![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/148717092/rectangle_large_type_2_44dd377fbb00c7b17e5db5dd8e12fab7.jpeg?width=1200)
【小さな物語】。.:*:・'゚☆。.:*:・'゚姿無き 声無き声に逢いたきと 想う気持ちが結ばれし時。.:*:・'゚☆。.:*:・'゚
遥かな記憶から、不思議なお話をひとつ…
本来、お寺に従事する者が言葉にしてはいけない事なのかもしれませんが
怖い!とか
“私は見た!!”とか
興味本位や物見遊山な心では語れない不思議な体験を静々と、綴らせて頂きます
ある年の瀬…
広い、広い、お寺の中に併設された搬送式の室内墓地
一階の本堂前に
私の担当する“参拝受付”が有りました
それは
受付に就いた最初の暮れ
冬の寒い夕刻でした
外も薄暗くなり
正面玄関を灯し
いつもの様に片付け準備に差し掛かった頃…
上下に黒い服・黒い帽子を纏った初老の男性が参拝に来られました
受付には、私一人でした
通常通り、参拝カードを出されたので
カードリーダーを通し
受付専用PCから参拝の準備をして
3階にお通ししました
【基本説明1:"御厨子"と言う箱に納骨されていて
その箱を、参拝カードで呼び出し
個々の参拝所に搬送・セットされます
正面から見ると
ゆったりした参拝所は
自動式の大きな扉が
左右に開閉して
両脇に花瓶花、故人様の遺影、焼香台のある中央に故人様の御厨子がセットされます】
初老の男性をお通しした数分後
小さなお子様とご夫婦が参拝に来ました
カードを通したら
「既にその厨子は参拝中…」のメッセージが受付PCに表示され
先ほど3階へ御案内した初老の男性のご家族らしき方々でした
先に来寺されたお客様を
参拝所へ御案内した事をお伝えして
お子様とご夫婦にその参拝所へ行って頂きました
暫くすると
ご家族が1階に下りて来られ
「扉が開いてはいるんですが、誰もいなくて、ご挨拶する為に探したのですが、トイレにも居ないみたいで…」
不可解な表情をされているお客様へ咄嗟に
「お客様方がエレベーターで参拝所に上がられる時に、すれ違いに階段でお帰りになってしまわれたのかも知れませんネ
きっと、お急ぎで参拝ドアを閉めないままだったのかもしれません
ご参拝に差し支えなければ、そのままご参拝されてください」と、お伝えした所、
「あっ、そうか。階段で降りて帰ることも出来るんですネ」と
何か拍子抜けされた様に笑顔になり
そのまま、ご家族で参拝をされて帰られました
でも…
施錠間際、冬の夕刻です
受付を離れるほど混雑していた訳ではないので
私は
受付の1階から離れた時間はありませんでした
むしろ
館内には、その初老の男性と、数分後にいらしたご家族3名様しか、お参りにいらしてない状態でした
階段も当然
使われてはいませんでした
後々、故人様をお調べしたところ
その日は「ご命日」に重なる日でした
受付PCは
何故か?カードを1枚通した記録が残されていない状態…
きっと寒い中
お孫さんが来てくれるのを楽しみに
少しでも早く、逢いに来れるように
故人様が
参拝所を開けに来てくれたのでしょうか…
これが…
ご命日に
ご家族様方より
先に、参拝所の扉を開けにいらっしゃる故人様?との関わりの始まりでした
【基本説明2:参拝所での待合せはご遠慮頂いてますので、参拝日時が“偶然”重なり、先に参拝されているケース以外はお通ししません】
それから…
同様な現象が他の故人様でも続き、調べてみると全て“ご命日”と重なりました
ご命日に
ご家族様方が参拝に来られる数分前
御厨子が参拝所にセットされます
その瞬間を確認出来た事はありませんが
数分後に
必ずご家族様が来寺されます
そして、決まって
ご家族様が、参拝カードを出され
カードリーダーに通した時に
「既にその厨子は参拝中…」のメッセージが受付PCに表示されます
参拝中の参拝所へ御案内すると
「扉が開いてはいるんですが、誰もいなくて、トイレにも居ないみたいで…どなたがお参りに来て下さったのかしら…?」と、お言葉を頂きます
あれから、一年後の年の瀬…
あの初老の故人様は
また、ご家族様のご参拝前に厨子を出されました
でも、姿を現して受付を通られたのは最初の一回だけです
ご命日に
ご家族様方が参拝に来られる方全員に起こる事ではありません
何かの強い力で
「故人様からご遺族様への想い」の形がこの現象を起こしているのだろうと
受付の私が
ほんの少しそのお手伝いをさせて頂いている、そう想いながら
「お客様方が参拝所に上がられる時に、すれ違いに階段でお帰りになってしまわれたのかも知れませんネ
きっと、お急ぎでドアを閉めないままだったのかもしれません
ご参拝に差し支えなければ
そのままご参拝されてください」と
柔らかにお応えして…
私の心の中では
「お逢い出来て良かったですネ…」と
見えない誰かに心の中で呟いていました
今は、遥かな遠い記憶…
って事に、しておきましょう
信じるか、信じないかは、
皆様のお心次第です…episo-do“0”