「絶えず研究と修養に励み、その職責の遂行に努めなければならない」とありますし、文科省も生涯を通じて教師が学び続けることを推奨しています。行政が実施する研修もたくさんあります。ただ、A Kaoruさんも書いておられましたが、行政が実施する研修には効果を感じることが少なかったです。自ら希望して参加した研修ではなく校務分掌で派遣されるもの、教職経験や職階に応じて義務付けられる研修などは特に効果を感じませんでした。ゼロとは言いませんが自分が学びたいことと乖離していることが多く、私の研修ニーズに合わなかったからです。

A Kaoruさんの記事↓

(参考までに)
私が調査でたびたび訪れるオーストラリアでも教員には研修が義務付けられています。でもどのような研修を受けるかはすべて本人に任せられています。「オーストラリアでは教員登録制度が実施されており登録を更新するには年に20時間の研修を受けなければなりません。けれでも研修は決められた講習を受けるのではなく、個々の教員が自らニーズを把握し、選択して受けるのが基本です。すべての教員に義務づけられる研修もありますがほんのわずかです。経験年数に応じて一律に受講する講習はありません。さらに、学校長には研修に関わる情報をすべての教員に平等に提供し、公平に参加できる体制づくりが求められています。たとえば、教員が勤務時間内に研修に参加する場合は、授業に支障が出ないよう代替教員を配置するなどの措置を講じなければなりませんし、教員研修のための生徒休業日(student/pupil free days)が年に数回設定されています。

研修は教育省などの行政が提供するものもありますが、大学や民間の研修プロバイダー、教科ごとの研究会などもたくさん提供しています。校内で授業研究や勉強会、メンタリングなども研修として認められます。企業やNGOなどでの職場体験も研修扱いにされます。

こうした自由度の高い教員研修制度ですが、研修に参加した教員にはその意義を証明することが求められています。自分にとってなぜその研修が必要なのか、研修で何を学んだのか、それが実践にどのような効果を及ぼすのかなど報告しなければなりません」

参考資料

いずれにしてもオーストラリアの教員研修には教師の自主性、主体性がとても重視されています。日本でも教師がもっと主体的に研修に参加できるようになればよいのではないかと思います。そうなれば出張で研修に参加し、終わってから「ああよく寝た!」などと言う教員も減るのではないでしょうか。

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