工場建設で町が一変!
熊本に行ったのだからぜひ見ておきたいと足を運んだところがあります。台湾の半導体メーカーTSMCが菊池郡菊陽町に設置した巨大な工場です。
菊陽町は熊本空港の北に位置する人口4万3000人ほどの町です。この地に世界最大手の半導体メーカー「TSMC」が日本で最初の工場を完成させたのが今年の2月。ニュースでも大きく報じられました。私には「どうして熊本に?」という疑問とともに、現地がどうなっているか見ておきたいという思いがありました。今回チャンスがあったので訪ねてみました。車で走り抜けただけなので表面的なことしか見えていませんが、車窓からの眺めに驚かされました。
菊陽町は熊本空港に近い位置にあります。
畑が広がる中を走っているとやがてTSMCの工場が見えてきました。驚くほどの広さです。
すでに稼働している第1工場。
オフィス棟
隣接する土地に新たな工場(第2工場)が建設され始めています。第2工場も巨大なものになりそうです。
近隣にはTSMC以外の工場も続々と建設されています。
のどかなキャベツ畑が広がっていた土地に工場がどんどん建設されているのがわかります。大きな経済効果が期待されるのでしょうが、地域にはどんな影響が及んでいるのか気になります。
道路は整備され、マンションやアパート、戸建て住宅もたくさん建てられています。出勤時ではないので人の姿は少なかったですが、工事用車両など車はかなり走っていました。時間帯によっては交通渋滞も起きているそうで、生活道路が「抜け道」のように利用され、地元の人たちは事故を怖れているようです。道路などインフラ整備はますます必要となるでしょう。土建業者の人たちにとっては「天国」かもしれません。
人口増加の問題もあります。台湾からの移住も含めて人口は増加しており、隣接する合志市、大津町を含めた1市2町の4月時点の推計人口は計14万3746人で、3年間で数千人増えているそうです。人口増加に伴いマンションや戸建て住宅などの建設ラッシュが起き、賃貸住宅も増えています。商業施設も相次いで開業し、ホテルも増えていますが、その一方で人手不足も生じていると言われます。
農地転用の割合は少なくありません。菊陽町では21~22年度の農地転用は約39ヘクタールに上り、それ以前の2年間と比べて2倍以上に増加しています。農地不足はさらに深刻化するとみられており、農業者の間には不安が広がっているそうです。「畑が広がっていた町が一変することには複雑な思いもある」と戸惑いも見せる人も少なくないようです。
さらに、半導体工場では洗浄などのために大量の水を用します。TSMCの新工場でも多くの水が使われる予定で、使ったあとの排水は1日あたり約1万トンとも見込まれているそうです。排水は地下の配管を通って、約10キロ離れた熊本市の「熊本北部浄化センター」に流れ込みます。熊本には阿蘇を水源とする豊富な湧水があり、水道水のほぼ100%を天然地下水でまかなっているそうです。たしかに水道水を飲んでも驚くほど美味しかったです。地下水の枯渇問題や水質汚染などが起きないか気になりました。
白川水源
池の川水源