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105 「こんにち輪ノート」の活用

教員だったとき、保護者とやり取りするため回覧ノートを設けていました。「こんにち輪ノート」と名付けたそのノートは学級ノートや班ノートの保護者版のようなものです。

生徒とは毎日顔を合わせますが、保護者と顔を合わせるのは家庭訪問や懇談会、面談の時くらいです。本当はもっと会ってお話をしたいのですが、なかなかそれもできません。そこで始めたのが「こんにち輪ノート」です。生徒を通じて保護者に渡してもらい、自由に書いてもらいました。「保護者は本音なんて書かない」「きれいなことしか書かない」と言う人もいましたが、私はそれでもいいと思っていました。つながりを作ることが目的だったからです。

最初のページには以下のような文章を載せました。2年生の時のクラスです。

みなさんこんにちは輪! 〇年〇組の担任になりました野中しおりです。これから一年間担任としてお子様をお預かりすることになりました。いささかの緊張と大きな期待で新学期をスタートさせました。

生徒たちとは2年目の付き合いですがまだまだ知らないことや見えない部分がたくさんあります。新たな発見を楽しみながらみんなの成長を助けていきたいと思います。

生徒たちは一日の大部分を学校で過ごしています。でも生活の場は学校だけではありません。家庭があり、地域があり、塾やスポーツの世界があります。子どもだけの世界もあります。教科の知識は学校で習得することができますが、人間として成長するためには学校以外の様々な場での経験が必要です。子育ての境界線はあいまいです。様々な人間が様々な場で子どもたちと関わりながら子育てに携わっていけたらいいなと思います。

そのためにはまず周囲の大人がお互いに知り合い、理解し合う必要があると思って考えたのがこの「こんにち輪ノート」です。保護者と教師は特に理解が必要だと思うのですが、十分に理解し合えていないようにも感じます。学校を通して身近な存在になれたのになかなか本音で話ができない、何となく遠慮してしまう、子どもが間にいるので言いたいことを我慢してしまう…  そんな思いをお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

教師としての私はできれば保護者の皆様ともっとお話ししたいと思っています。生徒の指導に参考になることをたくさん得られますし、私自身が教えられることもあります。そのためにこのノートを活用したいと思います。皆様が日頃考えていらっしゃること、学校に対するご意見やご要望、子どもたちのことで気づいたことなど何でも結構ですのでお書きいただければ幸いです。堅苦しく考えずざっくばらんにお書きください。子どもたちとの出会いと同じくらい、保護者の皆様との出会いも大切にしたいと思っております。

「こんにち輪ノート」について

  • お子様から「お願いします!」と言って渡してもらいますのでどうぞ「笑顔で」受け取ってください。

  • 返却もお子様を通じてお願いします。

  • 何を書いていただいても構いません。学校や担任へのご意見やご要望、子育ての悩み、ご家族のこと、ご自身の趣味や特技について、日々思うことなどご自由にお書きください。量も自由です。1,2行でも数ページでも構いません。

  • 記名、無記名、ペンネーム何でも結構です、

  • 順番は私の方で勝手に決めさせていただきます。特に他意はございません。

  • できるだけ多くの方に回したいと思いますので、できれば1週間以内にお戻しいただけるとありがたいです。忙しくてお書きいただく時間がない場合はそのままお戻しいただいても、他の方が書かれたものをお読みいただくだけでも構いません。

  • 子どもたちに秘密のノートではありませんのでお子様の目に触れることを承知でお書きください。お母様だけでなくお父様、おじい様、おばあ様、兄弟姉妹のみなさんなども書いてくださると嬉しいです。

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「こんにち輪ノート」は私が予想した以上の効果を生みました。noteのこの記事を読んでくださっている方にご紹介したいほど率直で素敵な文章がたくさん綴られました。ご両親で書いてくださったり、かつて担任したお兄さんやお姉さんが登場したりすることもありました。保護者相互のやり取りが行われたり、思わぬ使い方がなされました。ノートを手渡すことで親子の何気ない会話が始まったりすることもあったようです。

現在私の手元には10冊以上の「こんにち輪ノート」が保管されています。写真やイラスト、押し花入りのページなどそれぞれの方の個性が出ていて素晴らしいです。外国人のお母さんはローマ字で書いてくださっています。私にとっては大切な思い出の品です。同時に貴重な研究資料です。改めて読み返してみると保護者の気持ちが当時よりもわかるような気がします。私も年を重ねて少しは成長しているのかもしれません。


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