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工科大学という名の総合大学:クイーンズランド工科大学【QUT】(オーストラリア)

調査や研修、旅行で訪れた海外の大学を私個人の視点でレポートしています。

同大学は調査でたびたび訪れました。

クイーンズランド工科大学はオーストラリアのクイーンズランド州にある公立大学で、州都ブリスベンとその近郊に複数のキャンパスを有しています。工科専門学校を前身としていますが、1980年代に複数の教育機関を統合し、総合大学になりました。大学としての歴史は浅いですが、近年飛躍的に発展し、存在感を強めています。「工科大学」という名称を残していますが、文系と理系の学部を併せ持つ国内有数の大規模大学です。

以前紹介したグリフィス大学とはつながりが深く、歴史を遡ると両大学が教員養成の分野で深くつながっており、さらに多くの教育機関が統合されていることがわかります。

同大学には5万人以上の学生が在籍し、留学生も1万人近くいます。法学、教育、工学、ビジネス、クリエイティブ産業、健康などの学部があり、理論と実践のバランスを重視したカリキュラムが実施されています。新たな技術の導入には積極的で、特に工学系の分野では最先端のテクノロジーを駆使した教育に定評があります。

キャリア教育にも力を入れており、実社会で役立つ即戦力の育成を目指しています。100社以上の企業と提携し、授業の一環としてインターンシップを実施するとともに、企業からも講師を招き、実践実務を重視した指導を行っています。提携企業で活躍する人材がメンターとなって学生にアドバイスをする「キャリアメンター制度」は、就職率の高さに大きく貢献しています。これは最終学年になったら提携企業の専門家にメンター(指導者・相談役)になってもらい、キャリアアドバイスをもらうことができる制度です。大学の教員や先輩だけでなく、実際に企業で働く現役の社会人に自分の将来や就職に関する相談をし、現場の意見やアドバイスをもらうことができるのできるので、就職活動のときには有益な支援が得られます。

「工科大学」からスタートした大学なので工学分野に強い大学ですが、それ以外の分野でも先進的な研究と教育が行われています。特に、教育学部は州で最初の教員養成カレッジを起源としており、教員養成の歴史は州で最も長いです。

世界でも珍しい「クリエイティブ産業(Creative Industry)」の学部が設けられていることも特徴のひとつです。クリエイティブ産業とは、人の心に響く作品を創造し、ユーザーや消費者の購買欲を刺激してサービスの利用や商品の購入へと繋げるビジネスです。クリエイターのひらめきや想像力を理論と技能・技術につなげる能力を身につけるとともに、現代社会で必要とされるクリティカルシンキングや問題解決力、イノベーション力を身につけることも大きな目標となっています。クリエイティブ産業の需要は近年急増しており、業界での雇用も飛躍的に伸びています。専門的な職業としては映像技術・デジタル・ウェブ制作、CMやテレビ番組の制作、映画製作(撮影、編集、脚本、カメラワーク、音響、照明など)やアニメーション製作、商品デザイン、アパレル・ファッションデザイン、インテリアデザイン、工芸などが挙げられます。

2007年には同大学に隣接して「クイーンズランドクリエイティブ産業アカデミー」が開校しました。同校は国際バカロレア(IB)のカリキュラムを提供する選抜式の州立ハイスクールですが、クイーンズランド工科大学と連携して教育活動が行われています。

クイーンズランドクリエイティブ産業アカデミーの校舎


キャンパスの風景

正門
キャンパス案内図

大学は学生への手厚い支援を行っています。

学習サポート支援
同上
各種支援サービスのオフィス

支援の広報はトイレのドアなどあちこちに見られます。

カウンセリングサービスのポスター
医療健康サービスのぽスタ―

新入生歓迎のバーベキューも。

多様性への配慮もあちこちに見られます。

エクイティサービス

エクイティサービスはオーストラリアのどの大学にもあります、エクイティ(equity)とは「公平性」のことで、個人の属性や背景に関わりなくすべての人が平等にアクセスし、参加し、結果についても公平性が担保されることを意味します。それを実現するための支援がエクイティサービスです。


先住民ユニット

ユニセックストイレは各所にあります。

子どもを持つ学生のための施設

カフェテリアの一角に授乳等と行う場所があります

ランチタイムのカフェテリア

よく見るとアジア系の学生が集まっていました。多文化共生を目指しながらも文化的な背景が同じ者同士が集まる光景はあちこちで見られます。それが心地よいのであれば無理にミックスする必要もありませんし。

キャンパス周辺にはマンションが次々に建設されています。

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