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10 あかりもひとりでさびしかろう
生徒が教室を移動し、だれもいなくなった教室に電気が明々とついていることがあります。そんな時、電気を消しながら頭に浮かんでくることばがあります。「あかりもひとりで寂しかろうしかろう」ということばです。遠い昔に読んだ随筆か何かに登場したことばです。有名な日本人画家が描いた文章だったと思いますがだれの文章か思い出せません。でも、何十年も記憶に残っていることばです。。
「教室にだれもいなくなるときは電気を消してね」生徒にはそう言っていました。係など決めたりしませんでした。気がついた人が消せばよいと思うからです。と言うより何でもかんでも係を決めてその人に任せるということはあまりしたくありませんでした。電気をつけたり消したりすることぐらいだれがやってもいいことです。気がついた人が気がついたときにやるのがむしろ合理的だと思います。でもつけっぱなしのことは多かったです。「気がつく人はいなかったのかな?」「自分が最後だと思わなかったのかな?」「電気なんかどうでもいいことなのかな?」だれもいない教室に電気がついているとがっかりします。
その文章はこんな内容でした。画家がフランスに留学していた時のことです。パリのアパルトマンに下宿していた彼が部屋に戻ろうとするとき、家主のマダムが各部屋をまわっているところでした。そして誰もいない部屋に電気がついていると「あかりもひとりで寂しかろう」と小声で言いながら消していたということです。小さなことだけどすごく胸を打たれたと筆者は書いていました。それを読んだ私も心を打たれました。電気を消す時にこんな気持ちになれるなんて。マダムの何とも言えない優しさを感じます。
必要のない電気はこまめに消す。これは省エネの観点からも推奨されます。でも電気を消す時に「もったいない」という気持ちだけでなく、「あかりもひとりで寂しだろう」という気持ちを持てたら素敵だなと思います。
付記
このエピソードが載った文章についてご存じの方がいらっしゃったら教えてください。