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仕事のスピード感がもたらす価値
私は長く広告業界にいた。
広告の仕事は締切との戦いだ。
納期がすべてであり、そこから逆算してスケジュールを組み、関係者全員の進捗を管理しながらプロジェクトを進めるのが当たり前だった。納期を守ることは当然の責任であり、遅れることで発生する損害は計り知れない。そのため、私は自然と「前倒しで進める」ことが習慣になった。
一方で、現在の環境では、仕事のスピード感に対する意識が人によって大きく異なることに驚かされる。なぜ、皆はもっとスピードを意識しないのか?
例えば、メールやチャットの返信ひとつ取ってもそうだ。即座に返信すればいいのに、後回しにする人が多い。仮に今すぐ回答できなくても、「本日中に返信します」と一言入れるだけで相手の安心感は大きく変わる。それすらしないのは、単に意識の問題なのか、それとも「早く返す」という行動の重要性を理解していないのか。
弊社のMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)のバリューにも「スピード」が含まれている。つまり、スピード感は会社として重要視している価値観のはずだ。それなのに、まだ十分に浸透していないと感じる。この記事は、自分自身への戒めでもあり、改めてMVVを浸透させるために書いている。
▼MVVについてはこちらの記事参照
1. 仕事のスピード感が重要な理由
仕事におけるスピード感が重要な理由は、以下の3点に集約される。
① 信頼を勝ち取るため
ビジネスにおいて、信頼は最大の資産だ。クライアントが仕事を依頼する相手を選ぶ際、「仕事ができる人」だけでなく、「仕事が早く、レスポンスがいい人」が選ばれやすい。なぜなら、相手が自分の案件を優先していると感じられるからだ。レスポンスの遅い人は、「本当にやってくれるのか?」という不安を与え、結果として仕事を任せてもらえなくなる。
私の業者選びもこれを基準にいている。
② スピードは意識するだけで改善できる
仕事のクオリティを上げるにはスキルや経験が必要だが、スピードは意識次第でいくらでも改善できる。たとえば、メールの返信や資料の作成、タスクの完了を「すぐやる」だけでも、周囲の評価は大きく変わる。にもかかわらず、これを意識しないのは単なる怠慢に見えてしまう。
③ 仕事の質も向上する
「スピード重視だと、クオリティが下がるのでは?」と考える人もいるが、それは誤解だ。スピードが速いということは、アウトプットの回数が増えるということ。試行錯誤の回数が増え、結果的にクオリティも向上する。つまり、スピードと質はトレードオフではなく、むしろ両立するものなのだ。
2. 一部の部下の仕事が遅い理由とは?
では、なぜ一部の部下たちは仕事を早くこなせないのか?その理由を分析すると、いくつかのパターンが見えてくる。
① そもそもスピードの重要性を理解していない
「速く仕事をすることが、どれだけ価値のあることなのか」を理解していない人が多い。特に締切が厳しくない業界では、「とにかくミスなくやること」が優先され、スピードの概念が浸透しにくい。
② 仕事に期限がないため、優先順位が決められない
「今すぐやるべきかどうか」が判断できない人もいる。たとえば、社内の業務には明確な締切がなく、納期を決める文化がないと、後回しにする人が増える。締切がない=急がなくてもいい、という意識になってしまう。
③ 完璧を求めすぎる
「しっかり考えてからアウトプットしないといけない」と思いすぎている人も多い。しかし、完璧を求めると時間がかかり、結果的にクオリティも下がる。まずはスピーディにアウトプットし、それを修正していく方が効率的だ。
④ 仕事の段取りが悪い
スケジュールを逆算する習慣がないため、タスクの優先順位を決められず、気づいたら期限ギリギリになってしまう人もいる。これは経験の問題もあるが、意識的にスケジュール管理をする訓練をすれば改善できる。
3. スピード感を持たせるための対策
部下の仕事のスピードを上げるためには、単に「早くやれ」と指示するだけでは不十分だ。具体的な対策として、以下のような仕組みを取り入れると効果的だ。
① 仕事の締切を細かく設定する
「〇日までにやって」と漠然と指示するのではなく、「今日の17時までに一次案を見せて」「30分以内に返信して」など、短いスパンで締切を設定する。小さな締切を積み重ねることで、スピード感が身につく。
② 返信や報告のスピードを意識させる
メールやチャットの返信を「後回しにしない」文化を作る。たとえ即答できなくても、「本日中に対応します」といった簡単なレスポンスをすることを習慣づける。
③ 完璧を求めず、まずアウトプットさせる
「とりあえずできた段階で見せる」ことをルールにする。完璧を目指して時間をかけるよりも、早い段階でフィードバックをもらいながら修正していく方が、最終的なクオリティも高まる。
4. MVVを浸透させるために
弊社のバリューには「スピード」が含まれている。しかし、まだ十分に定着しているとは言えない。スピード感を持って仕事をすることを「会社の文化」として根付かせることが必要だ。
スピード感は、単に効率を上げるだけでなく、信頼やクオリティ向上にもつながる。だからこそ、自分自身も含め、全員が意識し、実践していくべきだ。MVVを浸透させるためには、まず経営陣が率先して体現し、それを評価基準にも反映させていく必要がある。
この文章を書きながら、改めて「もっとスピードを意識しなければ」と思った。まずは自分が手本を示しながら、会社全体にこの価値観を浸透させていきたい。