25 たとえ冗談でも...
笑いを取る発言が問題になることがよくあります。冗談で発したことばが冗談では済まされないことも少なくありません。「悪気はなかった」「誤解を招いた」と本人は言うのですが。最近の風潮から思い出されるかつての出来事があります。
正門の近くで部活を終えた生徒たちがたくさん集まっていました。笑い声も飛び交いみんな楽しそうです。そんな中で一人の生徒がカバンに躓いて転んでしまいました。ひっくり返ったカエルのように地面を背にして手足をバタバタさせました。それを見た周囲の生徒は笑っています。確かに滑稽な姿ではあります。「気をつけろ!」「何やってんだよ」「ドジだなー」「どこに目をつけてんだよ」そんな声が飛び交う中で彼は照れながら起き上がりました。お互い気の合った中学生同士です。言われた本人もそれほど気にする様子はありません。私もそこまでならばさほど気にせず通り過ぎたと思います。
でも次に耳に入ってきたことばで足が止まりました。一人の男子生徒が「やーい、身体障がい者!」と言ったのです。私は唖然としました。心が凍り付いたようになりました。多分彼は冗談で言ったのでしょう。笑いを取りたかったのかもしれません。悪気はなかったと思います。いやそう思いたかったです。しかしたとえ冗談であっても言うべきことばではありません。からかいに使ってはいけない言葉です。
私は彼に注意しました。当人から返ってきたのは予想通り「ジョークだよ、ジョーク。本気で言ったんじゃないよ」ということばでした。「冗談でも言うべきじゃない!」と私は強く言いました。理由は説明しなくても本人はわかっていたはずです。彼はバツが悪そうに「すみません」と言いました。
日ごろから差別発言については厳しく言ってきました。でもすべての生徒にそれを理解させ、心にしみこませるのは正直言って難しかったです。上記の出来事も私にその難しさを痛感させました。実際に生徒たちは人をからかったりする際に差別的な発言を平気ですることがあります。障がい者の問題についても道徳など折に触れて取り上げ話し合いをしますが、日常生活の中でそれが活かされていないとよく感じます。無力感に陥ることもあります。通常学級の生徒が特別支援学級のことを下に見るということもないわけではありません。誰かが失敗すると「お前のクラスはここじゃない」とか「支援級に行った方がいい」などと言ったりするのもその表れです。自分の指導力の足りなさ感じながらも、表面的な指導ではなくもっと心に訴える指導をしなければといつも思っていました。