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ストレイチルドレン 考察&感想日記
2024年末に『ストレイチルドレン』というゲームを買って、今もゆっくりちびちびやっています。まだクリアしてはいないけど、なんとなくゲームの後半に入っているなということはわかるので、今の段階でいろいろ思うことを書いておきたいです。
クリアしてしまうとまた違った感想になると思うからです。
◆ストレイチルドレンとは
もう知ってるという方も多いかと思いますが、念のため。
ストレイチルドレンは子どもとオトナの世界に迷い込んでしまった主人公が、父親を探して各地を巡るRPGです。子どもたちはどこかにいる大人の作った規律に従って暮らしており、オトナは怖いモンスターになって主人公に襲い掛かってきます。
「大人」は子どもたちにルールを課す「王様」で、子どもたちから尊敬され敬愛されていますが、「オトナ」は道中問答無用で戦闘になるので、これを倒すか成仏させて先へ進んでいきます。
開発元のオニオンゲームスは、初代プレイステーションで「moon」を作ったラブデリックの後継なので、このゲームもいわゆる「ラブデリック系」と言っていいかもしれません。
ストレイチルドレン
RPG『ストレイ チルドレン』公式サイト #ストレイチルドレン
◆『moon』と結構関係ある
私はmoon自体は初代プレステ版のソフトとプレステ2を持っている(下位互換がありmoonを今も遊べる)ので、switch版は買いませんでした。
ここでのmoonとの比較はおぼろげな記憶の中の初代版との比較になります。
初代版とswitch版で変更箇所があるのかどうか、知らんけど。
ラブデリックの流れをくむオニオンゲームスは「過去作を知っていればクスッと笑える」を狙ってキャラクターを使いまわしたりすることがよくありますが、今回のストレイチルドレンにも同じようにこれまでの作品のキャラクターが出てきます。
MillionOnionHotelのキャラクターとかも出てくるので、
「内輪ネタだろ」
と思ってしまうか
「あっこれはwwwww」
となれるかはかなり評価に影響しますよね。
過去作……というか、かなり『moon』の続編に近い。
1/24時点で未クリアですが、「moonの世界の続きなの?」と思いながらプレイしています。まずは良くも悪くもここが評価の分かれるポイントかもしれません。
「あっこれ懐かしい!(嬉しい楽しい!)」
という人と
「何これわけわからん!(受け入れられない)」
という人が出て、遊べるユーザーを選んでしまいそうです。
◆オッサンが作ってるなぁ~
ダジャレ、おっさんギャグ、昭和のノリが満載。
昭和の時代に許されたけど現在ではギリギリアウトかセーフかの、ギリギリグレーのところをいっぱい狙って組み込んでいる感じがします。そこが「一周回って新しい」になってない。
ファッションなんかは「レトロかわいい」とかで、私が見ると「あー昔見たわ~古いわ~」と思うものが、それを見たことない世代に「新しい!かわいい!」とか受け入れられていますが、おっさんギャグは「オッサン構文」と言われてネタにさらされたりして「笑えない」に分類されていたりします。
そんな雰囲気をこれでもかと言わんばかりに詰め込んでいるので、ここでも楽しめるユーザーを選んでいるのではないかな、と思います。
……私?
私は絶賛してますよ、大好きです。
美味しくいただいていますwwwww
◆観察力・推理力・想像力・文脈を読み取る力……知識
ここが一番ユーザーが試されるところです。
敵のオトナと戦うには2通りあって、一つは「倒す」、もう一つは「成仏させる」です。
倒すのは、鈍器で殴って倒します。
成仏させるには、そのオトナが「かけてほしい言葉」を「かけてほしい順」にささやく必要があります。
この成仏がなかなか難しい。
ゲームのしょっぱなから記憶力・観察力が試されます。そして、そこから想像して推理して……。
記憶力や観察力の例で言うと、1章の最初に出てきたあるキャラクターのセリフが3章に出てくるオトナを成仏させるヒントになっていたりします。ヒントを教えてくれるキャラクターには話しかけないまま進むこともできるので、「いっぱいキャラいるしどれに話しかけたかわからん」となってスルーしてしまったら、ノーヒントで成仏させなければなりません。
他にも、1章あたりで拾った汚いガラクタを持ってないと、4章だか5章だかのオトナは成仏させることが不可能になってしまいます。
想像と推理は、オトナの話を聞いてあげながら(戦闘中に攻撃を受けながら!)、そのキャラクターがどういう言葉を話してほしいのかを読み取っていくということです。もし自分がそのオトナだったら、どういう言葉をかけてほしいのか……?ということを想像して言葉を選びます。失敗したらまた一から選択しなおしです。
これだけなら、「やり込み要素すごいな、全部メモしておかないと」となるのですが、それだけで済まないのがラブデ系のラブデ系たるところですよ。
知ってた?
私は知ってましたwwwww
この他に、知識がないと成仏させられない大人が結構いるんです。
例を一つ挙げてみます。
「SOS」という単語が成仏のヒントになっているオトナがいます。
こっちのけんとさんの「はいよろこんで」の歌が大ヒットしたので、
「SOS」
が
「トントントンツーツーツートントントン」
であることを知っている人は今は結構多いかもしれませんね。
こんな感じで「これ、モールス信号ネタやな!」みたいな「知識」がないと解けないヒントがたくさんあります。
「そんなんすぐわかるやん」
というかた、円周率がヒントだった場合、調べずに小数点以下何桁まで言えますか?
12桁言える?
私は言えませんでしたwww
多くのオトナには元ネタがあり、元ネタを知っていればそれなりに答えは見つけやすいです。少なくとも、答えにたどり着くヒントが自分の中にあるからです。
そして、その元ネタをチョイスしたのがオッサンなんよ。
私はおそらくその元ネタが最も刺さるピンポイントの世代なので、最大限にこの楽しさを受け取れているのではないかと思います。
逆にそれ以外の世代の人が難しかったり理解できなかったりするというのも充分わかります。
◆くるくるルーレットはプレイヤーのレベルアップ必須
最初は敵のオトナを一切倒さずに成仏だけさせて進められないかと思ってやっていたのですが、こちらが成仏の手順を踏んでいる間にもオトナはお構いなしに攻撃してくるので、聖フェニックスばりの無抵抗主義を貫いてプレイするのはかなり厳しいことがわかりました。
ここまで書いた部分ですでに察している方もおられるかもしれませんが、これ多分1周クリアしただけじゃ完クリできない……。だから初回プレイ時にはいろいろ情報を集めておき、2週目以降にやりたかったプレイスタイルをやればいいんじゃないかな、と思います。
というわけで、ガンガン攻撃して主人公のレベルアップを図ります。
序盤は回復アイテムの入手がほぼなく、しかしセーブはできてしまうのです。さらに、セーブスロットはひとつのみで一度セーブしたら一つ前のセーブに戻るなんて生易しいことはできません。
敵の攻撃ターンにできるのは回避のみ。こちらの攻撃はくるくるルーレットを目押しで当てます。
つまり、主人公がレベルアップしようとしたら、必然的にプレイヤー自身がレベルアップする必要があるのです。
おかげさまで私は今では連続攻撃4回(MAX)まで当てられるようになったけど、ここまで来るのは大変だった……!
ちなみに、武器を持ち換えたらくるくるルーレットの当たり判定の部分の場所や大きさが変わったりして、また指先で覚えなおしです。
強制イベントでも突然ルーレットが出てくることがあるので、油断も隙もありませんよ。
◆疲れ切ったオトナが子どもを支配する
敵としてあらわれるオトナはみんな心の中に何かを抱え込んでいます。そんなに大きくないモヤモヤの場合もあるし、ものすごい闇の場合もあります。敵だけど、その敵もまたナニカに疲弊を強いられていてそのやりきれない気持ちを子どもにぶつけてくるのです。自分の頭の中で作った自分ルールで子どもを縛り、子どもはそれでも「大人になったり大人に会えること」を夢見て頑張っている世界なのです。そして、結局子どもが憧れている「大人」もまた「オトナ」の一人なのです。
そのナニカは、多分現代社会なんじゃないかなぁ。
頑張っても頑張っても報われない氷河期世代の私のような人間が、オトナになって子どもに「成仏させてくれ」って縋ってきているんじゃないかと考えると、薄ら怖い話です。でも、その社会の歪みをゲームにしたものがこのストレイチルドレンなんだと思います。
……まだクリアしてないので、ホントのところどうなのか、知らんけど。
◆現代社会への警鐘……と見せかけて全力でくだらないものを詰め込んでる可能性
そういう社会の歪みとか、毒親とか迷惑マナー講師みたいに自分ルールを作って他人にも押し付けて、それを守ることが正義だと信じて疑わない大人と、それを片っ端から成仏させてまわっている主人公と言えば「やさしい世界」だの「子どもの心を失わないこと」だの、それっぽいことをテーマにしていると言えなくもなさそうです。
ただ、「表向きそういうテーマと見せかけて、全力でふざけている」という可能性も捨てきれないんですよね。「高尚なテーマを取り扱うこと」と「面白さ」は別で、ゲームとしては面白くなければ売れませんし。
「人を笑わせる芸人さんは、笑わせたいところでは自分は絶対に笑わない」なんてことを聞いたりしますが、それに近い感覚で作られているゲームなのかなぁ、と思うんですよね。志村けんさんとか、番組の中ではめちゃめちゃふざけているし、くだらない話もいっぱいしたけれど、それを真剣に考えて作っているから見ている側は笑える、みたいな。
過去作のキャラを出したり内輪ネタをいっぱい披露して、持ってるものを全部出し切って「ほら、面白いでしょ」と真面目な顔をして差し出しながら、裏ではこっそり笑っているんじゃないかなぁ、とかも思ったりしています。
私も、手のひらの上で踊らされている……!
◆どーにもならん時はなるようにしかならん!
今1週目をプレイしながら
「オトナを一人も倒さず全部成仏させないとTrueEndが見られないのかなぁ」
と思っているのですが、この文章を書いている間に、もしかするとそんなことでは全然物語は分岐しないのではないかと思えてきました。
社会に押しつぶされ疲れ切っているとはいえ、子どもに当たり散らして攻撃してくるいい年した大人を、子どもがダメージを受けながら反撃もせず助けてやらなきゃいかんのか。そんなことまでしないと真エンドが見られないとかある???
過去作のmoonでも、LOVEを全部キャッチして最大までレベルを上げて月へ行ってもTrueEndには到達しませんでした。TrueEndがあることさえ知らないまま終わって、実際にTrueEndを見たのは10年以上経ってからでした。結局そこへ到達するために必要なのは、すべての根本に目を向けることとか、今なぜこうなっているのかを考えて選ぶとかであって、開発者が敷いたレールの上を歩くことではないんじゃないかと思えるのです。もしかしたら、
「あ、TrueEndね、ちょっとその辺に隠しておいたからね」
みたいな感じでポイッと置いてあるのかもしれません。
人助けをしたから、こっちから攻撃しなかったから、高尚な行いだから……ということこそ自分で自分に課した枷になっていて、プレイしながら自分もオトナの側になって自分ルールを守っているだけの生き物になっているのかもしれないな、とちょっと思えてきました。
とりあえず今のところ一人成仏させられなかったオトナがいるので、TrueEndは見られないかもしれません。じゃあ今すぐやめてまた一からやり直しなのか?というとそうではなく、まだまだこの先に隠されているしょうもないものをいっぱい見つけてやれるところまでやってみようって感じです。
こういう、あれこれ考えさせられるところがこのゲームを楽しむ秘訣の一つなのかもしれません。
◆開発元が言いたいことはmoonとあまり変わらないと思う
ストレイチルドレンの評価をチラッと読んでみたのですが(ネタバレには絶対触れないようにして)、概ねかなり低い評価だということがわかりました。上にもさんざん書いた通り、世代とかギャグとか操作性とかレトロ感とかかなり評価の分かれるゲームなので、低い評価をつける人が多いのもわかります。
しかし、「moonはあんなにほのぼのとした世界観がよかったのに、ストレイチルドレンではそれが感じられない」という評価には私はあまり賛同できませんでした。
ストレイチルドレンがシュールな世界観なのはその通りですが、moonのシュールさもなかなかのものだったと思います。
moonで勇者が倒して回ったモンスターはざっくり切られていたし、勇者はパンツかぶってたし、キノコの森ではフローレンスが幻覚のキノコ食べまくってるし、パン屋さんは食パン○ンだったしね。
ストレイチルドレンの方がオトナとの戦闘や演出のサイケデリックさは増したものの、根本的に伝えたいことはmoonと同じではないかと思うのです。
反抗期の大人が作った、「王道」と呼ばれるものへのアンチテーゼ。
ユーザーフレンドリーなもの
操作性のいいもの
放っておいても勝手に強くなるもの
無駄なレベルアップが必要ないよう調整されたバランス
勇者が正義
「そんなものはなくても面白いものは作れるし、ストレイチルドレンは面白い」
言いたいのは、そういうことなんじゃないかなぁ。
今は「放置系」「キャラはガチャで引く」「最初からレベルが高い」みたいなゲームも大量に見かけるようになりました。
ゲームユーザーの人口が増えた分、ライトユーザーからヘビーユーザーまで全員の満足度を満たすゲームを作るのはきっととても難しいと思います。
ストレイチルドレンが目指したのは、そういう全ユーザー向けのゲームではなくて、「刺さる人には刺さる」コアユーザー向けのゲームなんじゃないかな。
少なくとも私は「ストレイチルドレンというゲームは誰に向けて発信されたメッセージなのか」「一番伝えたいことは何なのか」みたいなことをプレイ中ずっと考えています。
ただ毎日のルーティンのようにガチャをひいてデイリーイベントをこなして……というゲームとは一線を画す「プレイそのもの以外の思考」を非常に楽しめるゲームだと思うのです。
◆最後に
とここまでつらつらと書いてきましたが、クリアした後にこの感想がどのように変化していくのか自分で自分に大いに興味があります。
途中で書いたように、全部制作者の手のひらの上で転がされているだけかもしれないし、逆に想像よりもっと深いテーマが隠れているのかもしれません。
クリア後にまた感想を書けたらいいなと思いながら、最後までしっかり楽しもうと思います。
ほなまたね