ブータンのインド人労働者
ヒマラヤの小国ブータンはインドと中国にはさまれ、九州ほどの広さの国土に70万人余りの人が暮らしています。GNH(Gross National Happiness:国民総幸福)という独自の指標を基本とした国づくりにより、物質的な豊かさより精神的な 豊かさを重視しており、日本でも「幸せの国」として知られています。
私はこれまでにブータンを二度訪れました。素朴で穏やかな人々、豊かな自然、チベット仏教への厚い信仰などからこの国に大いに魅せられました。GNHは国のあらゆるところに浸透しおり、だれと話しても「私は幸せです」と答えることに驚きました。
その一方で、疑問も抱きました。GNHはだれのものかということです。「幸せ」と感じるのはブータン人だけで、共に暮らす海外からの移民や労働者はGNHの恩恵を受けることがないのではないかと思うのです。
ブータンは毎年5万人近い外国人労働者を受け入れており、特にインド系やネパール系の住民が数多くいます。インドとは国家間の結びつきが強く、多額の経済援助も得てきました。経済、軍事、科学技術、保健、文化など幅広い分野で協力関係にあり、ビザなしで行き来が可能です。ブータン国内で働くインド人も多く、私が学校を訪問したときにもインド人教師の姿が多数ありました。インド軍によって建設されている道路工事の現場でも多数のインド人労働者が働いています。多くが貧しい出稼ぎ労働者だと聞きます。
首都のティンプーから西部のハという地域に向かう道で道路工事現場を目にしました。そこには危険な工事現場で厳しい労働に従事するインド人の姿がありました。近くには彼らの住む家もありましたが、トタン造りの簡素なものでおよそ家とは言い難いものでした。高地の寒さを凌げるとはとても思えません。道路の維持管理も彼らの仕事なので多くがそこでずっと暮らしているようです。子どもたちの姿もありました。子どもたちが学校に通っているかどうかも疑問です。
幸福の捉え方は人によって異なるのでその度合いを一律に測ることはできません。でもインド人労働者を見ていてGNHはブータン国籍を持つ人だけのものという印象を強く受けました。
道路工事で働くインド人↓
子どもの姿も↓
工事に従事するインド人労働者の住む家↓
首都ティンプーの街並み↓ 落差を感じます。