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オーストラリアの学校で教師をするには
大学の教員養成プログラムで教員資格を取得する
オーストラリアの学校で先生になるためにはまず大学の教員養成プログラムで教員資格を取得する必要があります。教員養成については前回の記事に書きましたのでそちらをご参照ください。
教師に必要な専門性を身につける
教員養成では新卒教師として最低限必要な専門性を修得します。オーストラリアの教師に必要な専門性は「教職スタンダード」という形で示されています。2010年に設立された全国組織「オーストラリア教職機構(Australian Institute of Teaching and School Leadership:AITSL)が策定した専門性基準です。スタンダードは7項目で、職能段階ごとの4つのレベルで示されています。
1:児童生徒とその学習に関する知識を有する。
2:教授内容と方法に関する知費を有する。
3:効果的な授業を改革し、実施する。
4:学習を支援し、安心して学習できる環境を設定し、維持
する。
5:児童生徒の学習を評価し、成果を通知する。
6:職能成長に努める。
7:同僚・保護者・コミュニティと連携して専門性を高め
る。
全体は以下の構成になっています↓
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「教職スタンダード」に関する情報↓
教員登録をする
教員養成で教員資格を取得してもそれだけで教壇に立てるわけではありません。教員としての登録が必要です。オーストラリアではすべての教員に教員登録が義務づけられています。登録を管理する機関は州ごとに設置されています。
登録の要件は「教職スタンダード」に示される専門性を有することです。審査で確認されます。犯罪歴等についてもチェックされます。登録は2段階になっており、教員養成を修了したばかりの新卒者は仮登録の扱いで、教職に就いてたあと初任者研修を経て正規登録に移行します。
教員登録は5年ごとに更新します。更新に際してはスタンダードの維持、向上を図るための研修を年に20時間以上受けてることが条件となっています。
教員登録の情報(ビクトリア州)↓
登録更新のための研修を受ける
教師の専門性は教員養成で身につけて終わりというわけではありません。生涯を通じて専門性を高めていく必要があります。教員の資質・能力は養成から現職段階へと継続して形成されるべきであるという認識から、オーストラリアの教員には入職後も研修を通して常に新たな知識と技能の修得が義務づけられています。登録を更新するために年に20時間の研修が義務づけられているのはそのためです。
研修は指定された講座などを受けるのではなく、それぞれの教師が自分にとって必要だと思うものを選んで受けます。ただし、その研修によってスタンダードの維持、向上が図られたことを証明することが求められています。日本のように経験年数に応じて同じ研修を受けるということもありません。
研修は、教育省などの行政機関が提供するものもありますが、それ以外にも大学などの高等教育機関や職能団体、教科の研究組織など様々な機関が提供しています。民間の研修プロバイダーも数多く提供しています。 学位取得や資格取得のプログラム、セミナー、ワークショップ、研究会議のほか、校内の授業研究や同僚との勉強会、メンタリングなども研修として認められることが多いです。近年はオンライン研修もさかんです。特に遠隔地の学校に勤務する教員や時間調整の難しい教員はオンラインでの研修が参加しやすく、充実が図られています。そもそも教師のニーズが多様なのでだれもが同じ研修を受けるのは不合理であるいという認識が一般にあります。
研修を受けるに際してしばしば問題となるのが時間の確保と費用です。それゆえ研修時間を確保するため方策として研修のための生徒休業日(student/pupil free days)が年に数回設定されています。その日は生徒は登校せず教員は研修に専念できます。また教師の資質向上のための予算が政府から配分され、学校長の裁量で幅広く活用されています。
教員研修の情報(ビクトリア州)↓
研修は登録を更新するためだけのものではありません。そもそも教師は生涯を通じて専門性を高めていく必要があります。本来の目的を見失わないことが大事だと思います。