136 永年勤続表彰なんて私には必要ない
ある日「永年勤続表彰が〇月〇日にあるからね」と教頭に言われました。永年勤続表彰とは、一定の年月続けて勤務し、勤務成績の良好な教員を自治体が表彰するものです。現在は25年ですがその頃は15年で表彰されていました。私の住む県の規定は以下のようになっていました。
教頭は私が永年勤続表彰の対象になっているので当日は表彰式に行くようにと言いたかったようです。私は「行かないといけないのですか?」と聞きました。私は行きたくなかったのです。それまでも該当者が表彰式に行っていることは知っていましたが、表彰式に行く意味が理解できませんでした。
表彰の対象者は「永年勤続し、その勤務成績が良好なもの」となっています。でも 退職しなければ誰でも一様に勤続年数は増えますし、時が来れば対象の年月に達します。また、「勤務成績が良好」というのはだれがどのように判断するのか不明確です。何となく形式的に行われているそんな表彰式に行く意味を私は見出せませんでした。
それに表彰式は授業のある時間に行われます。つまり授業を自習にして出かけることになります。勤務校はその年はいわゆる「荒れ」の状態にあり、生徒の問題行動が多発し、授業も正常に行われていませんでした。教師は生徒指導に明け暮れており、授業を抜け出す生徒に対応するため空き時間も校内を見回る日々が続き、疲弊していました。一人でも多くの教員が対応にあたれば一人一人の負担は軽減します。私は教頭に表彰式には参加しないと言いました。教頭は「僕が判断することではないから」と言って校長に相談するように言いました。
私は校長室に行って校長に私の希望を伝えました。学校の状況からも授業を自習にしない方がいいと言いました。私は校長とは長年の付き合いがあり親しい関係にありましたので、考えを率直に伝えました。「学校教育に貢献したことで表彰される私がなぜ教育長に頭を下げなければいけないのですか?」とも言いました。校長は困った顔をして「まあそう言わずに。表彰はおめでたいことだし、節目でもあるのだから」と私をなだめるように言いました。
「節目? 私は竹じゃありませんけど」そんな憎まれ口をたたきながらも,一方で私が参加しないことで校長に迷惑をかけることはしたくありませんでした。だから最後はしぶしぶ参加を承諾しました。
当日は市内の小中学校から対象者が50人ほど集まり、教育長から一人一人表彰状を受け取りました。記念品としてレザーのカバンが贈られました。
永年勤続をねぎらうことに私は反対しませんし、表彰されることが個人の励みにつながる人もいると思います。でもセレモニーである表彰式は必要でしょうか。また、学校や個人の事情も考慮せず、忙しい中で一律に参列を求めることにも疑問を感じます。経費はどのようになっているのかも不明です。
ちなみに記念品のかばんはすぐに破れてしまいました。