巣立ちの季節の切ないできごと
巣立ちの季節になりました。この季節になると思い浮かぶできごとがあります。
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カフェの軒先にツバメの巣がありました。一羽のヒナが飛び立とうとしています。巣に最後に残ったヒナのようです。ヒナはなかなか巣から出ようとしません。しばらくしてやっと飛びました。でもすぐに真下に落ちてしまいました。「チチッ」と鳴いています。親鳥がヒナの周りをぐるぐる飛び回っています。
私はヒナを助けたかったですが躊躇しました。ヒナは拾い上げずそっと見守るとされているからです。ましてや近くには親鳥もいます。私は静かに見守りました。
歩道のヒナは飛ぼうとしていますがやはり飛べません。何度か挑戦するうちにやっと飛び上がりましたが今度はなんと車道の真ん中に落ちてしまいました。親鳥が鳴きながら車道の向こう側を飛んでいます。ヒナを呼び寄せようとしているかのようです。車道は車が絶えず行き交っており、ヒナをまたいで走る車もいます。私にはどうすることもできず、ヒヤヒヤしながら見守りました。
そのときです。一台の車がヒナの上を走り抜けました。一瞬のことでした。ヒナはあっと言う間につぶされてました。そのあとも車はヒナの上を次々に通り過ぎます。
親鳥は息絶えたヒナの周りをしばらく飛び回っていましたが、やがてどこかにいなくなりました。自然界の厳しさ、動物と人間との共存の難しさ、生きることの大変さなど巣立ちの季節に考えさせられました。