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袴田さんの無罪判決を聞いて

 袴田巌さんの無罪が確定しました。半世紀近くも拘束され、58年経ってやっと無罪となった袴田さんと彼を支えた姉の秀子さんはどんな気持ちでいるでしょう。死刑執行の恐怖におびえながら長い年月を過ごしてきた袴田さんのことを思うと胸が痛みます。私の想像をはるかに超える辛い日々だったのではないかと思います。

袴田さんの無実を信じ、これまでずっと支え続けてきた秀子さんの以下のコメントが新聞に掲載されていました。

事件の発生から数年間の報道はひどかった。巌を犯人だと決めつけるかのようだった。文句を言ってもしょうがないから、新聞やテレビ、ラジオは一切、見聞きしなかった。

 当時は、警察は正義の味方だ、警察が悪いことをするわけがない、とみんなが思っていた時代だ。報道に恨みも何もない。でも、いまの記者のみなさんも、ひどい報道だったと思っているのではないか。

 最近は、(現在の報道に携わる)みなさんのおかげで、ちょっとはマシになった。直していくのは、今の記者である、みなさんの力だ。

 記者になると、その世界につかってしまうのではないか。中に入って溶け込んでしまったら、おしまい。疑問に思うことには抵抗しないといけない。「上司がそう言うから」ではダメだと思う。

朝日新聞2024年10月9日

秀子さんのコメントはメディアに向けられたものですが、私は自分にも向けられているように感じました。メディアの報道を聞いていた私も袴田さんが有罪だと思っていた時期があったからです。冤罪ではないかと感じたことはあります。でも、多くの報道がそれを打ち消しました。有罪であるかのように伝える報道がほとんどだったように思います。そしてそれを私は無批判に受け入れていました。私も間接的に袴田さんの冤罪に加担していたことになります。報道への向き合い方について改めて自らを戒めました。
 

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