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片目が見えなくても視覚障害者ではない?
片目だけが見えない「片目失明者」は身体障害者として認定されないことがあるという事実を新聞の投書で初めて知りました。
投書のページ↓
投稿者は生まれつき右目が見えない片目失明者ですが、日本の現在の法律では片目失明者は「健常者」とみなされることが多いと言います。その根拠は、「身体障害者福祉法」の視覚障害認定基準にあり、同基準で最も軽度とされる6級の場合、「視力の良い方の眼(め)の視力が0・3以上0・6以下かつ他方の眼の視力が0・02以下のもの」と規定されています。つまり片目を失明していても、もう一方の目が矯正視力で0・6を超えていると視覚障害者として認定されないというのです。その結果、障害福祉サービスなどの公的支援を受けられない場合も多いそうです。
投稿者によると、2016年にNPO片目失明者友の会が会員に行ったアンケートでは、片目失明により、いじめや差別を受けた経験のある人は59%にのぼり、特に義眼や斜視、眼球萎縮、角膜白濁などの容姿に対する偏見や差別的な発言により、精神的苦痛を感じている人が多かったそうです。また、片側視野の欠如や遠近感・立体感などの視覚機能の低下、頭痛や眼痛などの眼精疲労、中途片目失明による心理的葛藤やストレス、見えている方の目に対する失明の不安など、日常生活や社会生活において困難さや不自由さを抱えている人も多くいました。さらに、高額な義眼保守費用や治療費などの経済的負担やのほか、警察官などの職種に就けなかったり、大型自動車免許などの取得が認められなかったりといった職業選択の自由や免許取得に関する社会的制限を余儀なくされていることも明らかになりました。
国は、片目を失明したとしても、もう一方の目が見えていれば日常生活に支障はないとしていますが、片目失明者の現実はそうではありません。暮らしの中でもさまざまな不自由が生じているようです。たとえば、片目を失明すると、視野が狭くなり、立体視ができず遠近感も取りにくくなることから物をつかみ損ねたり、カップにお湯を注ごうとして自分の手にかけてやけどをしてしまったりすることがあります。さらに、ちょっとした段差につまずいたり、見えない側が死角となって人にぶつかることもあります。片目失明者ではありませんが、緑内障で片目の視野が狭まった私の知人でも、視野の悪い側に私が近づいて気がつかないことがあります。失明していれば尚更だと推察します。くわえて、義眼を使用している人はそのことで差別や偏見を持たれることもあり、子どもなどは特に学校でいじめに遭う可能性を否定できません。
国や社会の片目失明者に対する理解を深めるとともに、視覚障害者の認定基準や経済的な支援の見直しが必要であると感じます。