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推し将軍のカクテルを作りました

推しの将軍のカクテルを作ってもらいました

色々楽しすぎましたが記憶は薄れていくものなので消える前にしたためます。
カクテルのことだけ読みたい方は

・血肉を得る推し
・推しとの出会い

の二つは飛ばして読んでください!

※記載内容は個人的解釈の人物造形、ドラマ解釈です


推しについて(フワッと)


まず、私の推しをフワっと紹介します。
鎌倉幕府三代目の将軍、源実朝です。

「右大臣実朝」の名で知られた鎌倉時代の政治家であり、同時に自分の詠んだ歌をまとめた『金槐和歌集』という和歌集を作り、百人一首にも名を連ねるなど和歌の才能に秀でた文化人です。

実朝の家族、親族たち(著名な方々をごく一部掲載)↓

父 源頼朝
母 北条政子
妻 坊門信清の娘(鎌倉殿での名は千世)
母方の祖父 北条時政
兄 源頼家
父方の叔父 源義経
母方の叔父 北条義時
甥  公暁

仲睦まじい平家とは違って身内の粛清と潰し合いが伝統芸のような源氏一族の1人です!

兄・頼家は二代目鎌倉殿でしたが、御家人同士の権力争いに巻き込まれる形その座から引きずり下ろされ、若くして殺されてしまいます。
頼家に代わって三代目鎌倉殿に就任したのが実朝。
後鳥羽院の従姉妹である、坊門信清の娘を妻としました。
和歌の才能に優れており、22歳で私家集『金槐和歌集』を作り上げます。
若くして、兄(二代将軍頼家)の遺児・公暁に討たれて悲劇的な死を迎えました。

実朝の死が大きなきっかけとなって承久の乱が起きたという説もあると聞きます……歴史の転換点なんですよね実朝の死……ううっ……

めちゃくちゃざっくり私の推しでした。
よしカクテルを作るぞ。その前に去年の思い出話させてください

血肉を得る推し

昨年の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』では柿澤勇人さんが実朝役を演じられました。柿澤さんの繊細な糸を紡いでいくような丁寧なお芝居によって画面上に「生きた姿」として動き喋り笑い泣く実朝に毎週テレビの前で絶叫し床を転げ回り、脚本家によって放出される容赦の無い底知れぬ展開によって情緒が最低でも5億回は地の底に叩きつけられて号泣していました。

遡れば2020年1月に、2年後の大河ドラマは北条義時が主人公であると発表され、歓喜雀躍しました。歓喜雀躍と言いたかっただけです。

なぜなら、義時の生没年(1163年~1124年)の中に実朝の生没年(1192~1219年)は悲しいことにすっっっっっぽり収まるので、義時大河すなわち実朝出演当確大河だったのです。あの、大河ドラマが20時に始まった瞬間に「◯◯県知事選挙 誰それ当確」と画面上部に出てきて我々の集中力を削ぎ緊張した神経にいたずらに触れて無用な怒りを引き起こすあのテロップとして流れる可能性があったということです。いやありません。
(ちなみにBSで18時から放送される回だとテロップ表示が無いと伺ったような…)

そして2022年2月17日に実朝の配役が発表されては「ももももも以仁王!!!2012年大河ドラマ『平清盛』の以仁王の俳優さん……!!エッッッこんなに綺麗で儚げ以仁王の実績がある俳優さんが推しの魂を……!?推しの魂に肉体が与えられるんだ……推しが受肉する……」と激しく混乱し、「後鳥羽院や藤原定家との和歌のやり取りとか出てくるのかなぁ…ふふ…」とか「御台所と同じ牛車に乗って歌会にお出かけしたりお花見する実朝が見られるのかなぁ…ふふふぅ…」とかウキウキウキウキし、7月に入ってから大河ドラマ館(鎌倉)で展示されていた「登場人物パネル」に扮装姿の写真が現れたのを見ては「今、この世に、いる…………!!!!」とパネルの前で腰砕けになっていました。
(柿澤さんがミュージカルや舞台で数々の主役をこなされていることはこの時点ではまだ知らず…!)


そして2022年8月29日「修善寺」。

頼家の死、主人を守れなかった泰時の悲痛、善児の死、トウによる仇討ち………「修善寺」はこんな言葉で片付けられるようなものではなく、地獄の中に一瞬の希望を見せた後に叩き落とす展開と緊張、迫力に満ちた演出と脚本に、顔も情緒も涙でぐちゃぐちゃの状態で最後、雨の中事切れる善児と「つづく」の文字を見つめたのでした。

次の瞬間。
予告編で突然「オラッこちらがおまえの推しだよ!!動くよ!!!」と「動く源実朝(本役)」を提示され、本編の凄まじさに咽び泣いていた私は悲しみのどん底にありながら「動く実朝」に三角絞めをくらい、パニックに陥りました。
文章や文字や和歌や俳優さんのお写真から薄ぼんやりと虚像を作り上げることしかしていなかった頭は、一日に許容できる推しの量を予告編の15秒であっという間に超えてしまったのです。

秒でギブです

だって映像になってる実朝って見たこと無かったのだもの……(あったかもしれないのだがそこまで私が追いかけていなかったというモニョモニョ)

そこから毎週のように「うぅっ実朝の人生ハードすぎだろ…誰も信じられない…」「がんばれ実朝…!」「健気だな実朝…」「千世様にはまじで優しく接して下さい!!」「泰時おま…おまえ!!!でもそうなるよね…」「実朝…!!!」「ゥワァーー遂に来てしまった公暁…!」と毎週のたうち回るハッピー実朝ライフを送り、ついに11月末に八幡宮の大階段で牡丹雪と共に実朝が失せてしまってからは「推しは800年前に亡くなっている、分かっているが、今年もまた死んだんだ…また実朝は28歳(数え年)までしか生きられなかった……」「しかしめちゃくちゃ美しかったな……最高だった……あんなに美しく死ぬの実朝……」「でも生きて欲しかった……」「しかし若くして死んでこそ実朝……」と無限に泣いていました。

推しとの出会い(フワッと)

中高生のころには恐らく永井路子の『北条政子』で実朝を知っていたのと、母から「昔学校の先生が、「大海の」ほど情景がありありと浮かぶ歌は無いと思う」って言ってた。すごいよね「破れて砕けて裂けて散る」んだよ!と話していたところから興味を持っていた気がするのです。
そのまま何となく太宰治の『右大臣実朝』を読んで、薄っすら好きになり、かと言ってそこから読んだ本から実朝像を自分の中に落とし込むでも無く「どこが好きなの?」と言われても「うーん…なんかこう…儚いところ……」と長考の上ぼんやりした回答をして相手を白けさせるレベルの「好き」でした

今も正直、好きとは言うものの勉強中なので、実朝の小説や書籍にこれからどんどん出会い実朝を吸収していきたいなという所です…!


さてそんな己が、少しずつ文献をあさり、僅かながら知識を得て、人様にカクテルを作って頂くほどの情報をバーテンダーさんに提示できるのかという、これはそう試験なんですよね(急ハンドル)


カクテルを作ってもらおう(準備)

ソワソワしながら店舗に入り、イメージカクテルを注文したい旨を店員さんにお願いします。

しばらくすると、己の実朝への愛情を試される試験、小論文テストと言っても良い用紙がおもむろに配られます。(テストではない)
(初めての来店ですと伝えたところ、記載してほしいことを丁寧に説明して頂けました)

記載内容は

1ジャンル・作品名
2カクテルにして欲しい人物の名前
3性別・年齢
4身長・体格
5イメージカラー
6イメージモチーフ

そして

7性格
8キャラクターの好きなところ

(私は吾妻鏡の実朝と太宰治の『右大臣実朝』の実朝(関連して『駈込み訴え)『鎌倉殿の13人』の実朝にそれぞれ好きな要素があるので、この度は好きな要素を都合よく抽出し解釈し、俺の考えた最強の実朝として提出することにしました)

とりあえず、本題は「性格」「好きなところ」だと思い、
ざっくり下記の感じで書きました。

性格

  • 穏やかで皆に対して優しい。好き嫌い問わない。

  • 権力者の子である自覚と素質がある(ナウ◯カみたい)

  • 和歌の才能が秀でている

  • 後世に強火担が多い(佐藤茂吉とか正岡子規とか太宰治とか)

  • 物事の好き嫌い(線引き)がハッキリしている。でも言わない

  • 相手の痛みを引き受けすぎてしまう優しさがある

  • 兄を押しのけて鎌倉殿の座についていたことに感じる絶望、後ろめたさ、本来この地位につくべきだった甥への途方も無い悲しさと同情を抱える

好きなところ

  • 権力争いの中にありながら、真っすぐで純粋で清らかな心を保ち続けているところ(良くも悪くも)

  • 叔父さん(義時)に精神的に追い込まれても絶対折れないメンタルの強さ

  • 妻をとても大切にしているところ

  • それとは別に、恋い焦がれていた従兄弟(泰時)がおり、言動ではなく和歌でそれとなく想いを告げたいじらしさ

  • 仄かな恋に破れた後は、従兄弟を政治的パートナーとして支え合っていく方向に切り替えるところ

  • 甥が自分を殺そうとしているのを目の前に、笑顔でそれを受け入れて死んだところ。キリストっぽい(死の受容もだけど、太宰治『右大臣実朝』の実朝と公暁は『駈込み訴え』のキリストとユダに対応するというところも踏まえて)

20〜30分で書きます。緊張で誤字脱字がすごい


書き上げるとスタッフさんが回収。あんな感じで良かったかなぁとソワソワしながら、カクテルが出来上がるのを待っている間にテーブルに落書きをしたり
(テーブルの全面に紙が貼ってあり、据え置きのクレヨン等で落書き可でした)

ドラマに出てきた和歌を書いてニヤニヤする
浮かれポンチ


実朝の論文書いてるあの先生方にカクテル作って欲しいですねキャッキャウフフとか喋っていると


たたずむ右大臣アクスタ

すごいのが来てしまった

桜色と紫色の淡い…朝焼けがグラスの中に。淵には白いオシャレな粉が…おそらく雪に見立てて下さったのだろう…
このビジュアルで既に興奮してしまいました。
この時点で得られる情報は「朝焼け」「雪」のみです。ここから恐らく怒涛の推し解説が来るのです。
事前調査()で解説音声の録音が不可であると認識している我々はバーテンダーさんか口を開くのを待ってペンを構えました。

一言一句、推しの説明を聞き漏らさず書きとめるために…


↓ 以下、バーテンダーさんの解説は「」で書いています。

グラス

まずはグラスの説明から。持ち手の螺旋が印象的です。

「螺旋は鎌倉の海の、波の形を表せればと思って選びました」
「紐で例えると、まっすぐよりも、ねじりあげた紐の方が強度が高いことから、辛い世に生まれても強く生きる実朝さんの姿、力強さをイメージしています」

ンフッ(ボディブロー)
ありがとうございます

グラスの淵

グラスの淵に白い結晶が控えめに添えられています。きれいーうふふ
これは「スノースタイル」といい、カクテルグラスの縁に塩や砂糖を載せる手法だそうです。めちゃくちゃオシャレだな……なにそれ…

提出した書面にイメージモチーフ『雪』と記載したので、それを表してくださいました。
かつ、実朝を考えて「塩」をチョイスされたとのこと。
曰く、
「塩=海=鎌倉の海」
「塩の辛さはそのまま、実朝の人生で得たつらさや痛みを思わせます」

アァ………そうなんです………色々大変なことあったんです実朝………ハイ……
そして生涯で一番痛かったろうと思われ、死に至ったその日こそ
「『雪』の日」なんですよねふふふ……

ご覧、朝日に雪が輝いているよ…ふふ…

お酒の色

(筆記忘れたので完全に私の記憶です)
夏の朝焼けの色……と曖昧すぎるオーダーをしたのですが、優しい紫と桜色が上品に重なり合っていて、色合いがまさに朝空のようです……実朝って、特に鎌倉殿の実朝って朝か夜かで言ったら朝かな?というイメージなのと、実朝自体が「境界線に立つ男」「あわいの人」「たゆたう人」って言われてるじゃないですか……まさに夜から朝になっていく瞬間に、由比ヶ浜の海と浜の間、波打ち際に一人で立っていそうな感じがして……(早口)

お酒(上部)

『六(ROKU GIN)』
https://www.suntory.co.jp/wnb/rokugin/#

ボトルがなんか…カッコイイ!いかつい!六角形!名前に倣ったデザインなのでしょうか。

日本産のジントニックで、桜や柚子の華やかな香りが印象的なお酒。飲んでみると山椒がピリッと効いてアクセントになるそうです。

さて、こちらも曰く、

「華やかな香りは実朝の、皆に振りまかれる平等な優しさ」
「山椒の辛味は、優しさの中にも生まれながらの為政者としての素質、強さ」
「妻を大切にしたい気持ちは強く持っていて、それとは別で従兄弟への仄かな想いを言動ではなく和歌にそれとなく託したということなので、和歌=季語=四季と想起して、四季の要素が入ったお酒をチョイスしました」
「なお華やかな香りと山椒の辛さのコントラストは、従兄弟への恋に破れた後も、しっかり切り替えて政治的パートナーとして進んでいく心の強さでもあります」

ヒィヨォォォォ………………………
四季折々の実朝…森羅万象の実朝……そして生まれながらの為政者、頼朝の子である実朝、政治家なんです実朝…優れた政治家なんです……
恋もしていたんです、でも破れても強く心を整えて切り替えられる人なんです、実朝はすごい子なんです……(号泣)

あと偶然なのか、『六』ボトルのセンターに桜花のデザインが施されているので、実朝が泰時に送った和歌「春霞 たつたの山の桜花 おぼつかなきを知る人のなさ」じゃん………………オイ…………と思うなどしました

お酒(下部)

『PASSOÃパッソア』

https://rcjkk.com/passoa/

パッション・フルーツを使ったリキュール
甘くて爽やかな味わい。フルーティ。

「パッションフルーツというと、一見楽しげで、情熱的だったり、明るく見えますよね」
「実はこの果物はキリストの受難を表しています。花の形状がキリストの十字架を想起させると言われていて……」

ブェッッ!?


「甥に殺される時にも笑顔を向けて死を受け入れた。そこにキリストっぽさ
を感じたということなので」

ヱ、ゑ、ちょっと待って

「なので、キリストの受難ですね。甘く優しい香りを持ちながら、最後まで人のために生きた、他者を受け入れ続けたという部分をイメージしました」

ギィ

ワァーーーーーーーーーーーーーーー

ああああ

ああ

ああああ

待って無理(メモするペンを放り投げる)(頭を抱えるオタクの図)
好物がすぎる……

マドラー

金色の六枚の花弁を模した金色の繊細な作り。
実朝モチーフの「桜」もしくは「梅」を想起できれば、と添えてくださいました。

解説は以上です。めちゃくちゃ丁寧に説明して下さいました。私は飲む前にライフがゼロになりました

写真を撮るぞ
もっと撮るぞ
(アクスタ、ポスカはフォロワさん
(Twitter:@lz9x5 さん)より拝借のもの)
左側のカクテルはフォロワさんの「実朝」。
同じ人物を想定しながら、人や書き出す言葉で
こうも別の物が出来るのとても面白いし、
実朝の無限の可能性を感じる(ガンギマリの目)


推し(を模したカクテル)を飲む

興奮と動揺に白目をむきながら推しを飲んでみました
(酒の知識皆無なので食レポ(?)が壊滅的です許せよ)

混ぜずに頂く。
香りはなんかめっちゃフルーティ、たしかに口に含んだ瞬間、華やかな花々に鼻腔が満たされていくよう。豊かさ。
そして油断していると山椒の辛さが来る。甘いだけじゃないんですよ実朝は、うまれながらの為政者なので……偉い人なので……結構はっきりしているので…

次に、ちょっと混ぜて下部分を飲んでみる
甘い。とてもパッション。
南国の強いフルーツって感じだ。かつ大変さわやかだ。これが受難って、名前と味わいのギャップが激しすぎませんでしょうか

華やかだけど辛くてさっぱりした実朝→甘くてさわやかでフルーティな受難の実朝

やばい

しっかり混ぜて飲むとパッションフルーツがかなり強いので、結局実朝の人生って最後に公暁に暗殺されて幕を閉じるので、それを表しているようだ……口の中がパッションフルーツだ…パッションなのに八幡宮の大階段だ、牡丹雪の降る中でパッションフルーツを味わっている心持ちだ…………

やっぱり最後は公暁なんだ!!!(背負い投げ)

時折グラス縁の塩(雪の日……………)に舌が触れてほんのりしょっぱくて、それでパッと意識が振り戻される感覚が楽しかったですね……毎年雪が降るのを見る度に横死したかつての鎌倉殿を思い出して袖を濡らす御家人の気持ちを味わえました

はあ…………

たのしかった………

パッと出されたオーダーに対してすんごい解像度のお酒を提供してくださる手腕、宮廷ソムリエかな?と感動しきりでした。
言葉で得た情報を物に表すことのできる方々ってすごいよね……

キャラ単独はもちろん、少し価格は上がりますが、カプとかコンビでのカクテルを作ることも可能という情報を得てしまったので、これはまた来るやつだな……と思いつつ、心地よい酩酊感にスキップしながら帰路につきました。

本当にありがとうございました。
オタクたちもぜひ行って自分たちのカクテル作ってテーブルに泣き伏してください!!!

感謝せずにはいられない
https://inf.fem.jp/
素敵な時間をありがとうございました…!

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