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【小さな物語】夏の蜜柑…"お彼岸に添えて"

私には
今で言う”いたこ”様とか
降霊術師・霊媒師とか言う

特殊なお仕事が出来るおばあちゃんがいました

小さい頃から
よく人の出入りが多く

必ずお客様が見えると
大きな大きなお仏壇の前に
蝋燭とお線香が焚かれ

おばあちゃんが
何やらいつもと違う顔付きで
一心不乱にお経を唱え出し

何か
得体の知れないものになりかわります

お客様がメモを取りながら
私の知らないおばあちゃんと会話を始めます

いろいろと奇妙な会話をしている姿を
いっぱい いっぱい
見てきました

まだ小さかった私は
そんな情況が
少しも不思議なものに思えなくて

いつも、障子戸の影で
おばあちゃんが
普通のいつものおばあちゃんに戻るまで

正座をしてじっと待っていました


おばあちゃんは
私によく

"大きな事故や災いに
出逢わない様に
必ず救われるように

神様にお願いしてあるからね…"
と、話してくれました

そのお陰で?
健康な体と命で日々元気に過ごしております

でも…
心の傷はなかなか消してもらえない様です

それも消してくれるように
お願いしてくれたらよかったのに…


そんなおばあちゃんが
よく私の夢の中に出てきて

いろいろ伝えてくれました
特に
食べたい物やお菓子等を
私にしっかりと!語って帰ります

翌朝、実家に電話をして
仏壇の状態を聞いてみると

やっぱり
お仏壇のお供え物がなかったり
お花も枯れかけている
なんて事が度々でした

おばあちゃんは
おなかが空くと
私の所へ尋ねて来てくれるのだと…
確信しています

いつも
お華が綺麗に飾られ
お供え物がいっぱい

おばあちゃんのお仏壇は
幼き私の
夢の様な、おやつの宝庫でした

そんなおばあちゃんが
真夏になると
冬の果物だったみかんを
山ほど買って

”ケプッ”と、しながら食べだします
母には内緒で
小さい私にも
よく分けてくれました

おばあちゃんの手から渡される
夏の蜜柑は
私には特別なものでした

母に内緒で
おばあちゃんと一緒に食べる
"夏の蜜柑"

そろそろ…
夏の蜜柑を食べに
おばあちゃんがお出ましになる頃です

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長月の
過ぎゆく時を惜しむれど
懐かしき手に
蜜柑がひとつ
。.::・'゚☆。.::・'゚★。.::・'゚☆。.::・'゚

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